Ep.1

――授業終了後。


「池ケ谷悠樹!あとで職員室まで来るように!」

「………………。」

「……おい、授業終わった。つぎ移動だから起きろ。」

「………ん、すぅ。」


気持ちよさそうに寝てるなぁ。起こすの止めてそのままにしておくか…?

後で文句言われたとして、こちらには全く非は無い。


「……おーい、起きろ。」

「ん、んー。……………ぐぅ。」


……………。

よし、置いて行こ。


次の授業開始まで残り時間が少ないので急いで教材などを鞄に入れる。

椅子から立ち上がり颯爽と教室から出ようと歩き始めた所で、


「ちょ、まっ、置いて行くなよ!起きるまで頑張れよ!」

「……………チッ。」

「あ、お前絶対気づいてただろ!」

「……早く支度しないと置いて行く。残り3秒、2、1、……」


カウントダウンを始めると同時に、すごい勢いで机の上に出ているものを鞄に入れて立ち上がった。最も、教科書類を出して直ぐに寝ていたのでそのまま突っ込むだけだが。


「よし、早く行こう。」


2人してやや早歩きで移動教室先へ向かう。


基本的に移動はないが、月に何回かある他クラスとの合同授業の場合は別だ。しかも僕らの教室からは地味に遠いので、普通に歩いていたら5分近くかかってしまう。


「今日って何組と合同だっけ?」

「たしか…1組だったと思う。」

「1組って、女子のレベルが全体的に高いクラスじゃねーか!よっしゃー!」

「そうなのか?」

「ほんっとお前って興味ないよなぁ。まぁお前の性格とか考えたら当然か。」

「……なんか、そういう系疎くてごめん。」

「いや、分かってっし。しょうがねぇよ、お前の場合。」


正直なところ、興味が無い訳ではない。ただ自分の事でいっぱいで周りまで目が向かない。…いや、こんなの言い訳にしか過ぎない。

いつもこんな風に頭の中をぐるぐるさせている。そして最後には「自分が嫌い」という結果に終わるのだ。自分の出した結果にいつも満足がいかず、自問自答の日々。

………………………………。


「…………さんだよな!……ん?聞いてる?」


いつの間にか足を止めてしまっていたらしい。考えに耽っていると不意に下から顔を覗き込まれた。


「……っ、あぁ、ごめん。何の話してたっけ?」

「だから、1組は可愛い子揃ってるけど、その中でも百川さんはダントツだなって言ったの!」

「百川って……百川 星来(ももかわ せら)のこと?」

「そうそう!流石にその名前はお前も知っていたかぁ。」


知っているも何も、学校中で言われている、所謂人気者というやつだ。実際に見た事は無いし、僕とは一番無縁の存在。関わる事なんてこれからも一切無いだろう。

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