第45話 来訪者
「今回の件は、おおよそわかっていた。ただ、確信が欲しかったのだよ。だから君に頼んだ」
マグナス卿は軽くウイスキーを口に含んだ。
「いやだからさ、そんなことだったら最初から全部話して、正式に仕事を依頼してくれりゃよかったんですよ」
「私は積極的に係わってはまずいのでね。だから仄めかし程度になってしまった。君なら理解して、正しい答えを見つけてくれると思っていたのだ」
「まぁ、卿は英国政府の人間ですからね、皇国への内政干渉とも取られかねない行動は慎んだ方がいいんでしょうけど、正しい答えって。こんな俺にそんなこと求めないで下さいよ。だいたい今回の成り行き、正しかったんですか? 正しい答えってなんすか?」
「君は良くやってくれたさ。あのクルップを引きずり出したんだから」
「単に騒ぎを起こしただけっすよ。それよりも、あいつが最終目標じゃなかったんでしょ?」
「はは、流石に聡いね。確かに、本当に知りたかったのは、クルップの更に後ろに居る存在」
やっぱりか。あいつと話していて、もっと裏があるんじゃないかとは感じてはいたが。
「これ以上話すと、私事に巻き込んでしまいかねないのだが・・・」
「今更なにいってんすか。もう十分巻き込まれてますけど」
「本当に申し訳なかった。君と、助手君を危険な目に遭わせてしまった」
卿はウィスキーグラスを手に持ちながら、窓の方へ近寄って行った。
「どうせ、それも込みだったんでしょ? マグナス卿の中では」
「そこは報酬で償わせてくれ」
「やった」
俺は思わず喜びの声を上げた。
久しぶりのまとまった収入か⁉
「・・・おやおや、噂をすれば、向こうからやってきたみたいだね」
窓際で庭を眺めながら、マグナス卿は呟いた。
「は?」
不審の声を上げた後、俺もその気配に気付いた。
どうやら来客らしい。
「今回は私に用事があるみたいだな」
「手当が弾むなら、俺が対応してもいいすよ?」
まだ夕日の残照が残っている。ヴァンパイアの卿には不利かもな。
「いや、ここからは私の領分だ」
そういったマグナス卿の背中は、とてつもなくどす黒く、禍々しかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます