第26話  不老不死探偵の助手 其の七

 仕掛け罠的な魔法陣にどうやら引っ掛かってしまったらしい。体が動かねーよ。

 視線だけ下に向けてみれば、床に紙らしきものが貼ってある。しかもご丁寧に見つからないように、床と同じ色をした紙だ。


 まさか、尾行がバレていた⁉


「なんだ、掛かったのはガキなのか?」

 背後から声がした。これは、おれが尾行していた髭男のものか?

 確かめたいけど、いかんせん体が動かない。


「どれ、卑しいコソ泥め、顔を見せよ」

「・・・・」

「聞こえんのか!」

 髭男は激高して、なにか棒みたいな物でおれの肩を打ち据えた。

「痛ぇーなこの野郎! テメェの罠でこっちは動けねぇんだよ! そっち向ける訳ねぇじゃねぇか!」

 やばい。いきなり引っ叩かれたから、ついついバカ師匠譲りの汚い言葉が出ちまった。


「くくく、威勢だけはいいようだな。果たしてそれがいつまで続くかな」

 その言葉の後、声の主は何度もおれの肩や尻を棒で何度も打ちのめした。

「ぐぐっぅぅ」

 おれは「絶対に負けねぇ」と歯を食いしばっていた。

「ハンスさんの言った通りだったが、まさか尾行までされているとは。しかしそれがこんな小僧だったなど」

 はぁ? あのドイツのおっさん、なに余計なこといってんだよ。


 打たれた箇所の痛みに耐えながら、おれはどうすればいいと考えた。トキジクさんの助けは見込めない。この罠を解く術もない。悔しいけど、とりあえずここは黙ってやり過ごすしかないのか?


「まったく、いたぶり甲斐のないガキだ。泣きもしないし、声すら出さない」

 はぁはぁ息を荒げて、背後の髭男は叩くのを止めた。

 へ、へへ、なんだよもう息が上がってんのかよ。

「後でたっぷりと問い質してやる。おい、眠らせて地下牢に放り込んでおけ」

 そう誰かに命じると、いきなり口に分厚い布切れを当てられた。驚いて息を吸ってしまうと、鼻を突く薬品のような臭いがして、そのまま頭の奥が痺れていく感覚が拡がっていった。

「実験体として、使えるかもしれん」


 ああ、とても眠い。

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