第25話  不老不死探偵の助手 其の六

 階段を上り切ると、そこは真っ直ぐな廊下で、片側に引き戸が幾つか並び、逆側は窓になっている。雨戸は閉まっていないので、廊下は一階より見通しがいい。そして突当りにには、洋風のドアがあった。


 むむむ、いかにも怪しい。それに、ドアの下からからは、部屋の灯りが漏れ射している。


 おれは忍び足でドアに近づき、耳を澄まし、中の気配を探った。

 まったく音はしない。

 ふむふむ、では。

 鍵穴を覗き込むと、部屋の中がわずかに窺えた。

 灯りはついている。大きな窓、本棚、テーブル・・・。

 見える範囲では、誰も居ないようだ。

 おれは思い切ってノックしてみた。


 もちろん、何か反応があればすぐさま廊下を走り、階段を駆け下りて逃げる心構えをしてだぜ。


 緊張と興奮の間、それでも部屋の中からは反応が無かった。

 本当に誰もいないのだろうか。


 えい、ここまできたらとことんいってやれ、それがおれの信条だ、それが不老不死探偵の助手ってもんだ!


 そっとドアノブに手をかけ、ゆっくりと回し、静かにドアを押し開けた。

 案の定、部屋の中には誰もいないようだった。

 かなり広めの洋室。天井からぶら下がる電灯。洋服ダンスに本棚、机、ベッド。

 机の上の縫いぐるみやカーテンやベッドカバーの柄とかで、女性の部屋なんじゃないかと思えた。


 やっぱりパーティーにいた女の子のかな。


 おれは好奇心に駆られ、部屋に足を踏み入れた。

 と、その瞬間、自分を中心に床が円形に明滅し、咄嗟にその場を離れようとしたけど、体の自由が利かなくなっていた。つまり、体が動かない。


 こ、これは、もしかして罠の魔法陣!


 ある条件を満たすことで発動するように造られた魔法陣。

 たとえば今みたいに上に乗ることによって魔法が発動するという・・・って、まんまと罠にハマったのかおれ⁉

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