第24話 不老不死探偵の助手 其の伍
しかしここは東京のどの辺りになんのかな。夢中で追いかけてたんで全然わかんないや。自分なりに結構走ったから、大分帝国ホテルから離れたと思う。お堀が見えるけど、東京だったらどこでもあるしなぁ。
ま、とりあえず、中に入ってみれば、何かわかるでしょう!
では早速。
『ぎぎぎぎぃぃぃ』
門の脇の潜り戸を押し開け、おれは中に入った。
あ、大丈夫、おれ、気配消すの上手いから。
さて、昔風の塀と門から想像して、てっきり皇国式庭園になっていると思ったら、いきなり暗い雑木林になっていた。おれは木々の中を通る一本道を用心しながら進んでいった。
不意に木々が途切れると、洋風庭園が拡がり、その奥に木造二階建ての邸があった。
これも質素だけど、なかなか大きい。そしてやはりどこか古ぼけている。
没落華族、といったところかな?
おれはニヤリと笑みを浮かべた。
なんか探偵みたいだよね。うふふ。もうあのバカ師匠を超えてるんじゃない?
ふむ、見たところ邸に灯りがついているのは二階の窓だけだ。一階は暗いまま。
ん? 隣に平屋建ての離れがあるぞ? そっちにも灯りはついている。
どうしようか、ここはまず母屋の方から探索してみよう。
いや、別に怖いとか弱気とかじゃないよ? ほら、あれだよ。好物は最後に取って置くみたいな。
おれは玄関の引き戸をなるべく音を立てないようにゆっくり開けた。
「お邪魔しますよー」
囁きながら侵入し、律義に靴を脱いで上がり込んだ。
靴脱ぎ場には誰の靴も残っていない。下駄箱にしまったのだろうか。
建物の中は暗くて良く見えない。不気味なほど静かだ。しかしなんだって明かりをつけないんだ?
玄関の真正面にある、立派そうな透かし彫りが施された衝立を超えると、長い廊下が続き、途中に二階へと続く重厚な階段があった。
まるで温泉宿みたいに広いな。
確か二階の奥の方で明かりがついていたはずだ。
ここは二階に上がってみるしかないだろう。何故って? 邸の二階といえば、女の子の部屋があるに決まってる。あの和服の彼女が居るに違いない。暗がりの一階を歩き回って髭のオッサンに出会っても仕方がないしな。
おれは分厚い木の板を並べた階段を慎重に上がっていった。
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