第22話 なりふり構わずに
「おい、あんた。大丈夫かい?」
騒動が収まったと見て、長屋街の住人が家から出てきて周りに集まりだした。
地面にぶっ倒れている俺とドイツ軍人を、交互に上から覗き込んだ。
「ああ、俺は大丈夫だ。悪かったな、騒ぎ起こしちまって」
俺は体中の痛みに呻きながら、ゆっくりと立ち上がった。
「こっちの金髪あんちゃんはどうなんだ?」
そうだよな。
どうなんだろうな。
どうせ縛っても閉じ込めても意識が戻れば魔法でどうにかしちまうからな。警察呼んでも騒ぎが大きくなって絶対大事になる。いっそひと思いに殺しちまった方が楽なんだが・・・。
「その辺に放って置けばいいさ。触らぬ神に祟りなしってな」
「このままにして、あんた、行っちまうのかよ」
俺はよろめく体を踏ん張って、苦笑の浮かべた。
「すまんが、俺は、行かなきゃならねぇんだ」
段々痛みも退いてきた。まったく、不死身の体じゃなかったら、どうにもなんねぇ相手だったぜ。
フリードリヒの野郎、とんでもねぇ奴引き連れて来やがって。いったいこの国で何を企んでやがる。
だがしかし、俺様は行かなきゃならない。すべてをほっぽりだしてもな。
春日が、俺を待っているかもしれねぇんだ。
俺は意識を集中して、再び飛行の魔法陣を頭の中に想い描いた。
もうなりふり構っていられねぇな。
周りに見物人が大勢いるのにも構わず、俺は夜空へ向けて飛翔した。
さーて、春日の居場所は・・・。
長屋街の上に滞空して周囲を見回した時、大きな爆発音がして、大気が震えた。
探すまでもなかったか。
あいつはあそこに居る。
爆発のあった方を見ると、大きな噴煙が夜空に立ち上っていた。
これは想像以上にヤバそうだ。
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