高校生の日向継道は、合気道に通っている。真面目で正義感の強い彼は、チート・ハーレム系ゲームにうつつを抜かす中二の弟を窘める日々。彼には、気になる同級生・真野敦也がいた。苛めに遭っている真野を、時々助けているのだが、何故か彼には嫌われていた。
ある日、常連の相手に絡まれている真野を助けようとした日向は、彼とともに交通事故に巻き込まれたーーはずだった。
日向が気づくと、そこは病院ではなかった。目の前には、弟が好きなゲームに登場しそうな美少女が。ライラと名乗った彼女は言うーー
「わたくしは、あなた様の奴隷です」
「……はあ?」
「勇者様」と呼ばれ、強制的に三人の美女の「奴隷」を充てがわれ、さらに好きな相手を強制的に奴隷化する〈テイム〉の能力を与えられた日向は、魔王退治を要求されて唖然とした。ーー冗談じゃない!
果たして、彼は無事に現世に戻れるのか?
◇◆◇
この作者様の作品の主人公に共通していますが、今回の日向君も、真面目で硬派な主人公です。〈道〉に向き合う精神性が心地よく、カッコいい。
「勇者」に強制的に奴隷として設定された女性達(男性達)の内面の葛藤や、異世界から転移させられて理不尽な「魔王退治」に駆り出される「勇者」達の人間性など、とても丁寧に描かれていて、よく理解できます。それだけに、この世界の理不尽さや『創り手』にのみ都合のいい残酷さなどが胸に迫ります。日向君と彼の仲間達は、それに対抗できるのか……。
第一部終了時に、物語は大転換を迎えます。彼らの「真の敵」が明らかになります。この世界の根源に迫る謎が、解き明かされる日は来るのかーー。
彼らの闘いを、固唾を飲んで見守らせて頂きます。