第67話~魔石の素材

 「いやぁ。毎度思いますけど、凄いですね! こんなにサクサクと! 助かります。ありがとう」


 カウンターのお兄さんは、今回も笑顔満開です!

 私達は魔石もなくなった事だし、一旦、戻ってきました。


 「あの……」

 「はい?」


 ユージさんが声を掛けると、お兄さんは地図から顔を上げました。


 「僕達が発見した魔石って、少し分けてもらう事って出来ますか? あ、お金は払うので……」


 お兄さんは、うん? という、不思議そうな顔つきです。


 「無理ですよ。その為に大量のお金を差し上げているのですから。って、何に使うんですか?」


 ジッと、お兄さんは不思議そうな顔で私達を見つめ、パッと嬉しそうな顔つきになった!


 「もしかして! 本当に錬金術使えるんですか!?」


 崖の壁の向こう側の人達に錬金術師と認められている事を思い出したお兄さんは、がばっと体を乗り出して聞いてきました。



 「え!? ち、違いますよ!」

 「じゃ、何に使うんです?」

 「聞いてみただけです。では……」


 ユージさんは、ガシッと私を掴むと走って逃げました。


 「やっぱりダメだったね」


 ギルドの部屋に戻ったユージさんはそう言って、イスに腰掛けます。

 私もそうだねと頷いて、もう一つの椅子に座りました。

 魔石が手に入るとしたら発見した魔石を分けてもらうしかないという事になったのです。


 魔石は、魔物が発生するかもしれない危ない物質ですが、錬金術や発明品に欠かせない材料。そして発明品を使うにあたって必要な物。

 なので売っては、いるらしい。

 だけど、発明家でないと大量に売ってもらえない。

 そもそもこの島では、魔石は危険物度が高く、そうそう手に入れられないらしいのです。


 そうすると私達は、凄い発見をしていた事になる。

 そりゃ有名人になるよね。


 でもこれで、魔石を手に入れる方法がなくなったわけで……。後は、作れないか見るしかないけど……勿論、おじいちゃんが残してくれた本でです。

 私は、リュックから本を取り出す。


 「もしかして、魔石を作れないか探す気?」


 本を出した私を見て、ユージさんが聞いたので素直に私は頷きました。


 「あるかもしれないね! どう考えても錬金術をするのには魔石が必要だよ!」


 言われてみればそうかも。

 錬金術じゃないけど、まねごとみたいな事をしているだけでも使っている。

 オーブなんて、魔石をガッツリと……それで消費してなくなったんだし。

 よしっと本で探すとあっさり見つかっちゃいました。


 やり方は難しくありませんが、材料が……でも、これって!

 『魔石の種』一つと魔石にする素材。


 魔石の種とは、魔石の花から生み出される七色の種と書いてあるんです!

 私は、興奮してユージさんにお話ししました。


 「凄いよ! ソレイユさん!」


 と、ユージさんも興奮気味です。

 で、テーブルの上に七色の種を置いて眺める私達……。


 「問題は素材だよね……」

 「うん……」


 私達は七色の種を見つめつつ話す。

 魔石の種は、七色の種で間違いないでしょう。あのお花畑の花は、魔石の花だったんだ。


 魔石の素材だけど、硬石層こうせきそうもしくは生命の枝。

 両方とも聞いた事はあるけど、見たことがありません。


 「これまたまいったね……」


 素材の話を聞き、ユージさんもそう漏らしました。

 硬石層の方は、探しようはあります。

 街の拠点を作る為の立地条件で、探す様に頼まれているのですから……。

 ですが、そう簡単ではないでしょう。


 「うん? 待てよ……あるかも!」

 「え?!」


 ユージさんが、驚く私を見て頷きました。


 「え? 何? どういう事?」

 「杭だよ! 朽ちた杭! 僕達の結界は粘土だけど、前回はきっと生命の枝使ってるんじゃないかな? たぶん、同じ方法で結界したようだから」

 「あ!」


 ユージさんの話に私はやっと、わかりました。

 私が粘土で作った杭と交換した古い朽ちた杭は、その昔に結界に使用した『生命の枝』に違いありません!

 朽ちているけど使えるかも。


 「確かめに行こう!」


 私はユージさんの提案に、力強く頷きました。

 そうすると、ユージさんは嬉しそうに手を出してきたので、その手を私は握る。

 実は、カウンターのお兄さんに借りたワープマーカーをあの馬小屋の所に設置してきのです。

 なので一瞬で、馬小屋までワープ出来ちゃいます。かなりの時間短縮になる。


 「ワープマーカーへ」


 ユージさんがそう言うと、一瞬でワープしてギルドの部屋から自然豊かな風景へ変わった。 って、ザーッと土砂降りです。

 慌てて私達は、馬小屋の中に入りました。

 いつの間にか虹の刻だったようです。


 「あれ? ユージ様とソレイユ様」


 馬小屋にはバジーくんが居ました。突然現れた私達を笑顔で迎えてくれます。

 100年後どころか、一時間程で戻ってきましたけどね……。

 さんで良いと言ったのですが、錬金術師だと思っているらしく様をつけて呼ばれています。


 「また失礼するよ。杭ってまだ、あるよね?」

 「はい。言われた通りビニールシートをかぶせてそのままにしてあります!」


 古い杭は朽ちてはいましたが、粘土で作った杭より重く、数が数なのでそのまま置いてあった。

 ここには滅多に人が訪ねて来る事もなく、何か必要になるかもしれないと、処分せずにそのままにしてあったのです!

 まさに今が必要な時かも。本当は、結界に使えるかもと思っていたんだけどね。

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