第52話~巻き込まれた私達

 豊かな森、大きな川に湖。360度地平線が望める絶好の場所です! こんな状況でなければ楽しめるのですが……。


 私達は自分達の胴体より太い枝の上に降ろされました。折れる心配はありませんが、枝なのでカーブを描いています。安定感は悪いです。


 「落ちない様に気を付けて」


 ユージさんに言われ、私は頷いた。私はユージさんに掴まりながら隣に腰を下ろす。立っているより座った方が安定するからです。


 違う枝にさっきの二人組も下ろされました。

 二人共男性で猫っぽい三角の耳はありますが、尻尾は確認できません。

 一人は茶色い髪に茶色耳。もう一人は、黒髪に黒い耳。服装は同じような感じで上下とも茶色。腰にはナイフ。


 「ホウギョクヲ カエシナサイ」

 「ひぃ……」


 私は声が聞こえビクッとするも前の二人は声を上げる。二人はガクガクと震えていた。何だろう? ちょっと情けない様な……。


 声の方を見ると、なんとフクロウさんでした! 私達より高い枝に止まっていて、さっきのタカよりも一回りも大きく、大きな目で私達を見下ろしていました!


 「宝玉って……?」


 ユージさんはチラッと、震える二人を見た。

 私もつられるように見る。多分この人達が、盗んだのかもしれない。


 「僕達は森に入ったばかりでした。宝玉なんて知りません」

 「ソノモノノ ナカマデハ ナイト?」


 ユージさんと私は頷く。


 「え? あんた達あの鳥と話しているのか?」


 驚いて茶色い髪の男が言った。

 話しているって……?


 「あの失礼ですが、読解力って1000ありますか?」


 ユージさんが聞くと二人共頷いた。


 「やっぱりそうか……」


 え? どういう事?


 『ソレイユさんもフクロウの言葉理解しているよね? 君は1000もないのに』


 ユージさんが以心伝心で話しかけてきました。それに頷く。


 『もしかしたらこの前、精霊に出会った事が関係しているのかも……。ってきっと、あの人たちが宝玉を取った事によって、イベントが発生したっぽいね……』


 それって、そのイベントに私達が巻き込まれたって事?


 『個人イベントじゃないのは、誰でも参加出来るらしいから……。意図せず参加しちゃったのかもね……』


 今回はイベントおりたくても無理な状況だよね……。


 「アノモノタチハ ワタシノコトバヲ リカイデキテイナイノカ?」


 そう私達にフクロウさんは話しかけて来た。

 私達は頷いた。


 「デハ アナタタチガ アナモノタチニ キイテホシイ」

 「わかりました」


 ユージさんは、そう答え、二人の声を掛ける。


 「ねえ、あのフクロウは、君達に宝玉を返してほしいみたいなんだけど……」

 「ほ、宝玉?」


 茶色い髪の人がそう言うと、二人は顔を見合わせる。


 「いや知らねぇ……」


 黒い髪の人がそう答えた。


 「お願いだから返してよ。僕達巻き込まれてるし……」

 「だから知らねぇって!!」


 黒い髪の人は、ムッとして叫んだ。

 白を切るつもりみたい。どうしよう……。


 「あの、宝玉ってこの人達が盗んだのは確実なのですか?」

 「コノモノガ ミテイタ」


 フクロウは首だけ横に向けた。同じ枝に精霊が並んでいます! いつのまに?


 『ソレイユさん、見える?』

 『うん。小さいから精霊だって事しかわからないけど……』

 「っていうか! もう下ろしてくれって言ってくれ! 俺、高い所ダメなんだってば!!」


 茶色い髪の人が叫んだ。隣にいる男の人も頷く。どうやら震えているのは、高い場所だからみたいね。


 はぁ……。

 ユージさんは溜息をついた。


 「下ろしてほしかったら、正直にいいなよ。君達が取った所を見ていたって言っているよ」

 「わかった! 返すから取りあえず下ろして~!!」


 茶色い髪の人がもうギブアップと叫ぶ。


 「あのまずはここから下ろして頂けませんか? そうしたら返してくれるそうです」

 「ヨロシイ タガエルナヨ」


 ユージさんが頷くと、タカが私達と男の二人組の背中を鷲掴みする。――って、これ背中じゃなくてリュクっと体を掴まれています!


 「「ぎゃー!!」」


 掴まれた途端、二人の男たちは大声で叫んだ――!

 本当に高い所がダメなようです……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る