第53話~六つ目の宝玉

 ごつごつした岩。周りには私達が下ろされた大きな木以外は、その岩の間から生えている草と小さな花ぐらいしか、植物はなかった。

 岩も大き目で白っぽい。


 その白い岩に両手を付き、四つん這いになって二人の男の人は、ぜえぜえと息をしている。


 「た、助かった……」

 「約束通り宝玉を出してくれる? じゃないと今度はあのてっぺんに連れて行くって言ってるよ」


 安堵している茶色の髪の人に向かって、ユージさんは木を指差し言うと、まだ震える手をポケットに突っ込んだ。

 開いた手には小さな丸いビー玉程の青い石があった。


 宝玉ってこんなに小さいのね。まるでブルーサファイアの様です。って、写真でしか見た事はありませんけど。


 ユージさんは、宝玉を手に取った。


 「やっぱり輝きがなくなってるわ」


 宝玉を覗き込んだ精霊がそう呟やきました。

 これでも十分綺麗だけど、輝きもあったのね。


 精霊は。女の子だった。移動する度、キラキラと光の尾を引く。


 「あと、五つ持っているはずなんだけど……」


 感心していると、精霊はそう続けました。


 「ねえ、あと五つ持っているよね?」


 ユージさんの言葉に二人は顔を見合わせると、渋々ポケットから出した。でも合わせても4つ。一つ足りないです!


 「4つしかないけど?」


 ユージさんがそう言うと、黒い髪の人が慌てて体のあちこちを探している。


 「あ、あれ? ない?」

 「もしかしてないの?」


 ユージさんが聞くと、黒い髪の人は青い顔で頷いた。


 「走りながらポケットに入れたから。その時に、落としたのかも……」

 「落としたのかもって……。こんな小さいの探しようがないよ!」


 黒い髪の人の言葉にユージさんは驚いて返す。

 チラッとユージさんは、フクロウさんを見た。


 「あの、一つ落としてしまったようなんですけど……」

 「ナント! スグニ サガスノデス!」

 「探せって言われてもなぁ……」


 ユージさんはため息交じりでそう言いました。

 この宝玉を探すなんて無理。


 「お願い何とかして! これで呪いを止めていたの! 完全に光を失えば石になる。そうなれば、宝玉として機能しなくなるんです!」

 「えぇ!!」


 私が驚くと、男の人二人は驚いて私を見た。そして恐る恐る聞いてきました。


 「な、なんて言われたの?」

 「呪いを止めていたのもで、完全に光を失うと石になるって……」

 「えっと。その宝玉って六個ないと、呪いを止める事は出来ないんですか?」


 私が説明をしていると、ユージさんが聞いていた。


 「ダメですけど、少しの間なら時間稼ぎが出来ます。代わりになるモノがあればね」

 「代わりの物って何ですか?」

 「例えば、生命とか……」


 精霊はチラッと男の人二人を見ていいました。


 「もしかして生命ってHPの事かも……」

 「HPって何? どんな話になってるんだ?」


 ユージさんの呟きに、黒髪の男の人が言った。


 「ちょっと待っててくれる? 確認してみるから」


 男の人達にそう言ってから、精霊に向き直り言う。


 「彼らのHPで暫く何とかなりますか?」

 「まあ時間稼ぎ程度には。それを聞くという事は、探すという事ですか?」

 「はい。呪われた大地にするわけにもいきませんから」


 そうユージさんは、精霊に答えました。きっと何か作戦があるのね!


 「僕達が探す間、君達はHPを提供する事になったからね」

 「「えぇ!?」」


 二人が驚くもユージさんは、フクロウに向き話しかけた。


 「僕達は彼らの落とした宝玉を探すので、さっきの森に連れて行って下さい」

 「ヨイダロウ ダガ モリカラハ デレナイカラナ」


 ユージさんは、力強く頷きました。

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