第10話~探求者になろう!
「探求者になったらどうかな?」
「え?」
ユージさんは、突然そう言いだした。そしてカードを見せてくれた。
そこには、種族と名前、それに探求者と書いてあった。
「実は僕も取得したんだ。大抵のプレイヤーは取得したらこの島を出て行くか、島の中を探求して回っているよ。ケモミミ族は、戦闘系に向かないから皆、探求者になるんだ。そうすると、この島を出ても仕事があるらしい」
「ユージさんは、取得したのにここで農夫していたの? なんで?」
「人と係わるの苦手なんだ。……で、取ったけどここで結局農夫していたわけ。自分のペースでまったりとね。他のライオンのプレイヤーは探求者になってこのケモミミ島を出て行ったよ」
「あ、ごめんなさい。えっと……」
まったり時間を邪魔してしまったのね……。
「あ、そういう意味で言ったんじゃなくて……。錬金術師を目指すなら旅をしないとダメだよね? だったら絶対に探求者になった方がいいよって事」
あ、そう言われればそうね。普通は……。
おじいちゃんが錬金術師の師匠になってくれるのならその必要はないかもだけど。
それと錬金術師になるのに色々探求するのでは? これは私のイメージだけどね。
ただ問題なのは、許可を貰えるかよね。
一人では絶対に無理よね。おじいちゃんが一緒に来てくれないかな?
「うーん。おじいちゃんに聞いてみるかな……」
「おじいちゃん?」
「うん。お父さんに許可を貰う為には、一人じゃ無理だと思うのよね。ただ、おじいちゃんいつも寝てるみたいなんだけど……体力あるのかな?」
「僕じゃダメ?」
「え?」
私は驚いてユージさんを見た。だって、人と係わるの嫌みたいだったから。でも、にっこりと彼は私を見ていた。
「実はさ。ちょっとだけ飽きてきたんだよね。君となら緊張しないで話せるみたいだし。なんったって、婚約……いや、許嫁のほうがしっくりくるかな?」
「許嫁! それ、解消したんじゃ……」
「説得に使うんだよ。でも絶対に錬金術師になりたいなんてお父さんに言ったらだめだよ。許可がおりないと思うから」
私は力強く頷いた。
きっと顔が赤いと思う。
ユージさんは、私の事を10歳の子供に見えているしって言うか、中身を何歳だと思っているのかしら?
「それじゃ、まずは説得しに行きますか」
「え? 今から?」
ユージさんは頷く。
「時間を置く意味はないだろう?」
それはそうだけど……。
「では、宜しくお願いします」
「うん。宜しく」
私達はお父さんに伝える為に家に戻った。
◇
「ダメだな」
憮然としてお父さんは答えた。
勿論、探求者になりたいと言った結果です……。
「僕も一緒についていきますから。どうか許可を貰えませんか?」
「うーん。しかし……」
「僕は探求者のカードを持っています! 許嫁の彼女は必ず守ります!」
とうとう言ったよ!
説得させる為とはいえ、何となく恥ずかしい……。
ユージさんも真剣な顔だけど少し赤い。
「よし。わかった! ではまず一番近いサササ迷宮に挑んで、ランクDの物を持って帰ってくる事が条件だ!」
「ランクD! それはちょっと……」
ランク? そっか発掘する物にランクなんてあったのね。
「迷宮には鉱石とか色々あるんだけど、その質をランク分けしてあって、S~Fまであるんだ。で、古くからあるサササ迷宮はほとんど鉱石なんてない。後、Dランクくらいからは、普通に発掘しても見つからないと思う……」
私がチラッとユージさんを見ると困り顔で教えてくれた。
つまりは、何かスキルなどないと発見しづらいって事だよね?
お父さんは許してくれる気はないみたいね。……でも、ユージさんもここまでやってくれたんだしやってみないとね!
「やるわ! 一応聞くけど、Dランクの物ってそこには必ずあるんだよね?」
「勿論だ」
「いいの? 僕にはDランクの物を発見するスキルは持ってないけど……」
私は頷いた。
だって、これは私が探求者になる為の試練だもの!
なんか俄然と燃えてきたわ!
「持って帰ってきたら探求者になる旅を認めてね!」
「わかった。約束しよう! 彼との婚約も認める!」
「「え!」」
私達は、声を揃えて驚いた!
何を勘違いしたのか、お父さんはそう捉えてしまっていた。
これ、私を試す為だよね?
まさかと思うけど、ユージさんを試そうとしているんじゃないよね?
「な、なんか、ごめんね」
「うん。大丈夫。取りあえず明日の目覚めの刻に迎えに来るから。歩いて一時間のところだからうまくいけばその日のうちに帰って来れるけど……。Dランクかぁ」
ユージさんは、軽くため息をついてライオンの村に戻って行った。
なんか、悪い事しちゃったなぁ。
お父さんを見ると、難しい顔をして椅子に座って考え事をしている様子。
私はおじいちゃんに色々聞く事にした。
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