第2話~チュートリアルですよね?
気が付くと青い空、どこでも続く草原が広がっていた。
すご~い! この景色だけでも気持ちが潤うよ。
「ソレイユ。待たせな」
その言葉に私は振り向いた。
ケモミミ!!
声を掛けて来たのは、こげ茶の髪に瞳の中年の猫耳おじさんだった……。いや、犬かもしれない。尻尾がふさふさだよ!
「ほらいくぞ!」
そういうとおじさんは歩き出す。
「え! ちょっと待って! えっと、あなた誰?」
チュートリアルなんだろうけど、説明の文字や声がないからさっぱりだよ。
「何を言ってるんだ? 親をからかうものじゃない! 十歳になったから教えてほしいというから
父親だったのか!
って、待てよ。という事は。私もケモミミ!
自分の頭を触ってみると、普段耳がない部分に柔らかいケモミミがあり、普段あった場所には耳がなかった。
すごい! VRって夢を叶えてくれるのね!
瞳はわからないけど、肩ぐらいまである髪はこげ茶色。
後ろを振り向くと、尻尾もあった!
触ってみるとふわふわだ。そして少しくすぐったい。不思議な感覚。
って、手が小さい……。
私は両手をジッと見つめる。
そう言えば、十歳なんだっけ……。
お色気ムンムンのケモミミとは、いかなかったみたいね……。
「だ・か・ら、何をしている!」
あぁ、お父さんにまた叱られてしまった……。
「ごめんなさ~い」
もっと優しいお父様がよかったよ。
さくさく歩くお父さんの後ろを私はちまちまとついて行く。
十分程歩くと岩山に着いた。五メートルはありそう。
まさか登るとか言わないよね?
「よし、行くぞ!」
そのまさかだった! お父さんは掛け声とともに、まるでス○イダーマンのように登って行く!
いや……普通、無理でしょう?
「何をやっている。爪を引っ掛けて登ってこい!」
爪!
そりゃそうだ。吸盤のように張り付いていたらすごい!
よく見れば、立派な爪が私にもあった。
言われた通り、爪を引っ掛けてみると意外と平気そう。
必死にお父さんを追いかけた。
でも途中で下を見たのが間違いだった!
何もかもリアル。高くなれば風も感じるし、足や手もプルプルしてきた!
「お父さん! 怖くて動けません!」
「何を言っている! これぐらい登れなくてどうする!」
助けてくれる気はなさそうだよ……。
私は、勇気を振り絞り何とか登り切った……。
もう、手足はガクガクです……。
「よく頑張ったな」
お父さんは、私の頭を撫でた。
不思議だ。本当に撫でられた感覚がある。
「では、採取をするぞ」
そう言って、お父さんは小さな巾着みたいなの布袋を取り出した。
そして、徐にぐうで地面を叩いた。
見れば足元は白い。登って来た岩は黒かった。岩の中側だけが白いみたい。
欠片になった白い石をお父さんは片手を握り、袋の口を開けぐりぐりとするとサラサラとした砂になって手から零れ落ち袋の中に入っていく。
「すご!」
「お前もやってみろ!」
私は頷いて、欠片を受け取った。
お父さんがやったように、ギュッと握るが一向に砕けない。
軽石で見た目すぐに粉々になりそうなのに。なんで?
「握力がないヤツだな」
お父さんはそうぼやく。
あぁそういえば私、握力1じゃなかったっけ?
こんな所で使うとは! 武器が持てないだけじゃなかったの?
今ここでポイントふれるのだろうか?
そう思った途端、目の前にステータスが現れた。
びっくりした! あ、経験値がもう100超えてる……。そう言えば歩くだけでも増えるんだっけ?
取りあえず、握力に4振って、5にしてみるかな……。
握力に経験値80使って5にした。短所になっていた為、倍の経験値が必要だった。
それで私はもう一度握ってみたが、割れもしなかった……。
「はぁ……」
私がため息をつくと、スッとお父さんが厚手の布を出して来た。
「これに包んで握ってみろ」
言われた通り、受け取ったボロボロで汚れた15センチ四方の布に欠片を包み握ってみる。
手ごたえがあった!
私は開いて確認する。
「やった!」
見事に欠片は粉々になった。
「その布はお前にやる。握力がつくまではそれを使うがいい」
「うん。ありがとう!」
この粉が何なのかはわからないけど、出来る様になって嬉しい!
私は袋がいっぱいになるまで、欠片を粉々にしたのだった――。
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