ⅩⅨ 少年の選択
「分かった。僕も一緒に行く。」
「なっ!?」
「ロビン!?」
誰も予想だにしなかった言葉に、驚いたノエルとエディの声が重なる。じっとただ様子を見守っていたマーヤまで目を見開いて立ち上がった。
「ロビン、お前俺の話聞いてたか!? 俺は狙われてるんだ、一緒にいるとお前たちも巻き込まれるかも知れないんだぞ! だから俺はここから離れる。そう決めたのに……」
ノエルは半ば悲鳴のように叫ぶ。それをロビンは負けないくらいの大声で遮った。
「嫌だよ! ノエルが危ない目に遭ってるかも知れないって時に、それを知らずに何もできないなんて! 僕、今までノエルにはいっぱい助けてもらった。お返しがしたいんだ。一緒にいられたら、僕にも何か出来る事があるかもしれない。」
ロビンの真剣な目に、ノエルは何も言えなかった。彼の言葉はとても嬉しい、だけどノエルにとって家族に等しい大切な存在であるロビンを危険に晒したくない。どうしたらいいのか分からなくて葛藤に唇を噛む。と、それまで黙っていたマーヤがおもむろに口を開いた。
「ロビンがそんなに言ってくれるのだから、ノエル、一緒にいてもらったらいいわ。」
「マーヤ! でも、」
「大丈夫よ。そんなに心配しないの。ロビンはあなたが思っているよりも強い子よ。それにねノエル、守りたい存在はあなたを強くしてくれるわ。」
マーヤはにっこりと微笑む。それを見るだけで不思議と安心できるような、あたたかい笑顔。ノエルはそれに引き込まれるように頷いていた。
「……分かった。ロビン、本当にそれでいいの?」
「もちろん!」
ロビンは満面の笑みで答えると、嬉しそうにノエルに抱きついた。マーヤはそっと、その様子をただ見ていた息子の肩に手を置いて言う。
「私たちもあなたと一緒にいたいけれど、そうすることは出来ないの。けれど、忘れないで。私たちがあなたの家族だった事。いつだって私もエディも、あなた達のことを思っているわ。」
彼女は涙を湛えて微笑んだ。そして本当の母親のように優しくノエルを撫でた。その手はあたたかくて柔らかくて、目頭が熱くなったけれど、ノエルは涙を堪えて笑顔をみせた。
「ありがとう、マーヤ、エディ。あたしだって二人のこと忘れないよ。」
そしてぐいっと涙を拭い、立ち上がった。ロビンとしっかり手を繋いで。
「もう行かなくちゃ。イリスが待ってる。」
「ノエル!」
呼び止める声に、扉に触れる寸前で手が止まった。ノエルは振り向いた。エディの真剣な視線をまっすぐに受け止める。
「ノエル! 僕、僕は……!」
何か言いかける彼を促すように、ノエルはちょっと微笑んでみせる。その時だった。
ノエルが手を伸ばしかけていた扉が、外側から乱暴に開かれる。
扉の向こうに、ノエルは悪夢の続きを見た。
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