2. 塔の頂

頂上は石造りの部屋になっていた。質素でありながら、長椅子やテーブル、綿織りの敷物やカーテンなど上質な作りの調度品で整えられ、やや大きめの窓からは城の庭や広場を見渡すことができる。外から見上げたときは廃墟のように見えたが、中は今まさに人が住んでいるかのよう。もしかして、他所の家に無断で上がり込んでしまったのではないか…?不安になりながら、落ち着かなく周囲を見回す。ふとベッドに目を遣ったところで、静かに腰掛けている人影があることに気づいた。

「わっ、ごめんなさい…!」

まさか人が居るとは思っていなかった少年は、咄嗟に詫びた。しかしこの塔の住人と思しきその人は、不躾な訪問者を咎める風でもなく優しく微笑むと、優雅な所作で茶を淹れ始めた。少年を手招きし、訛りの強い言葉で話しかけてくる。湯気の立つ白磁の茶器に、トウモロコシを練って作った菓子。どうやら勧めてくれているようだ。

菓子もお茶も、少年がよく知っているものだった。素朴で、祖母の味を彷彿させる。お茶に目を落としながら、チラチラと相手を観察してみる。年の頃は少年よりもやや年上。大人から見れば「少女」と呼んで差し支えない年齢だろう…。

「ーーー!」

うっかり目が合ってしまう。少女は小首を傾げにっこりと微笑んだ。少年はどうしたら良いか分からず、慌てて俯いてしまう。

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