第2話 エコー
ザーザーと雨が降る音がする
ポチャンポチャンと雫の音がする
ザーザー
ポチャンポチャン
魔導都市の貧民街、魔道の光を求めた者の末路
魔導都市の貧民街、魔道の光を求めたモノの末路
ザーザーと雨が降る音がする
ポチャンポチャンと雫の音がする
ザーザー
ポチャンポチャン
金色の瞳、金色の髪の少女
白いワンピースと白い靴が雨に濡れる
「ミャーオ」ビルの陰から声がする
ザーザー
ポチャンポチャン
「ミャーオ」
ザーザー
ポチャンポチャン
「ミャーオ」
フワリと
白い猫が塀に上る、青い瞳が周りを探る
トンッ
塀の向こうに消えて行く
「ミャーオ」
「ミャーオ」
ザーザー
ポチャンポチャン
雨が洗い流す、光も闇も善も悪も洗い流す
路地の陰に子猫が横たわる、白い子猫が横たわる
白い猫が近寄る
ゆっくりと確認するかのように近寄る
ニオイを嗅いで前足で怯えるように触る
魔導都市
魔法と科学が混在する都市
高層ビルが建ち並び魔導の光が灯る世界
魔法と科学の奇跡の都市
全てを手に入れられる世界
人と魔が混在する都市
神が神であることを辞めた世界
知識を代償に願望を叶える
肉体を代償に欲望を叶える
魂を代償に望を叶える
手に入れたモノが勝者である
勝者こそが正義であり、敗者は悪である
弱肉強食
生物誕生からの摂理であり法則である
神の計画であり自然の摂理であり万物の法則である
魔導都市の法でもある
白い猫の後ろを歩いていた白い子猫が見当たらない
路地の陰に白い子猫が横たわる
白い猫の後ろを楽し気に歩いていた白い子猫が見当たらない
路地の陰に白い子猫が雨に打たれて横たわる
白い子猫の後ろを歩いていたはずの白い子猫の姿が見当たらない
ザーザーと雨が降る音がする
ポチャンポチャンと雫の音がする
ザーザー
ポチャンポチャン
金色の瞳、金色の髪の少女
白いワンピースと白い靴が雨に濡れる
「ミャオン」
「ミャオン」
ザーザー
ポチャンポチャン
「ミャオン」
ザーザー
ポチャンポチャン
「ミャオン」
クンクンと
白い猫が白い子猫のニオイを嗅ぐ
ポンポンと
白い猫が前足で怯えるように白い子猫に触る
白い猫は白い子猫を銜える
ザーザー
ポチャンポチャン
白い猫は白い子猫を銜えて塀の上を歩く
白い猫は白い子猫を銜えて屋根の上を歩く
途中
銜えていた子猫を下ろす
白い猫が白い子猫のニオイを嗅ぐ
白い猫が前足で怯えるように白い子猫に触る
だが
白い子猫は動かない
白い子猫が雨に打たれて横たわる
白い猫は白い子猫に話しかけるように鳴く
起きなさい
起きなさい
自分の足で歩きなさいと
毎日のように通っている道である
何処に何が在るかも知っている
危険を感じたことなど一度もない
たとえ危険が迫ってきても壁の抜こうに逃げられる
壁を乗り越えれば誰も追って来れない
しかし、白い猫の後ろを歩いていた白い子猫が見当たらなかった
白い猫の後ろを歩いていたはずの白い子猫の姿が見当たらなかった
白い猫が白い子猫のニオイを嗅ぐ
白い猫が前足で怯えるように白い子猫に触る
だが
白い子猫は動かない
白い子猫が雨に打たれて横たわる
待っている
白い猫は白い子猫が立ち上がるのをずっと待っている
ザーザーと雨が降る音がする
ポチャンポチャンと雫の音がする
ザーザー
ポチャンポチャン
金色の瞳、金色の髪の少女
白いワンピースと白い靴が雨に濡れる
雨が洗い流す、光も闇も善も悪も洗い流す
泣いていた
真っ直ぐな瞳に浮かぶ涙を拭う事もなく
泣いていた
雨にその小さな体を濡らしながら
魔導都市に棲む全てのモノ達をその瞳の中に収めて泣いていた
木霊は知っている
魔導都市で生きるモノ達を
木霊は知っている
魔導都市で死ぬモノ達を
木霊は誰にも見えぬ涙を流し
木霊は誰にも聞こえぬ声で叫ぶ
木霊は泣き叫んでいる
ザーザーと雨が降る音がする
ポチャンポチャンと雫の音がする
ザーザー
ポチャンポチャン
金色の瞳、金色の髪の少女
白いワンピースと白い靴が雨に濡れる
木霊はは見ていた
魔導都市を見ていた
魔導都市が成長していく姿を
木霊はは眺めていた
魔導都市を眺めていた
魔導都市が衰退していく姿を
魔導都市に生まれるモノ達を
魔導都市にやってくるモノ達を
魔導都市で死んでいくモノ達を
魔導都市を去るモノ達を
魔導都市の中枢から、世界樹の中心から
ザーザーと雨が降る音がする
ポチャンポチャンと雫の音がする
ザーザー
ポチャンポチャン
金色の瞳、金色の髪の少女
白いワンピースと白い靴が雨に濡れる
木霊は泣く、声なき声で泣く
木霊は叫ぶ、声なき声で叫ぶ
ザーザーと雨が降る音がする
ポチャンポチャンと雫の音がする
ザーザー
ポチャンポチャン
金色の瞳、金色の髪の少女
白いワンピースと白い靴が雨に濡れる
木霊は魔導都市の声を聴く
木霊は魔導都市に暮らすモノ達の声を聴く
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