第37話 ガエル町.5
監視は暇である
張り込みの刑事はどうやって暇を潰しているのかと
結界魔法を考えたりゴーレムを使った監視や遠隔操作を考えたりした
暗いからよく見えないかなとか目を凝らして見たり
遠いからよく見えないかなと目を凝らして見たり
いい魔法が無いか考えてみたりした
しかし、アイリちゃんもミリアちゃんもモニカちゃんも帰って来ない
1人だと眠くなるので目覚まし担当のゴーレムを作って起こしてもらう
ゴーレムと遊びながら監視を続ける
気が付いたら寝ていたらしく、ゴーレムに背中を揺すり起こされる
ゴーレムの指さす方向を見ると教会の陰に影が動いて居た
じーっと目を凝らして見てると何となくだが見えてくる気がする
何となくだがチンピラ一家のように思える
もしかして密輸品の強奪を考えての行動なのかと考える
余計な事を言わなければよかったと悔やむ
ここから寝かせられないかと考える
試してみるかと考える
するとまたゴーレムに背中を揺すられる、ゴーレムを見ると別の方を指さす
指さす方向を見るとアイリちゃんとノアちゃんとアルトンさんである
君たち何やってるのかと
アイリちゃんはチンピラ一家に気が付いたようである陰に隠れる
チンピラ一家もアイリちゃんたちに気が付いたようで陰に隠れる
いやはや、いったいどうしたものかと考える
そのうちにアイリちゃん達とチンピラ一家の後ろに影が動く
チンピラ一家は魔法で無力化されたようで倒れ込む、寝かされたのか?
続いてアイリちゃん達も倒れ込む、こちらも寝かされたのかな?
司教と司祭2人と数人の男達がチンピラ一家とアイリちゃん達を取り囲む
どうやら霊安室に連れて行かれるようである
何をやっているのやらである
アイリちゃんを助けに行きたいけど行くわけにいかない
困った話である
しばらく見ていても新たな動きは見えない、みんな霊安室に入ったままである
何とか霊安室の状況がわからないかと色々考える
透視は出来ないものかとか
虫のゴーレムを送り込んで感覚の共有で見たり聞いたりできないかとか
結界とインビジブルで侵入できないかとか
零体になって侵入できないものかとか
色々考えたが司教や司祭の実力がわからないので見守ることにする
夜明け前に空が白んでくる
山の向こうは日が昇っているのだろう、山の輪郭が白く帯になる
ゴーレムに背中を揺すられる
霊安室で動きが有ったようである
霊安室から数人の人影が出てきて桟橋に向かう
下流の方から船が2艘やってくる
桟橋に付くと霊安室からチンピラ一家とアイリちゃん達と捕虜の人達が出てくる
大人数である、一度に運べないようで数回に分けている
最後には司教と司祭2人も乗り込むが、密輸品を船に乗せていない
嫌な感じである
ゴーレムを元の石壁に戻してから船を追いかけて姿を隠して空を移動する
東門の横を船は進みキャラバンの川岸に到着する
チンピラ一家もアイリちゃん達も捕虜の人達も縛られている
司教と司祭2人が簡易祭壇で待つキャラバンの親方に歩み寄る
キャラバンの親方は揉み手をしている
何やら話をしてキャラバンの親方は周りをキョロキョロする
軽く談笑してから捕虜の奴隷契約を始めだす
ここは我慢である
捕虜の奴隷契約が終わりノアちゃんが引っ張られていく
そこにアイリちゃんが体当たりする
アイリちゃんを立たせて祭壇に連れて行く木綿のシャツにチョッキの男
やっぱりキャラバン全員がグルなんだなと改めて思う
ハンチング帽にチョッキを着た男も見張りで立っている
アイリちゃんが簡易祭壇に連れて行かれて何か言われている
ノアちゃんの方を指さして何か言われている
うなずくアイリちゃん
(バースト)
爆音が鳴り響き簡易祭壇が粉々に吹き飛ぶ
アイリちゃんのうなずいた理由は想像がつく、我慢が出来なかった
その音が合図かのように騎士団がキャラバンを包囲する
颯爽と登場するアリサさん、司教を指さして詰め寄っている
おれはアイリちゃんの傍におりて姿を現す
アイリちゃんが抱き着いてくる
「ありがとうです」
アイリちゃんがクンクンとペロペロしてくる
俺もよしよしと頭を撫でる
さてアリサさんはというと、司教と何やら話をしている
騎士長と騎士団が司教と司祭2人を逃がさないように取り囲んでいる
アリサさんの傍に行く
「密輸品なんか知らんな」
「私達は奴隷の引き渡しの為にきている」
「司教が奴隷をキャラバンに売ってはいけないのかね?」
司教が尊大な態度で話す
「それは構わないのでしょうが」
「他国の人間どうやって手に入れたんです?」
アリサさんに代わり俺が司教にと話す
「そこまで話す筋合いは無いだろう」
「しいて言えばツテと言う所かな」
ニヤニヤと勝ち誇ったように話す司祭である
「それは他国の人を司教様やそこの2人の司祭様が購入したのですか?」
「いや、購入はしていないな」
「それではまるで密輸みたいではないか」
「彼らが自分の意思でわしの奴隷になると言ったのだよ」
司教はがっはっはっはっである
「でもキャラバンから奴隷売買のお金を貰っていますよね?」
「取引が発生しているじゃないですか?」
「それは違うな」
「他国から来たこやつらは自ら進んでわしの奴隷になったのだ」
「その奴隷をキャラバンに売ったのだから問題はない」
「まったくもって問題がないのだ」
司教はがっはっはっはっである
「はあ、司教の奴隷をキャラバンに売っただけと?」
「くどい、そうだと言っている」
司教が怒鳴り出す
「では、アルトンさんこちらにきてください」
アルトンさんを呼ぶ
「マサト君、奴隷契約した者は主人に不利な事は言わないわよ?」
アリサさんは不安そうである
「みなさんが証人になってください」
「アルトンさん、その手の飾り紐は誰に貰ったものです?」
アルトンさんに問いかける
「婚約者のローラからですが?」
アルトンさんは質問の意味が分からずポカーンである
「だまれ、だまれっ!」
キャラバンの親方が怒鳴る、気が付いたようである
「婚約者からの贈り物だからどうだというのだ?」
司祭は得意げである
「親方は気が付いたと思いますけど、実はアレも商品なんです」
「奴隷は物ですので、奴隷の所有物は主人の持ち物になるんです」
「なので」
「司教から親方に商人ギルドを経由しない他国の商品が売買されたんです」
「それは密輸なんです」
はい論破である
「わたしはまだ金を受け取っていないっ!」
司教が吠える
「契約が成立した時点で取引されたと判断されます」
チャールズ司祭が歩いてくる
後ろにはチンピラ4人組がいる、呼びに行ったのだろう
「チャールズ、きさまの差し金か」
司教がチャールズ司祭を睨む、頬の肉がプルプル震えている
ガラガラガラと馬車がやってくる
2頭建ての木造の馬車に町の紋章が入っている
名主も馬車で駆けつけてきたようである
「フィリップ司教、話は本当なのかね?」
馬車から降りてくる名主
茶色の外向きカールの小っちゃい樽の様な名主が司教に聞く
「エディソン殿、わたしはハメられたのです」
「すべてはチャールズ司祭の陰謀なのです」
両手を広げてニヤニヤと名主に近づいていく
名主の後ろにアリサさんと騎士長が素早く移動する
アリサさんが名主にごにょごにょ話している
騎士長が名主にごにょごにょ話している
名主はうんうんと頷いている、急激に汗が吹き出し流れだす
「フィリップ司教、諦めるべきだな」
「あなたの地位なら全て自白すれば送還されるだけで済みますぞ」
「後ろの司祭は諦めるがよい、相手が悪い」
汗をふきふき名主が答える
「誰が相手だというのか、チャールズ司祭ごときであろう」
「わたしは司教だぞ、処罰できるものなどいない」
司教が吠える、吠えまくる
「騎士団の紋章に見覚えは無いか、フィリップ司教」
チラチラ騎士団の方を見る名主
「ん?」
「もしや、カール王子の?」
「まさか?」
「なぜ?」
司教が膝から崩れ落ちる
本人は居ないが印籠が炸裂である
一件落着でヨヨヨイヨヨヨイヨヨヨイヨイである、めでたいのである
日が昇り、朝日が辺りを照らす
キャラバンの人達も教会の関係者も騎士団によって拘束される
これから事情が聴取され家宅が捜査される
奴隷になった人はチャールズ司祭によって契約が解除された
チンピラ一家とアイリちゃんとノアちゃんはお話ししている
霊安室で何があったのかしらないが仲良しな感じである
俺達は孤児院に向かう
アリサさんは騎士団と後始末である
お肌の最終コーナーで徹夜させてごめんなさいである
孤児院に着くとチンピラ一家はいつの間にか居なかった
小屋では子供たちは薪割に家畜の世話に畑の世話に朝食作りをしていた
ミリアちゃんが来ていた
モニカちゃんを寝かしてから孤児院に来たそうだ
子供達と仲良く朝食を作っている
どうやら傷んでいる野菜は取り除いてくれているようである
みんなで朝食を取る、みんな笑顔で良かった良かったである
早く帰って寝たい
昼にアイリちゃんに起こされる
傍らにミリアちゃんも寝ている、宿に戻ってバタンキューである
俺が起きた時にミリアちゃんも目が覚めたようで上体を起こす
しかし、寝ぼけ眼のようで視線が定まらずにぼーっとしている
左手でミリアちゃんの寝癖をとかす
寝ぼけながら二ヘラと笑うミリアちゃんを始めて見る、これも可愛い
風呂に入って目を覚ましてから昼飯にするとする
モニカちゃんはアイリちゃんと入れ違いで出かけたと言っていた
タニアさんとサーニャさんの所に行ったそうである
ミリアちゃんとアイリちゃんとでアリサさんチェックの海鮮パスタ屋に行くとする
今日は貝と野菜の冷製パスタをいただく
「タニアさんとサーニャさんは商人ギルドの方に話をしてくれると言ってくれました」
「孤児院の子も見習いから仕込んでくれると言ってくれました」
「あと、モニカちゃんも雇ってくれそうです」
ミリアちゃんが報告してくれる
「そうか、何とかなりそうだね色々と」
「モニカちゃんもお別れになるのか、そうか」
お茶をすする
「お兄ちゃん達も真面目に仕事すると言ってくれたです」
嬉しそうにパクパク食べるアイリちゃんです
チンピラ4人組の事だろうと思う
食事の後に防具屋に行くとする
カウンターには黒い髪を横で一本おさげにした青い瞳の女の子が座っていた
「モニカちゃん、店番?」
「はい、働かせて貰っています」
ニコニコ笑うモニカちゃん
いつの間にこんなに明るくなったのだろうと驚く
「マサト君、いらっしゃい」
タニアさんが店の奥から顔を出す
「マサト君、2人を借りるわね」
背後からサーニャさんの声が聞こえる
ミリアちゃんとアイリちゃんの背中を押しながら店の奥に消える
「話は聞かせてもらったは、マサト君」
「商人ギルドは私達の味方よ、安心してね」
タニアさんはモニカちゃんを連れて奥に入っていく
ウインクを残して
店内に俺一人が取り残される、ポツーンである
カウンター裏の椅子に座り、ポーチから水筒とマグカップを出す
店番、長期戦の構えである
不意にモニカちゃんがパッと裏から飛び出してくる
「マサトさん、今日までありがとうございました」
一歩前に出て仰々しく頭を下げるモニカちゃん
「ん?どうしたの?」
「タニアさんとサーニャさんの会社で働かせて貰えることになりました」
「これもマサトさんのおかげです」
「わたしなんかにチャンスをくださってありがとうございます」
「いつかわたしもマサトさんのハーレムに入ってご恩返しさせてもらいます」
「それまで待っていてくださいね」
スッキリと清々しくニッコリ笑顔である
「あ、うん…まってます」
なんて答えていいのやら
笑顔を残して店の奥に消えるモニカちゃん
初めて会った時よりも元気で明るくなったと思う
あまり、話をしなかったのが今となっては悔やまれる
タニアさんとサーニャさんの所ならいつでもあえるだろう
今は会話なんて思いつかないがそのうちにでも何か話でもしたいと思う
しかし
そうか、モニカちゃんとはここでお別れなのかと考える
お茶をすする
日も傾いて夕方である
結局お客は1人も来なかった、防具屋は大丈夫なのかと心配する
モニカちゃんを抱きしめてお別れをするミリアちゃん
モニカちゃんの両手を握りお別れをしているアイリちゃん
モニカちゃんは俺に深々と頭を下げる
しばらく頭を下げたままだが、頭を上げた顔は爽やかな笑顔である
赤青ワンピーズと共に大きく手を振ってくれる
いつでも会えるのに仰々しいが、まあいいかと考える
宿に戻ると目の下にクマを張りつかせているアリサさんが居た
ソファーでお茶を飲んでいる
外に食べに行くのは辛そうなので宿で食事を取ることにする
果物も出しておくとする
「司教はカール王子の書簡付きで国に送り返すことになったわ」
「司祭の2人は牢獄に送られたわ」
「司祭以下の者達は厳重注意されて新しい司教の監督下に置かれるわ」
「次の司教が来るまではチャールズ司祭が代理となるわ」
「司教の自白で海賊も私掠免許剥奪のちに討伐されるわ」
「最初は名主も大事にしたくなかったみたいなんだけど」
「商人ギルドの役人が押しかけてきてうやむやには出来なくなったのよ」
「これで、めでたしめでたしよ」
アリサさんはオレンジをつまみながらお茶を飲む
「ありがとう、ゆっくり休んでくださいね」
アリサさんにねぎらいの言葉をかける
「ものすごく頑張ったんだけど、ご褒美は無いの?」
アリサさんは上目づかいにお茶を飲む、甘えた声である
「ご褒美は良いけど、寝てないでしょ?」
「今からがいいの」
アリサさんはカップで顔を隠しながら小さく呟く
「おいで」
立ち上がって、寝室に向かう
嬉しそうにアリサさんが抱き着いてくる
丁寧に丁寧に優しく優しくご褒美をあげる
アリサさんも疲れていたのだろう早々に満足げな寝息をたてる
ミリアちゃんとアイリちゃんがベットに入ってきて目を覚ます
アリサさんも起きたようである
起きたなら3人でご褒美を与えるとする
アリサさんも疲れているのだろう早々に体を痙攣させて横たわる
次は教会に侵入しようとしたアイリちゃんへのお説教である
これでもかこれでもかとミリアちゃんと2人でネチネチ責める
責められ疲れ、喘ぎ疲れてアイリちゃんはグッタリしている
眠りが浅かったのかアリサさんがまた起きたようである
起きたのならミリアちゃんと2人でご褒美の続きをする
マッサージの意味も込めてこねまわす、あらゆる場所をこねまわす
アリサさんはガクガクと身体を振るわして喉の奥から声を漏らす
満足したようで恍惚の表情を浮かべてベットに沈んでいる
ミリアちゃんにもお礼をしないとである
甘い短く声を漏らして甘えるようにキスを求めてくるミリアちゃん
やさーしくやさーしくゆーっくりゆーっくりお礼をする
手と足で、全身でギューッとしがみ付いてくるミリアちゃん
しばらくして、大きく長く息を吐きミリアちゃんから力が抜けていく
幸せそうに甘い息を吐いて俺の胸に顔を埋めて眠りにつく
朝はアイリちゃんに起こしてもらう
左手のモニュポヨンがない、左手のモニュポヨンを探す
しかし、ベットには俺しかいなかった
左手のモニュポヨンもモニュポヨン掛布団も無いとなると寂しい気分である
左手をニギニギしながら浴場に向かう
ひとっ風呂浴びてから朝食である
「カール王子様がお呼びだそうよ」
「昼に領主の所に来るようにって、ティム君とデニス君が伝えに来たわ」
「馬車を迎えによこすそうよ」
アリサさんが部屋に戻ってきた
「密輸の関連ですかね?」
アリサさんに聞いてみる
「どうかしら?」
「連絡は騎士長からされてると思うけど?」
「直接話を聞きたい事なんて無いと思うわ」
アリサさんはオレンジを摘まむ
「じゃあ、面倒ごとかなかもね」
お茶をすする
午前中はお出かけの準備である
ミリアちゃんとアイリちゃんとアリサさんはお買い物にいった
おれもお出かけの準備をする、目に付いた物はコピーしまくるとする
昼にアイリちゃんが迎えに来た
宿のロビーではミリアちゃんとアリサさんが待っていた
宿の前には2頭立ての馬車、木造のキャビンには領主の紋章が書かれている
「さあ、乗って乗って」
「行きましょう」
アリサさんに背中を押されてキャビンに乗り込む
「あら?モニカちゃんは?」
アリサさんがモニカちゃんを探している
「タニアさんとサーニャさんの会社に行きました」
「そういえば朝からいなかったわね」
「迎えに行った方がいいかしら?」
アリサさんが考え込む
「昨日から見習いとして働いていますよ」
ミリアちゃんが話す
「早く一人前になると言ってたです」
アイリちゃんも説明する
「あらそうなの?」
「早いわね、もっと遊んでからでいいのに」
アリサさんは残念そうである
「アリサさん、働くのは知ってたの?」
「もちろんよ、なんたって私は出資者なんですから」
アリサさんはエッヘンである
「そっか」
のけ者は俺だけでしたか
「モニカちゃんなら大丈夫よ、しっかりしてるんだから」
アリサさんに言われる
「はい、しっかりした子です」
ミリアちゃんに言われる
「しっかり者です」
アイリちゃんにも言われる
「だね」
どうやら心配してると思われたようだ
馬車は町の北側から出て丘の上にある領主の城だか要塞だかに向かう
丘に向かう道は左側に海が見える
ガエルの港にガエル湾、更にはエスパニョール岬とレオナール海岸の間のブレスト海峡
停泊地にある幾つかの小島も見て取れる
馬車の窓から見る風景はなかなかの絶景である
領主の城は壁が高く厚くできていた
城壁には大砲も見え海峡の守りを兼ねていることが見て取れる
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