第30話 オレロン町.2
お風呂上がりに窓辺に座り海からの風に涼む
本日も快晴なり、である
カチャリと扉の開く音がして振り返るとアイリちゃんが顔を覗かしている
どうやら今日も朝食の席に呼ばれたようである
カール王子と小サルを抱いたアン王女が正面に座る
フェイさんとうり坊を抱いた執事は傍らに立っている
2人のメイドさんが朝食の準備をしてくれている
「気にせずに座ってくれ」
イケメンが爽やかに着席を勧めてくれる
「考えたんだが、僕達の旅に同行するといい」
「王家で雇うと言うんだ、君達にも悪い話じゃない」
「冒険者として箔も付くし、大金も貰える」
「アンを助けてくれた報酬にもなる、名案だね」
食べながら何気なく話してくる
が、いきなりの提案である
俺達が町を出る話を誰に聞いたのかと
盗聴でもしていたのかと邪推する
「カール様、お申し出はたいへん名誉なことですが私共は王都に向かっております」
アリサさんが答える
「アリサ教授はこちらで送るので心配には及ばない」
「彼らへのこれまでの依頼の報酬もこちらから払おう」
「問題は無かろう?」
アリサさんはいらない子と言われています
「そんなカール様、私も一緒に」
アリサさんが涙目で俺の方を見る
「同行するならアリサ教授も一緒に」
うーむ、これはもしかしてアリサさんを使って言わされたのかな?
「よかろう、アリサ教授も同行させよう」
うん、とうなずくカール王子である
「ところで、なんで俺達なんです?」
当たり前の疑問である
「裏が無さそうだからね」
やけにあっさりと答える
「わかりませんよ?なにか裏があるかもしれませんよ?」
ふっふっふっ、である
「君はアンにも僕にも媚びないし褒美の話もしない」
「無理やり鉄イノシシ狩りに付き合わされたのに、命を掛けてアンを救出してくれた」
「そして素性を聞くと、あからさまに疑わしい話をする」
「悪人には見えないし、まるで隙だらけで武術の心得も有るようには見受けられない」
「僕は君を安全な人間と判断したからだよ」
「簡単に言うとお人好しのいい人だね」
なんか馬鹿にされている気がする
「いやいや、知ってましたよカール様と他の4人が入ってきたの知ってましたし」
「あえて無視して知らない顔を装っていました」
悔しいので言い返す
「そうか、ならば君を侮っていたことを謝罪しよう」
「しかし、僕の身代わりに命を狙われたいたことは気が付いていなかっただろ?」
「えっ?」
ザワザワ、ザワザワ
「暗殺者が2人来ていたと、君が風呂を出た後に報告があった」
「君は僕に背格好が似ているからね、暗がりでは見分けは付きづらいだろう」
「僕が浴場に行くのがもう少し遅れていたら、君は死んでいたかもしれないね」
とぼけた顔で恐ろしい事をおっしゃいます
「それは、流石に…マジで?」
定番のスキルだか魔法だかは結界だとか気配探知だっけ?
HP回復とか再生とか不死とかってどうやるんだ?
格闘だか体術とかも身につけないとダメなのか?
早急に覚える必要性を感じる、強く感じる
「考えてみたら僕は君の命の恩人のようだね」
やれやれ困ったな奴だな、こいつは…みたいな顔をしやがる、年下のくせに
「それに小サルをアンの為に捕まえてきてくれたんだろ?」
「また報酬を考えないといけないね」
いいようにされている気がする、なんか悔しい
俺の部屋に戻ってモニカちゃんを交えて会議である
「では、第一回カール王子対策会議を始めます」
「どうする?逃げる?」
いちおう聞いてみる
「マサトさんが逃げたいなら付いていきます」
「マサト様についていきます」
ミリアちゃんとアイリちゃんは全くブレないな
「ダメよマサト君、モニカちゃんまで追われるわよ」
「ミリアちゃんとアイリちゃんもちゃんと止めないとダメじゃない」
「もうこの子達は、私が居ないとダメね」
一番のダメ女が保護者面である
「モニカちゃんも一緒に同行で良いの?」
「嫌なら王都に送ってもらえるように言っておくよ?」
「一緒に行きたいです」
モニカちゃんも参加との事です
「まあ、そうだよね」
1人で王都に行っても身寄りも無いし
「では、当分王子に付き合いますか」
出航準備が出来たら呼びに行くからと言われたが別段することもない
窓から見える灯台にでも行こうかと考える
ミリアちゃんに話すとお弁当を持ってピクニックに行こうと提案される
宿でお弁当を作ってもらい時間停止のポーチに入れてお出かけする
サルを抱いたアン王女にフェイさんとうり坊を抱いた執事さん
ミリアちゃんとアイリちゃんとモニカちゃんとアリサさんと俺で向かう
町の南から岬の高台に続く道を進む
丘をあがると灯台の頭が見える、灯台に近づくとその向こうに海が広がる
高い崖の上から見下ろす大海原である
崖に近づくと飛んでると錯覚するほどの絶景である
灯台の傍でシートを広げのんびりと景色を見ながらの日向ぼっこである
フェイさんが灯台に登らせて貰えるよう灯台守の許可を取ってくれた
石造りの3階建ての塔である、最上部には焚火台がある
灯台から見る景色も素晴らしい、更に飛んでる感が有る
ミリアちゃんとアイリちゃんを両腕に景色を堪能する
後ろからアリサさんが抱き着いてくる…寂しがりである
モニカちゃんはアイリちゃんの後ろに抱きるついている
螺旋階段を降りると影が動いた気がして部屋を覗く
部屋の中には青色の扉がある、灯台の形状からその向こうに部屋は無い
どうやら地下室に入る階段を見つけたようである
入ってみたいよね
部屋に入って扉のノブを回して扉を少し引いたところで止められる
「すいやせん、旦那」
「待ってくだせい」
灯台守が青い顔をする
「地下室ですよね?」
「見させてもらっても?」
「いや、そこは」
「すいやせん」
頭に手を置いてペコペコする
「入らない方がいいです?」
「へい、困りやす」
困るようなので入るのを辞める、関係者以外立ち入り禁止なのかもしれない
しかし、この灯台守はいかにも悪役顔なんだがホントに灯台守なのかと
「マイケルが居ないの」
灯台の外に出るとアン王女がやってくる
「さっきまで手をつないでいたのにいつの間にか居ないの」
寂しそうに呟くアン王女である
ミリアちゃんがアン王女をヨシヨシしている
しかし周りを見てもマイケルは見当たらない
「何をしている、早く探しに行かないか」
フェイさんが探せと俺に言っているが、自分で探せと思う
「はあ、探してきます」
フェイさんはすぐキレるからおとなしく従う事にする
崖に向かいドキドキしながら崖下に近づく
落ちたかな?
などと崖下を見ようと思うが怖くて見れない
飛べばいいと気が付き風魔法のフライを使って探すが見当たらない
岬の下の入り江に洞窟がるのが見えるが、マイケルの姿は見えない
念のため下りてみる
岬の下の洞窟はとても広い空間である、高さは塔の教会が入りそうである
洞窟内には船が停泊している、2本マストのブリッグ型海賊船であろうか
海賊船なら財宝である
船に乗り込み財宝を探す、甲板に金貨の山と宝箱である
財宝を漁り物色する、やはり持っていくのは金貨か宝石かと
途中で荷物に交じって樽の様なロボットが有ったが見なかったことにする
船室に入り更に物色するが興味を引くものは無い
船長室には左目に眼帯をはめた骸骨が椅子に座っていた
傍らの大きな宝石はお約束なので取らない方がよさそうである
話声が聞こえる洞窟奥の方から誰かがこちらに来るようである
船から降りて洞窟の入り口の陰に隠れる
マイケルを抱いたアン王女を先頭にモニカちゃんとアイリちゃんとミリアちゃん
4人と1匹が洞窟の奥からやってくる姿が見える
洞窟の通路で立ち止まり海賊船を見上げて感動の声を上げている
アイリちゃんがクンクンしている、ゆっくり首が動き俺の方を向く
俺が居るのがバレバレのようである
ジェスチャーでこっちを見ないように指示する
4人と1匹は海賊船に乗り込み財宝に目を輝かしている
宝箱を開けて金貨のシャワーを浴びているモニカちゃん
王冠をかぶり宝剣を手にポーズを取るアン王女
マイケルの頭には海賊の帽子、眼帯もはめている
アイリちゃんも海賊のターバンをかぶり海賊ゴッコを始めだした
ミリアちゃんは奥の船長室に入っていく
4人と1匹の後ろから灯台守の男とその他に2人、男と女が忍び寄る
こっそり後を付けてきたようである
しかし、アイリちゃんのには気づかれていたようで返り討ちに有っていた
アイリちゃんとマイケルの海賊コンビが灯台守ともう一人の男を殴りつける
アン王女が宝剣で女を叩く
モニカちゃんが金貨や宝石を投げつける
もったいない
3人組を叩きのめしてミリアちゃんが船長室に閉じ込める
あぁ、そこは駄目です
突如、洞窟が崩れ始める
壁が崩れ、天井から岩が落ちてくる
4人と1匹は慌てて海賊船から海に飛び降りる
俺は姿を現しこっちに来いとジェスチャーする
アイリちゃんを先頭に真っ直ぐ俺の所に泳いでくる
アン王女を連れてマイケルまでもが泳いでる
天井から岩が落ちてくる、ボチャンボチャンと音をたてる波があがる
4人に岩が当たらない様に風魔法のシールドを使う
シールドに落ちてきた岩があたり砕ける
こちらまで泳いできたアイリちゃんを水から引き上げる
次にモニカちゃん、そしてミリアちゃん
アン王女はマイケルが引き上げる
急いで洞窟の外へと続く道へ向かうが道は海までである
土魔法のディグを壁に使って壁を壊す
壊した壁を抜けて岬を回り込んで海岸に出る
海岸にはアリサさんとフェイさんとうり坊を抱いた執事が居た
フェイさんがアン王女に駆け寄り抱きしめる
心配したのであろうフェイさんの瞳に涙がにじんでる
うり坊を抱いた執事が傍らに立つ
「アン王女が灯台守の制止を聞かずに地下への扉に入ってしまったのよ」
「すぐにアイリちゃんとモニカちゃんとミリアちゃんが追いかけたの」
「私達はは灯台守に止められてね」
「灯台守が連れ帰るって言うので灯台で待っていたのよ」
「そしたら凄い地震で」
「ここに居たら危ないと執事さんが言うから海岸に避難したの」
「そしたら凄い音がして灯台ごと岬が崩れたのよ」
「怖かったわ」
アリサさんが説明してくれる
灯台は岬の洞窟が崩れた時に一緒に落ちてしまったようである
危ない所であった
「本物の海賊船、凄かった」
アン王女が興奮気味に話す
「凄い財宝が有ったの」
モニカちゃんも興奮しています
「悪者が追ってきてて、やっつけたんですよ」
ミリアちゃんも楽しそうだ
「キッキッキキキ」
マイケルも力こぶを作る
「凄い罠が沢山あったです」
アイリちゃんも楽しかったようである
少女達と1匹の冒険譚は尽きず4人と1匹でキャッキャッと話している
各々がポケットに入れていた財宝を出して日の光にキラキラさせていた
ちゃっかりしている
岬の入り江から海賊船が姿を現す
灯台守とその他2人を乗せたまま大海原へと旅立って行いった
みなずぶ濡れである、宿に戻り風呂に入ることにする
ミリアちゃんとアイリちゃんが風呂上がりに俺の部屋にきて冒険譚を話してくれる
「灯台の階段をおりると壁が崩れてて洞窟に繋がっていたんです」
ミリアちゃんが話してくれる
「死体があったんです、カギを持っていたんです」
アイリちゃんも興奮気味にななしてくれる
「洞窟を進むと罠がパーンとして潰されそうになったんです」
アイリちゃんわかり難い
「壁に模様とカギ穴が有ったので死体が持っていたカギを使ったんです」
「でもそれも罠でアン王女が落とし穴に落ちそうになって」
「マイケルが素早くアン王女を助けたんですよ」
「その先には滝が有って凄い綺麗だったんです」
「そして道を進むと丸太の橋が有って」
「アリサちゃんが後ろから誰かが追ってくると教えてくれて」
「そうなんです、臭くて嫌な感じだったです」
アイリちゃんは興奮気味に話す
「だから、丸太の橋にオリーブオイルをまいて滑りやすくしたんです」
「ちょっとしたいたずらみたいな物です」
ミリアちゃんがお茶目に笑う
「丸太の先は行き止まりで部屋みたいな場所が有って」
「そこに骨で出来たオルガンが有って、アン王女が弾いたんです」
「とても上手だったんです」
「みんなで演奏を聴いていたらマイケルが何処からか譜面を持ってきたんです」
「アン王女がその譜面見ながら弾くと洞窟の道が開けて」
「道を進むと海賊船があったんです」
ミリアちゃんが説明してくれる
「マサト様がこっち見るなと言ってました」
アイリちゃんがバラします
「そういえばマサトさんはなんであそこにいたんです?」
ミリアちゃんも疑問になったようです
「マイケル探して、海側から入ったからね」
答えておく
「それで海賊船に宝物がいっぱいあったんです」
「みんな大喜びだったんです」
アイリちゃんが楽しそうに話す
「奥の部屋には海賊の船長らしき骸骨が有りました」
「1人で船と宝を守っていたんだと思います」
ちょっと寂しそうに話すミリアちゃん
ミリアちゃんそれは違うと思うよ
船長は自分で作った財宝の隠し場所から出れなくなったんだと思うよ
「あと、後ろから来た人たちが襲い掛かってきたんです」
「みんなで戦って撃退しました」
アイリちゃん興奮して身振り手振りを交えだす
「捕まえて船長室に入れたんです」
「そしたらものすごい揺れがあって洞窟が崩れて」
「マサトさんが助けて助けてくれたんです」
「マサトさんはいつも助けてくれますね」
「ありがとうございます」
ニッコリ笑顔のミリアちゃんです
2人の世界に入っていたらアイリちゃんが寂しそうな顔をする
ミリアちゃんとアイリちゃんを抱きしめる
「2人とも大好きだよ」
「はい」
「あい」
ミリアちゃんもアイリちゃんも甘えた声で答えてくれる
幸せです、はい
カチャリと扉が開く音で扉の方を見る
扉の隙間から青い瞳が覗いている、怖いよアリサさん
「楽しそうでいいわね」
「出発の準備が出来たら港に来なさいって」
アリサさんがちょっとすねてる
出航のようです支度をして港に向かうとしましょう
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