第29話 オレロン町.1


朝、アイリちゃんに起こされずに目が覚める


左手はお約束のモニュポヨン、しばし堪能してからモニュポヨン掛布団をどかす


ミリアちゃんの姿は既にない、部屋に戻ったのか風呂なのか


おれは浴場に向かうとする



まだ日も登り切らない薄暗い中で身体を洗って湯船に浸かる


本日も晴天である、のんびりと湯船に浸かる



部屋に戻るとアリサさんはまだ寝ていた、相変わらずの壊滅的な寝相である


ふと、たまにはアリサさんを起こしてあげようと考える


キスをする唇を舐めて柔らかくして唇を吸う、口の中を舌を這わせる


ちいさな呻き声をあげてアリサさんが薄目を開ける


抱き寄せるように抱きしめて、軽くキスをする



「おはよう」


イケメンなら決まるが、俺では微妙かななどと考える


しかしアリサさん嬉しそうに抱き着いて情熱的に唇を押し付けてくる



「おはよう、朝ですよ」


唇を離して再度言う



顔を真っ赤にして俺を抱きしめて胸に顔を押し付けて甘える


「おはよう」と、呟やいてから俺から離れる


そしていつもの様に恥ずかしそうに前髪で顔を隠しながらコソコソと支度をする




窓から景色を見ているとアイリちゃんが呼びに来る


アン王女が呼んでいるから皆で来るようにとフェイさんが言っていると


廊下に出るとフェイさんに連れられてみんな揃っていた



アン王女の部屋は最上階であるロイヤルスウィートである


もはや家である、リビングが有るのである


リビングで待たされてアン王女とうり坊を抱えた執事と青年が現れる


フェイさんが青年の横に立つ



「座っていい」


青年に促されて全員座る



「僕の名前はカール、アンの兄である」


「話は聞いた、アンを救ってくれたことに礼を言う」


「何か欲しいものはあるのかな」


「なるべく希望をかなえよう」


カールと名乗る青年がおっしゃいます



青年は第3王子らしい、アリサさんが小声で教えてくれる


見た目は人のよさそうなお兄ちゃんである



金の瞳と金の髪、ミディアムストレートの髪型のイケメンである


年齢は16か17歳位、細身の体に高価そうな杖持ちである魔術師であろう



「はい、では開放してください」


希望を率直に伝える



「ん?誰をだい?犯罪の内容によるけど手を尽くす事を約束する」



「いや、俺達をです」



「君たちは犯罪者では無いだろ?それとも何かしたのかい?」



「うーむ、王都に行きたいです」



「わかった、僕の乗ってきた船で送ろう」



「いや、何もいりません」



「なんだ、欲がないんだな」


「はっはっはっはっはっ」


わざとかこいつ?



「では、報酬については僕の方で考えることにしよう」


「アンとは仲良くしてくれ、頼んだよ」


王子と王女はうり坊を抱えた執事を連れて退室していく



この部屋には王子の配下の魔術師みたいなのが4人ほど居るのだが


笑いをこらえているように感じる、目を合わせると上を見やがる


何か悔しいが部屋に戻る、もうひとっ風呂入ってくっかな



風呂に向かうと見たことのない騎士団の一団が居た


朝の風呂を順番に入っているようである


怖いので部屋に戻ることにする



部屋の窓から外を見ると、治療院の周りが騒がしく見える


アン王女のお付きの騎士たちが騒いでる


カール王子がきて何か指示でもされたのかと考える



アイリちゃんが朝食に呼びに来たので聞いてみる



「わからないです」


窓から入る風にクンクンしている




本日は教会のお祈りの後は雑貨と食料の買い出しをしようと思う


朝市には果物に野菜に肉に海魚に川魚、香辛料に調味料などなどある


やはりブレオテの町に比べてお高めであるがこれが標準なのかもである



雑貨屋にはオイルランプが置いてあった、お高めだが珍しいので眺める


高級な雑貨が並んでおり貿易の町なんだとあらためて思う



道具屋では水の湧き出す水袋なる魔導具が有った


しかし、魔石Fでマグカップ一杯分の水である


砂漠では神だが、日常では効率が悪い微妙過ぎる…でも欲しい、でも高い


断腸の思いであきらめるとする



武器屋も防具屋も高級品が並んでいるお高いので見るだけである


魔法屋は中級までで上級は見当たらなかった


アリサさんに聞くと上級の魔法は魔法学園が管理していると教えてくれた


王都に行ったらアリサさんに頼んで見せてもらおうと思う



アリサさんのオススメのお店で海鮮パスタを食べていたらドーンと音が聞こえた


町の北側、遠くに煙が上がってる火災のようである


みな外に顔を出して煙を見ている


自警団と騎士が走っていく姿が見える、野次馬も走って行く


その光景を食後のお茶を飲みながら眺める



町の北側は騒がしいので西の港に向かう


港にはカール王子が乗ってきた船が停泊している


船員が整備をしていつでも出向できるように準備しているようである


3本マストのキャラベル船、全長は30メートルほどである


今は帆を畳んでいるが帆を張り風を受けた姿はとても綺麗であろうと思う


船名はニーニャ号とある、カール王子の趣味が心配になる名前である



アリサさんの話ではカール王子は妹思いのお兄ちゃんであるという


いつも妹の傍にいて何かと面倒を見ていると


今回もアン王女を追って船で来たのではないかと話している


王族は魔法に秀でているが、カール王子は特に魔法の才能が有るらしい


学園の理事を務め学内に自分の研究室も持っていると言っていた



なるほど、イケメンで地位と権力と才能を持ったシスコンである


仲間ではないので関わらないようにしようと思う



唐突であるが港に猫が居たのに驚いた


ネコが居るんだなどと腕を組み感慨にふける


バックから肉と魚を出してどっちを食べるか見てみる


両方食べて更に要求してくるので好きなだけ食べさせてやる


満腹になったようで地面に寝転んで寝返りをうつ


撫でながら俺も日向ぼっこをする…そりゃいるよな、などとと思う



話しかけてみたが言葉は話せないようだった


知ってたけど、試してみたくなったのである




ブラブラとしながら宿に戻る


夕食前に風呂にでも入ろうと考える



宿には誰も居なかった


従業員に聞くと王子も王女も騎士団も出ていると言っていた


ならばと、気兼ねなく風呂に入るとする


どうやらこちらの人は朝しか風呂に入らないようである


温泉地ならともかく、そんなに頻繁にお湯を沸かすなんて王侯貴族くらいだろう


庶民にはできない贅沢を満喫するとする



部屋に戻り窓を開けて海を渡る風に吹かれる


夕日を眺めていると騒がしい声がする


教会の塔の上に大サルが見える…あーコングね


夕日に照らし出されこげ茶色の毛皮も朱く見える


右手にアン王女が握られていないのが幸いである


また、奪還作戦に駆り出される所であった


お茶を飲みながら見物するとする



町の中心にあるゴシック様式の6階建ての塔の教会


6階建ての塔の上に、さらに高さが2階分の三角錐の鐘楼が乗っかっている


そこに大サルがいた、胸を張りグーで叩いたドラミングをする


崩れた石が落ち地面に激突する


塔は騎士達に囲まれている、6階の屋上にも騎士の姿がチラホラ見える


野次馬も沢山来ており人だかりである



アン王女を追っかけてきたのかなっと考える



カチャリと扉の開く音がする


夕食が出来たのかと、マグカップを飲みながら振り返る


アリサさんに連れられたアン王女とフェイさんとうり坊を持った執事が居た




「助けて欲しいの」


「あの子を助けて欲しいの」


アン王女様のお願いです



「カール王子に言うべきでは?」



「お兄様は駄目だと」


瞳に涙を浮かべている


今にも泣きだしそうに震えている



フェイさんの方を見ると首を横に振っている



「逃がすにしても、大サルも納得しないでしょう」


「アン王女を追っかけてきてますし」



「テイムして連れて帰るの」


「そうすれば安全なの」


アン王女の瞳から涙が零れる



「あんなに大きいサルは王都に連れ得ていけませんよ?」


「それこそ王都であんな真似すれば殺されますから」



「大丈夫、テイムすれば大丈夫だから」


「お願い、お願い」


アン王女は瞳からボロボロ涙を零します



窓の外を見ると光魔法のライトの灯りが照明弾の様に空に輝いている


その明かりに照らし出された大ザルに向けて魔導士が攻撃魔法を飛ばす


カール王子の側近の4人はフライで空を飛び大サルに魔法で攻撃している


大サルの足元では騎士数人が手に槍を持ち下から突いている



アリサさんを見る



「アン王女はテイマーなのよ、動物と心を交わして使役させるの」


アリサさんが説明してくれる



ミリアちゃんとアイリちゃんを見ると、頷いている


えーやるのかと



「えーっと、作戦を説明します」


「そのうちに大サルは力尽きて塔から落下します」


「俺が小さくしてミリアちゃんが受け止めます」


「アリサさんがフライでミリアちゃんの所まで誘導」


「アイリちゃんはモニカちゃんとアン王女の所に居てね」


「以上です」


簡単に説明する



「小さくする?小さくするって?どうやって?」


フェイさんが突っ込んできます



「あー禁則事項です」



「ふざけるな、アン様がこんなに頼んでいるのだぞ」


フェイさん、すぐ怒る…牛乳飲まないから色々足りないんだな



「アン王女様、約束してください」


「これから俺達がすることは他言しないと」


「こちらに居る2人にも約束させてください」




「約束する、この者達にも約束させる」


「だから助けてあげて」


アン王女は瞳からボロボロ涙を零しながらうなずく




ライトの光に照らし出される大サル


足元に群がる騎士が槍で突き刺す、上空にはカール王子の側近の魔術師


4人各々が得意とする魔法を無防備な大サルにぶつけている


鐘楼の上では大サルは抵抗したくても出来ない状態である


教会の塔は6階建て更に大サルの居る鐘楼は2階ほどの高さが有る


あわせて8階24メートルから落下すればただでは済まない


たとえ生きていたとしても下で待ち受ける騎士団が止めを刺しに来る


大サルは絶体絶命である



まずは魔法の準備である小さくする魔法


レンガを手に取り集中する、小さくなるイメージ


ボンヤリと輪郭がぼやけて小さくなっていくイメージ、収縮するイメージ


画像の拡大縮小の縮小である、スススーっと縮んで行くイメージ、縮小



”小さく、小さく、小さくなあれ、小さくなって小サルさんになあれ”



えっ?呪文はこれで良いの?いいのか?



次は少し離れて待機する


いいタイミングで大サルの手元を吹き飛ばして落下させようと考える


その時に光魔法のフラッシュも目くらましに使うとする


準備は万端である




大サルはタフである、切られ削られ燃やされ突かれても抵抗する


腕を振り、足元を蹴り牙をむきドラミングで威嚇する


毛皮は黒く変色し顔は赤く染まる


上空の魔術師は手を緩めずに追撃の攻撃魔法を飛ばす


騎士団が足元から槍を突き立てる



大サルが体を支えている鐘楼の突起を土魔法のブレイクで破壊する


大サルが驚いた顔で手元を見る、落下する


アリサさんが風魔法のフライを唱え自然な落下を装いこちらに誘導する


光魔法のフラッシュを4つほど強烈に光らせる


大サルに弱体魔法のスモールを発動する



(”小さく、小さく、小さくなあれ、小さくなって小サルさんになあれ”)



落下しながら徐々に小さくなっていく大サル、落下中に治療魔法を使う


ミリアちゃんの胸に落ちるころには大サルは小サルになっていた


小サルは落下の間から俺達をジーっと観察している


敵ではないとミリアちゃんが話しかけている



落ちた大ザルの確認に騎士団が塔の下に詰めかける


小サルは毛布に包んで連れだすとする




部屋に戻り再会を喜ぶアン王女と小サル


小ザルはアン王女に抱き着いてチュッチュッしている


アン王女は小サルに話しかけている、テイムしているのかな?


アン王女が言うと頷いているが、テイムされているようには見えない


ただの少女好きの小サルが少女と遊んでいるだけである



アン王女は嬉しそうに小サルと遊んでいる


モニカちゃんとアイリちゃんも呼ばれて小サルをさわらせてもらっている


フェイさんとうり坊を抱いた執事も安堵したのか微笑んでいる



窓の外を見ると塔の周りでは消えた大サルを探して大騒ぎである


夜通しの捜索になるだろう、騎士団の苦労がしのばれる




アン王女と夕食を取る


小サルは王様のようであった


アン王女の横に座り、アン王女に食べさせてもらっている


おままごとににも見えるが、小サルの態度が何かむかつく


食べたいものを指図してアン王女がそれを取って小サルの口に運ぶ


とてもテイムできてるとは思えない、主従が逆である


これで良いのかとフェイさんとうり坊を抱いた執事を見る


嬉しそうにアン王女と小サルを眺めている


ダメだこりゃ、である




夕食の後は風呂である


誰も居ない風呂にのんびり浸かる、明日の朝にでも出発したいなと考える


この町も十分楽しんだし、大サルの捜索と被害の修理は手伝いたくない


朝食の席で話して、アリサさんに王子でも王女でも伝えに行かせればいいだろう


それでいいだろうと考える




部屋に戻るとミリアちゃんとアリサさんが待っていた


アン王女と小サルが再会できてよかったっとミリアちゃんが言っていた


アリサさんは黙って俺の下着を下げて、美味しそうにほおばっていた



しばしミリアちゃんと会話をする


明日の朝に王子と王女に挨拶をしてから町を出ようと話をする


その後で一人没頭しているアリサさんの教育を2人でする


身体を痙攣させて恍惚の表情で横たわるアリサさん


額をこすりつけて甘えてくるミリアちゃん


甘えてくるミリアちゃんをたっぷり時間をかけて優しく優しく甘やかします




朝、アイリちゃんに起こされずに目が覚める


左手はお約束のモニュポヨン、しばし堪能してからモニュポヨン掛布団をどかす


ミリアちゃんの姿は既にない、部屋に戻ったのか風呂なのか


おれは浴場にむかう



まだ日も登り切らない薄暗い中で身体を洗って湯船に浸かる


海からの日の出は見れないが、背後から段々と明るくなっていく


今日も快晴、いつもの鼻歌を歌いながらマッタリを湯を楽しむ



「珍しいフレーズだね」



声のする方向を見るとカール王子が湯船に入っていた


俺とは反対側の縁に肩まで湯に浸かっている


誰も居なかったと思ったんだが、居たのかと



「いらっしゃるとは気が付かず失礼しました、俺はこれで」


ここはフェイさんが真っ赤な顔で胸元を抑えながら立ち上がる展開のはずでしょうと


男湯だけど



「話をしよう」


湯に浸かる様に指示するように手が動く



湯に戻りながら周りを見ると魔術師4人組が服のまま浴室にいる


裸のまま仁王立ちされても困る、服で正解である



「では、失礼しまして」



「君は不思議だね」


「僕達を見る目が他とは違うようだ」


「いや、不敬という意味ではない」


「普通の人は僕達を王族として見るが、君は何処か違うようだ」


「なぜなんだい?」


徐々に近寄りながら質問してくる



「辺境の田舎者だからじゃないでしょうか?」


「高貴な人を見たことも無ければ、ちゃんとした礼儀も教えられたことは無いです」


高貴な人なんかテレビの中でしか知らんからな、しゃーなしである



「そうか、辺境の田舎から」


「話を聞いても?」


聞いてどうするのかと、王子って暇なのかな?



「はあ」


魔術師の弟子の設定を話すとする




部屋に戻るとアリサさんは居なかった


窓は開け放たれ海風がのぼせ気味の頭には心地よかった


魔術師の設定から始まり、この町に来るまでの話をする羽目になった






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