第27話 アングレーム街道.2


昼食も終わり


カラカラカラカラ音を鳴らして馬車は進んでいく



馬車が止まる


窓の外を見て見るが道の途中である、田園風景が見えるだけである



「マサト様、向こうで何かが争っているようです」


アイリちゃんが指さす



言われてみてみれば土埃が見える


馬車がグルグル走り回っているようである



「いや、大丈夫でしょう」



「ダメでしょ」


「アイリちゃん、向かってちょうだい」


アリサさんがダメだという



「はい」



何やら、あぜ道を土埃のする方向に向かうらしい




草原をグルグル回る馬車とそれを追う3メートルのアイアンボアー


御者の男は事切れており、手綱に絡まり御者台の手摺に横たわる


辺りにはプレートメイルの一団が右往左往している


拠点だったのだろう荷物は散乱してテントは潰れている



馬車には紋章が書かれており、身分の高い家の馬車だとわかる


馬車の中には金の髪の女の子と白髪の爺さんと銀の髪の女性が見える


2人は小さい女の子を抱きしめている



「いや、無理…戻ろう」


サックりと決断を下す



「王家の紋章よ、見た以上は助けないと後々まずいわ」


「こちらの馬車には学園の紋章が入ってるから身元がばれるわ」


アリサさんが反対する



「ミリアちゃん、アレ止められる?」


「無理でしょ?」


「逃げても処罰されるのはアリサさんだけだから逃げても大丈夫だよ」


ミリアちゃんはこちらを見ている



「武器と防具を出してください」


ミリアちゃんはやる気である



ミリアちゃんの武器と防具を出して渡す


いつの間にかアイリちゃんも下りてきていた


「いる?」と聞くと頷いたので武器と防具を渡す



仕方ないので馬車の屋根に乗り状況を確認する



御者の死体が手綱を引っ張って草原を馬車がグルグル大きく回っている


後ろから3メートル級のアイアンボアーが追っかけてる


騎士団が鉄イノシシの前で盾を構えるが弾き飛ばされる…よく生きてんな


以下繰り返しである



なんで鉄イノシシが追っかけてるのかと馬車をよくみる


はいテンプレですね、金髪の女の子が鉄イノシシの子供を抱いているっと



やることは決まる、子供を返して逃げるのである


凄い事すると後々色々な何かが始まるから大人しめでやらないとである



「モニカちゃん、あの馬車を街道に持っていける?」


傍らのモニカちゃんに聞いてみる



「御者台に行ければ後は手綱を引くだけです」



「アイリちゃん、こっちの馬車扱えるようになった?」


下で着替えるアイリちゃんに聞いてみる



「ゆっくり走らせるだけならできます」


いそいそと防具を付けながら答えてくれる



「では、作戦を説明します」


「アイリちゃんはこの馬車を街道まで走らせます」


「ミリアちゃんが鉄イノシシの前足狙って転がします」


「アリサさんがでっかい穴ほって鉄イノシシを落とします」


「俺がモニカちゃんを御者台に乗せます」


「モニカちゃんは手綱取ったら街道まで逃げます」


「アリサさんはミリアちゃんを抱えて街道まで飛びます」


「俺はキャビンに入って鉄イノシシの子供を確保して親に返します」


「これで完璧」


「不安な人いますか?」


返事は無い、大丈夫なようだ




作戦開始です



「魔法学園の者です、加勢します」


アリサさんが叫ぶ、騎士たちがアリサさんに注目する



俺はモニカちゃんを連れて空で待機


アイリちゃんはすでに馬車を走らせている


ミリアちゃんがアリサさんを見てアリサさんは頷く


ミリアちゃんは身体強化を使い、戦技でチャージを使い力を溜めている


アリサさんはミリアちゃんに強化魔法の防御力強化と攻撃力強化を掛ける


馬車が最終コーナーを曲がってこちらに向かってくる


俺はモニカちゃんを抱えて御者台に飛び乗る


モニカちゃんが手綱を取るまで落ちないように抱きしめる


モニカちゃんが手綱を取ったところで御者台に座らせる


ミリアちゃんは戦技の突進を使い鉄イノシシの右足に盾を構えて体当たりする


右足が内側に入り牙が地面に突き刺さり、鉄イノシシは宙に舞う


空中から地面に激突するところでアリサさんが土魔法のディグを使って穴を掘る


綺麗に頭から穴にすっぽりとハマる


俺はキャビンに入り嫌がる幼女から鉄イノシシの子供を強奪して外に飛び出る


ハマっている鉄イノシシの横に子供を置いて街道に向かう


遠くから穴から抜け出す鉄イノシシの姿が見える、親子の再会である


森に帰っていく


ミッションコンプリート、である




街道には息も絶え絶えの騎士団が倒れ込んでいたり座り込んでいたりである


御者の亡骸は何人かの騎士によって下ろされ祭司によって埋葬されている



王家の紋章の馬車はボロボロであり、金髪の女の子がえらそうにしている


輝く金の髪の少女、瞳の色も金色であり年の頃は11歳か12歳か


赤いリボンのついた絹のブラウスにふくろはぎ丈のフリルスカートである



傍らには白髪の老人かと思ったらホワイトグレーの髪の執事さん


燕尾服似た形の黒の執事服を着ている、青のベストに×の青タイである



銀の髪の女性はお付きの騎士なのであろう王家の紋章入りサーコートである


緑の瞳に凹凸の少なくスレンダーなシルエットである


そして耳が長く尖っている?エルフなのに王国騎士?剣を使うの?謎である



騎士団の紋章入りのサーコートの男が直立不動の姿勢で微動だにせずにいる


栗毛短髪太い眉に細い目で四角い顔である、プレートメイルを着た岩男である



ミリアちゃんとモニカちゃんを傍らにアリサさんが何か話している


アイリちゃんとお茶を飲みながら見物する




しばらくすると何人かの騎士が馬と馬車を引き連れてやってくる


馬車にはメイドさんが乗っており食料などが積み込まれていた


騎士団と下男は歩きか



眺めているとアリサさんに呼ばれる



「あの…第2王女様なんだけど、あなたを呼んで来いと」


「納得いかないと思うけど、堪えてもらえないかしら?」


肩を落としてため息を付く



「あーがんばります」


そうなのかーそうなのかー



御者台から降りて第2王女様の下に向かう



「あの子はわたしのうり坊だったの、取り返してきなさい」


第2王女は怒っています、激おこぷんぷん丸です



執事を見る、目が合うと明後日の方向を見る


女騎士を見る、目が合うと明後日の方向を見る



「こっちを見なさい」


「これは命令です、あの子を取り返してきなさい」


腰に手を当てて胸を突き出し怒っています



「はい、わかりました」


「では、失礼します」


お辞儀をして下がる



「え?」


「え?」


「え?」


「え?」


第2王女様と執事と女騎士とアリサさんから驚きの声が上がる



「アリサさん、モニカちゃんとミリアもいきますよ」


馬車に向かう



「待て待て、何処に行くんだ?」


女騎士が声を掛けてくる



「準備ですが?」



「そうか…早めにな」



馬車に乗り込みみんなも乗る様に言う


全員が乗ったことを確認してモニカちゃんに馬車を出すように告げる



「待て待て、何処に行くんだ?」


女騎士が声を荒げて駆け寄ってくる



「準備ですが?」


止まる馬車から顔を出して答える



アリサさんが呆れるように俺を見る



「待て待て、一旦降りろ」


キャビンの扉を開けて下りるように促される



「なんでしょう?」


キャビンをおりて話を聞くとする



「逃げるのか?逃げられるわけないだろう?」


呆れるような顔をする



「いえ、準備のために近くの町に行くんですよ?」



「すぐに捕まえに行けばいいではないか?」



「あなた方がやられるような相手に正面から勝てる訳ないでしょ?」



女騎士は、ぐぬぬ…な顔をする



「では、準備がありますので行ってきます」


お辞儀して馬車に乗り込む



「待て待て」


必死に止める



「なんでしょう?」


キャビンから顔を出す



「いいから、ちょっと待ってろ」


「いいか、動くなよ」


「絶対に動くなよ、そこに居ろよ」


何度も何度も振り返りながら王女様の下に戻っていく



「どうするの?」


アリサさんが窓の外を見ながら聞いてくる



「いや、無理だからほっとこうかと」


「期限も言われてないし、そのうち飽きるだろうと」


女騎士の行方を見る、第2王女と話しているようだ




結構な時間を待たされて野営地だった場所に連れて行かれる


騎士団が野営地を立て直している、泊まる気のようだ



馬車から降りろと促される、全員で第2王女のテントに呼ばれる


中央に第二王女で左の壁に執事、右の壁に女騎士が立つ



「控えなさい」


女騎士が指示してくる



「顔を上げなさい」


「助けてくれたことに、礼を言います」


「取り返してこいとの命は、取り消します」


「その代わりに手伝うのです」


第2王女がおっしゃいます



「しかし王女様、我々は旅の途中でして」


「学園に戻りませんと」


「それに彼らへの報酬もかさんでしまいます」


アリサさんがんばれ、アリサさんがんばれ



「アンよ、アンと呼んでいいわ」


「学園には私の名前を出せばいいわ」


「費用も請求していいわ」


両手を腰に胸を張って、ドーンである



アリサさんがこちらを見るので


「教授に任せます」と小声で伝える


アリサさんに睨まれる



「かしこまりました、アン様」


アリサさんが答える



「以上です、下がりなさい」


女騎士が促す




馬の世話の為にモニカちゃんと馬車を見に行くと下男が世話をしていた


騎士団に同行している者たちだろう、馬の世話に馬車の整備をしている


モニカちゃんが自分がやると言っても譲らず休んでいろと言われる


テントに戻ることにする


テントに戻ると入り口の騎士に止められる、このテントは女性用だと


自分の分は幾つか荷物を移してからミリアちゃんに拡張ポーチを渡す


そのうちにポーチの中を繋げられないかと妄想する



俺が案内されたのはむさ苦しい大部屋であった


騎士団だけあって、いい所のボンボンだろうが汗臭い、ムサイ


関わり合いになりたくないのでテントを出てブラブラする




野営の準備に焚火に食事の準備などはすべて下男がやっていた


騎士1人に下男が1人付いているようである


騎士の方は順番で警備をやっている、食事も交代制のようである


腹が減ったので食事の列に並ぶ



焚火の周りに座って食事していたら声を掛けられる



「おまえは飛んでた奴だよな」


「ありがとうな」


「永遠に終わらないかと思ったぜ」


「加勢に感謝する」


「助かったぜ」


「盾の子は凄かったな」


「魔術師の人はエロイな」


「盾の子の胸も負けて無いだろ」


「魔術師の人は尻も凄いだろ」


「可愛い犬の子もいたぞ」


「小さい子も可愛かったな」


だんだん違う方に話が流れるのはお約束だよね



「魔術師のおねーさんに俺行こうかな」


「俺は断然に盾の子だな」


「いやいや、犬の子も忘れちゃダメだろ」


「ようjy」


完全に盛り上がってきてます



「お前は誰と付き合ってんだ?」


隣に座られ肩を組まれる…ウザい



「誰とかじゃなく、小さい女の子以外は俺の嫁なんで」


ちゃんと答えておく



その場の全員に睨まれ、組まれた肩が痛い



「嘘だよな?」


「冗談だろ?」


「マジで?」


などなど、騎士団の面々は嘆き悲しんでいる



「もちろんマジです、これは冒険者の特権みたいなものなので」



「よし決めた、おれ冒険者やる」


「俺も、騎士団辞める」


「父上母上、親不孝な息子を許してください」


などなど、転職宣言が飛び交う



酒飲んでいないのにハイテンションな連中である


騎士団員は24人で騎士長が1人、25人で警護に当たってると話してる


年齢は20代前半と若く、王国貴族の次男三男で構成されているらしい


アン王女付きの騎士団との事である



今回はアン王女が新しいペットが欲しいと言い出して同行してると


近くの町を拠点に5日も森の中を彷徨っていたそうだ


やっとレアの鉄イノシシの子供を見つけて捕獲したら親が出てきたそうな


親を騎士団全員で抑えて馬車に乗せて逃がそうとしたらしいのだが


慌てた御者が足を滑らせて首の骨折って手綱を引いたまま動かなくなったと


それで、あの惨事になったと教えてくれた



「貴様ら何をやっている、たるんでるぞ」


野太い檄が飛ぶ



騎士団の連中は直立不動、きおつけの姿勢で微動だにしない


振り返ると騎士長の男とアリサさんがこちらに来る



アリサさんは出来る女顔で、しなりしなりとお尻を振りながらやってくる


ダンジョンを出てからアリサさんはローブを着ていない


胸元を強調したブラウスにタイトスカートとハイヒールである


騎士団の男達が気持ち前のめりになるが騎士長に睨まれて背筋を伸ばす


その光景を見てとても嬉しそうに微笑んでいる



「客人、食事の用意が出来ました」


厳しい目で騎士団の連中を睨んでいる



「ありがとうです」


食器を置いて向かうとする



アリサさんが俺と騎士団の間で視線を動かしている…この女は



「アリサ、いくぞ」


ちょっと強めに言う



「はいっ」


嬉しそうな顔でやってきて腕を組みおっぱいを押し付けてくる



アリサさんはタガでも外れたのか、日に日に自分を解放している気がする


まったくもって困った女である




会食の席にはアン王女の横に執事と女騎士が立っている


俺達5人の席が用意されており座るとする



「アン様が会食の席を用意してくださった」


「御厚意に感謝せよ」


女騎士がおっしゃいます



「アン様にはこのような場を設けていただき感謝のあまり言葉もございません」


「私共は礼儀も知らぬ平民でごさいます」


「目障り耳障りとなりますが、失礼の段何卒ご容赦のほどお願い申し上げます」


アリサさんが頑張っている



「いい、きにするな」


「では、食べるとしよう」


アン王女がナイフとフォークを手に取る



俺達もナイフとフォークを手に取り食事を開始する



会食の席はとっても退屈でした


アン王女のこれまでのペットの話だの


パーティで珍しいペットを自慢されたとか


自分も珍しいペットが欲しいとか


この五日は何も見つからなくてつまらなかったとか


やっと捕まえたのに逃げられたとか


はやく鉄イノシシのうり坊が欲しいとか



騎士団の連中が哀れである


付き合わされる俺達も哀れである




会食も終わり女の子達とはお別れである


大部屋に戻るのが嫌だったので馬車で寝ようと思う


馬車の長椅子に転がって幾つかのポーチの空間の接続に挑戦する


あとは鉄イノシシをどうするかである



静かにゆっくりとキャビンの扉が開く、隙間風で気が付く


扉の隙間からこちらを覗く青い瞳が見える…怖いって



「どうぞ」


荷物をしまって迎え入れる



「うふふ」


アリサさんが体をくねらせ、這うような姿勢で俺に圧し掛かる



昨日の教育がお気に召したようでお尻を突き出しておねだりである


教育の為に生意気な尻を叩いて、さらに後ろから追い立てるとする


俺もアリサさんもスッキリ満足である



向かいの席で幸せそうな顔で眠るアリサさんを眺めつつ気が付いたら寝ていた




朝はアイリちゃんに起こされる


左手はお約束のモニュポヨン、何処で寝ても左手はモニュポヨンである


そしてアリサさんは恥ずかしそうに前髪で顔を隠しながらコソコソと支度をする


女性はアン王女と女騎士の残り湯をいただけるとアイリちゃんが言っていた


しかし男は水で体を拭くだけである、差別が酷すぎると思う




朝も食事に呼ばれる訳で


夕食の人数にさらに増えて背後に騎士長が立っている、食べずらい


さらに食後のデザートを食べながら作戦会議だと言い出す



「作戦は有るのか?」


アン王女は俺達にやらせる気である



アリサさんがこっちを見る



「そちらの騎士様か騎士長が指揮をとらなければ騎士団は納得しないでしょう」


仕方がないので答える



「構わぬ、お前たちに従うように言い渡そう」



「いえ、騎士様も騎士長も作戦をお持ちかと思います」



「構わぬ、うり坊が手に入ればいいのだ」



「それならば、なおさら騎士様と騎士長の作戦が良いかと」



「うるさい、命令であるやれ」



「はい、わかりました」




騎士長に連れられて騎士団の指揮者用テントに向かう


まわりを見ると騎士団も武具を装備して討伐の準備をしている



指揮者用テントの中には机がありこの辺りの地図も置いてある


騎士長はゲイリーと名乗る、その騎士長が低い声で作戦はどうすると聞いてくる



ホント、どうしよう?






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