第24話 薔薇都市のダンジョン.2


朝はアイリちゃんが起こしてくれる


部屋探しのサーチャーパーティは既に居なかった


ミリアちゃんとアイリちゃんが朝食の用意をしてくれてる



「マサト君、あんな啖呵切ってよく寝れるわね」


「寝首をかかれるかもしれないのよ?」


襲われると心配したのだろう、目の下にクマが出来てる



「アイリちゃんを信じているので大丈夫です」


最初の頃は寝るのが怖かったけどもう気にならない熟睡である


アイリちゃんは最高の嫁&抱き枕&番犬なのです



朝の支度をして朝食を食べる


準備をして中層を徘徊するとする


階層を先に進みながらマップをアリサさんが作る


戦闘して休憩して戦闘してお昼を食べる


食事をしながらアリサさんはコックリコックリである


アイリちゃんはしきりにクンクンしている



「サーチャーの人達のニオイがする?」


アイリちゃんに聞く



「はい、場所はわかりませんが探索しているようです」


「あと、違うにおいがします」


「違うニオイが混ざっています」


なんだか説明しにくいようである



「ニオイの元は分かる?」


部屋のニオイとか?



「わからないです、昨日はしてなかったです」


「今日からニオイがします」


「場所は分からないです、全体がニオイが混ざっている感じです」


戸惑いながらも伝えようと考えてくれる



「なにか、変わったことが有ったら教えてね」



「はいです」


お茶をチビチビ飲むアイリちゃん




アリサさんが目覚めたようなので探索再開です


戦闘して休憩して戦闘して…を繰り返す


アイリちゃんのお腹の時計で夕食の頃合いなので宿に戻る


サーチャーの人達はまだ戻っていなかった


夕食を取りながら明日まわるルートを話し合う


毛布で幕を作りお湯で体を拭く



そのうちにサーチャの人達が戻ってきた


食事を取りながら話をしている


パインが何か言っている、強く主張している


聞き耳をたててみると部屋が何処かに出ていると言っている


経験が感が違和感を感じると言っている



「横からすいません」


「うちの子も同じようなことを言っています」


サーチャーの人達に声を掛ける



「な?何だてめえは、引っ込んでろ」


パインが怒鳴る



「パインと獣人の子が言うならホントかもしれねえ」


アレクサンドルが呟く



「いやしかし、今までさんざん探して見つからないんだぜ」


「潜りすぎてパインは精神が参っている」


「俺達だってギリギリだろ」


各々が意見を話す



「俺が信じられねーのか?」


パインが唸る



「パイン、俺は信じている…だが、タイミングが悪い」


アレクサンドルがパインの肩を掴む



「チャンスなんだ、チャンスなんだよ」


パインは泣きながら床を叩く



「すいません、余計なことを言いました」


素直に謝罪する



「いやいい、しかし話は聞かせてくれ」


アレクサンドルがこちらに来る



アイリちゃんに話をしてもらう、曖昧だがアレクサンドルは理解してくれた


この後は彼らだけで話をしたいと言われた




深夜にアイリちゃんに起こされる


気配がすると


アイリちゃんを抱いたまま暗闇に目を凝らす


パインが静かに部屋から出て行くのが何故だか薄っすらと見える


出て行ったあとアイリちゃんをナデナデしながら眠りにつく




朝、サーチャーの人達に起こされる


パインが居ないと、知らないかと


俺は知らないと答える



サーチャーの人達と朝食を取る


彼らは今日引き上げると昨日決めたと


パインは最後まで探すと主張していた、探しに行ったのだろうと


手伝ってくれないかと言われた


探すのを手伝ってほしいと


6人はダンジョンで出会ってできたパーティだが、何か月も一緒にやってきたと


ほっておいて帰ることはできないと言われた



「アイリ追えるかい?」


アイリちゃんを見る



「ニオイは覚えているので大丈夫です」


彼らが風呂に入っていなかったのもあるのかもしれない



パイン捜索に行くとしましょう




サーチャーの人達は流石はダンジョン生活者である、戦闘に手慣れていた


メイン盾をミリアちゃんに任せてガンガン倒していく


危なげなくパインのニオイを追っていく




83階の壁の前でアイリちゃんが立ち止まる


行き止まりの通路である



「ニオイはココまでです」


アイリちゃんがクンクンウロウロしているしてる



「なにもねえな、ココで遣られてダンジョンに飲まれたのかもしれねえ」


「ありがとうな、お嬢ちゃん」


アッサリと諦めるアレクサンドル


他のメンバーも諦めムードである



そんな中にいつの間にかアイリちゃんがいない


さっきまでクンクンウロウロしていたのだが



「アイリ?」


声を掛ける



「マサト様、なんでしょう?」


壁から半身を出してアイリちゃんが返事をする



「マサト様、どうしよう?」


「どうしよう?」


返事をして体が壁から生えていることに驚いている


涙目になっている


オロオロしているアイリちゃんの手を引いて引き寄せると体全体が出てくる



「あれ?」


瞳に涙を浮かべて驚いている



アレクサンドルが壁に剣を入れる…スーッと入っていく


そのまま腕まで入れる、そして体ごと壁の中に消える




壁の向こうは部屋になっていた部屋の奥には三つの道がある


アイリちゃんを先頭にニオイを頼りに道を進む



部屋を進むと水が滝のごとく降り注ぐ部屋に出る


ニオイを追えるのはココまでである


水はアイリちゃんの胸程もあり警戒して進む


先頭は三人で真ん中はアレクサンドルで左はポルコ右がグリニコである


アレクサンドルの後ろにミリアちゃんとアイリちゃんとアリサさんと俺である


その後ろがアナトリーとニコライである



右側を歩いていたグリニコの姿がいきなり水面に消える



「止まるな進め、ココでは戦えない」


アレクサンドルが叫ぶ



全員がジャブジャブと急いで水の中を進む


背の小さいミリアちゃんとアイリちゃんは波が立って溺れそうである


アリサさんがアイリちゃんを抱え水魔法のストリームを唱えてスイスイ進んでいる


俺もミリアちゃんを抱えてストリームを発動する、なるほど…水流操作か使える




部屋の反対側の真ん中の通路に飛び込む…振り向いてもグリニコさんの姿は見えない


水面が赤く染まっている


白い大きなワニの尻尾みたいな物が水面を叩いて暴れている


こちらには上がってこないようである


誰も何もしゃべらない




次の部屋は砂漠のような部屋である、砂砂砂砂砂砂である


あきらかに砂の上を歩くのは罠である



「砂は罠だな、飛んでいくか?」


アナトリーとニコライは頷きアレクサンドルがとポルコにフライの魔法を唱える



「そっちはいけるか?」


アリサさんがアイリちゃんに俺がミリアちゃんにフライを唱える



「なかなかやるじゃねーか」


アレクサンドルがニヤリとする



アナトリーとニコライとアリサさんと俺は自分にフライを掛ける


それぞれのパートナーを引いて空を移動する


砂の部屋に入ると砂が動き始める、中心に向かって砂が流れる


上空から眺める光景は圧巻である、すり鉢状に流れる砂


大きなアリジゴクである


中央の穴を通り過ぎようかとしたときに地中から触手が伸びる


ニコライとポルコが捕まった


フライでパートナーを運びながら魔法で応戦しにくい、魔法を3つ同時発動となる


ミリアちゃんを抱えながら出口に移動しながら、風魔法のカッターで触手を切る


切りながら移動するが切っても切っても触手が沸きニコライとポルコが引きずられていく


出口に着いた頃にはニコライとポルコは砂に飲み込まれていた


砂から天井に向けてウネウネと触手がうごめいている


何か言おうかと思ったのだが言葉が見つからなかった



「すすむぞ」


アレクサンドルが絞る様に呟く




次の部屋は石畳の隙間が空いている部屋である


パターンからすると隙間から風の刃である



「石の隙間から風の刃かと」


テンプレを告げる



「ああ、そうだろうな」


「いやらしい部屋だぜ」


アレクサンドルの額に汗が浮かぶ



「いい案は有るか?」


みな、沈黙である



鞄からフォークを取り出して恐る恐る石の隙間に持っていく


ソーっと差し出すと一拍置いてからフォークの先が切断される


フォークを2本出して1本が切られてすぐに2本目を差し出す


時間を置いてから2本目のフォークが切られる


センサー系かと、そして連射はできないと



「こんな感じです」


みんなが見ていたので報告する



「間隔は遅くはなかったな」


「切られたらすぐに向こう側に行く」


「早くても遅くても切られるな」


アレクサンドルが最初に行くという



持っているナイフとフォークとスプーンと串など細長いものを全部出す



「済まねえな、借りるぜ」


1人4本である



まずはアレクサンドルが宣言したように最初に行く


剣をしまい盾を背中に装備して左手にスプーンを持ち身構える



スプーンをゆっくり前に出しタイミングを計る


スプーンが切れたら飛び込む



スプーンをゆっくり前に出しタイミングを計る


スプーンが切れたら飛び込む



スプーンをゆっくり前に出しタイミングを計る


スプーンが切れたら飛び込む



スプーンをゆっくり前に出しタイミングを計る


スプーンが切れたら飛び込む



反対側の真ん中の出口に飛び込んだ


次はミリアちゃん、その次はアイリちゃんが続く



残ったのは魔術師である、運動不足グループである


アリサさんは震えているガクガク震えている、瞳に涙を浮かべている


嫌よ嫌よ首を振るアリサさんのハイヒールを脱がして一緒に前に進む


手にフォークを持たせて立たせる


アリサさんにフライを唱えて準備完了、回転スライドさせて向こうに移動させる



「信じて」


俺の言葉にフアリサさんはフォークを手に持ち慈悲を乞う目で俺を見る


ガクガクと震えながら前を向く



フォークが切れた瞬間にアリサさんを向こう側に回転スライドさせる


勢いが足りなかったようで帽子のつばが少し切れる



次は自分である、他人にはできたが自分にできるか不安になる


ナイフをかざしてギリギリまで近づく


ナイフが切れた瞬間に回転スライドする


下から上に顔の前を風が通り過ぎるのを感じる


股間がキューってなる



何とか2人で無事に向こうにわたることが出来た


アリサさんは瞳に涙を浮かべておりミリアちゃんに抱きついていた



残るはアナトニーさんである


アレクサンドルがアナトニーさんを手招きしている



「大丈夫だ出来る、みんなできた」


「いい風が吹いてる、行ける!」


アレクサンドルが叫ぶ、でも”いい風”は無いだろうと思う



アナトニーさんもフライで行くようである



串を手に持ちゆっくりと進む


ゆっくりと前に進み、串が切れた瞬間に回転スライドする


しかし勢いが強すぎて転んでしまった


立ち上がり串と杖を拾い次の場所に向かう



串を手に持ちゆっくりと進む


ゆっくりと前に進み、串が切れた瞬間に回転スライドする


また勢いが強くて転んでしまう


立ち上がり串と杖を拾い次の場所に向かう



串を手に持ちゆっくりと進む


ゆっくりと前に進み、串が切れた瞬間に回転スライドする


しかし、今度は勢いが足りなかった


血飛沫が舞う


アナトニーさんは動かない



アレクサンドルは首を振り黙って部屋を後にする




次の部屋は当然に火であろう


溶岩がグツグツ熱地獄である…お約束の浮島飛び移りである



「俺が往復しましょう」


提案する



「いや、今までの感じだと戻っては来れない」


「溶岩の中から何かが出てくるはずだ」


「俺は浮島を走る」


「お前らは飛んで行ってくれ」


状況の分析は出来ている、自暴自棄ではないと信じる



「わかりました、できるだけ援護します」



「助かるぜ」


援護にすらならないのは分かっているはずである



アレクサンドルは柔軟体操をして武器防具を捨てている


諦めてはいない、渡り切る気である



俺はミリアちゃんをアリサさんはアイリちゃんを抱えて飛ぶ


一瞬早くアレクサンドルが飛び出す


浮島を走り飛び、溶岩を飛び越えて行く


部屋の真ん中に差し掛かるあたりで溶岩の中からヘビが姿を現す、火の蛇である



炎を身に纏うヘビ、火龍なのであろうか溶岩で炎で体が作られている


胴は長くアーチ型に壁の様にアレクサンドルの行く手を阻む



「キタネエ」


叫びながらも歯を食いしばり火龍のアーチの下を走り抜ける、溶岩を飛び越える



ミリアちゃんを抱えながらウォータアローを炎龍に撃ち込むが効果がない


先に渡り切り、アリサさんと水魔法を使うが効果が全く感じられない


こちらに向かって走るアレクサンドルを応援するミリアちゃんとアイリちゃん


しかし、炎龍に追いつかれその口に飲まれる


一瞬にして炭となり体が崩れる



アレクサンドルの最期を看取り先に進む




白く輝く部屋


壁全体が白く輝く立方体の部屋


部屋の中央には白く輝く光が浮いている


ココが”自分が本当に願うもの”、願いが叶う部屋なのかもしれない


その左手前には行き止まりの通路、足元には魔法陣が書かれている…出口であろう



「ゴールかな?」


ミリアちゃんもアイリちゃんもアリサさんも光を見つめている



「それじゃ待ってるから行ってきなよ」


3人が同時に俺を見る



「入らないのですか?」


「入らないのです?」


「入らないの?」


シンクロ率たけーな



「俺が入って…帰っちゃったら嫌でしょ?」


「俺の1番の願いが金だとは思うけど、わからないからね」


「俺は帰りたくないと思っているが、真の心は分からないから入らない」


可能性が有るなら危険は冒せない、これはやり直しができない奇跡なんだから



「では、いいです」


「いいです」


ミリアちゃんとアイリちゃんが同時に言う



「ミリアもアイリも俺の事は気にしなくていいんだよ」


「2人とも本当の望みが叶えられるチャンスなんだよ」


「2度と無い奇跡なんだよ」


俺はもう体験してるからね



「はい、大丈夫です」


「大丈夫です」


笑顔で答える、悔いはなさそうである



アリサさんはオロオロしている、悩んでる



「アリサさんは自分の事を考えればいいんですよ」


「俺達の事は気にしないでください」


「遠慮することはないんですよ」




「でも、私だけ」


申し訳なさそうに俺達を見る



「いやいや、ここまで来た仲間じゃないですか」


「死線を越えた仲間ってやつですよ」


「仲間に気を使う事はありませんよ」


おれ、カッコイイ事を言っている



「そうですよアリサさん、仲間なんですから」


「気にしないで大丈夫です」


ニッコリのミリアちゃんである



「そうです、仲間です」


「気にしちゃダメです」


アイリちゃんがアリサさんに抱き着く



「ここまで引っ張ると入りにくいだろうから先に出て待ってるよ」


「外でお茶でも飲みながら待ってるからごゆっくり」



魔法陣に先に入る




最初の部屋に戻される



肩掛け鞄から毛布を出して床に敷いて座る


水筒とマグカップを出してお茶を飲む


しばらくしてミリアちゃんとアイリちゃんがやってくる


ミリアちゃんとアイリちゃんにもお茶の入ったマグカップを渡す


お菓子と飴も出してアリサさんにを待つことにする




結構な時間を待ってアリサさんが現れる



「願いは叶いそうですか?」


ミリアちゃんと片付けながらアリサさんに聞く


アイリちゃんはアリサさんに抱き着いてる



「どうかしらね?」


ニッコリと微笑む






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る