第21話 ローズバーグ.2
朝はアイリちゃんに起こされる
準備をして1階の食堂におりる、ファンの子たちが憔悴した顔で朝食を取っていた
朝食のベーコンとキノコのパスタをいただきます
カルネちゃんに水筒を渡して風呂に向かう
公衆浴場でさっぱりしてからフルーツ果汁入りミルクを正しい作法で一気に飲み干す
ミリアちゃんとアイリちゃんが飲み終わるのを待って、洗濯場に行く
洗濯場は公衆浴場のすぐ横、人口水路の下流に作られている
広場には奥様方や冒険者が洗濯している、3人で仲良く洗濯をする
教会の長椅子で神に祈る2人を眺めていると酒飲み司祭を見つける
酒も飲んでいないようで清潔な感じである、信者の人と話をしている
駅馬車の一件で生まれ変わると言っていたのは本当のようである
クレアさんの赤ちゃんは残念であるがクレアさんも立ち直って貰いたいものである
しかし、あのイケメンは何でクレアさんを刺したんだろう?
アンディさんも刺したし盗賊の関係者だったのだろうか?
ルイーズさんも怪しい動きをしていたし、謎は残ったままなのである
朝市で果物とミルクを仕入れてから宿屋に戻る
宿屋で装備する
俺は法服風のローブに短剣と複合弓、矢筒は拡張の付加済みである
アイリちゃんは短槍に硬革に薄い金属補強のドレスアーマー
ミリアちゃんは片手剣に円盾に硬革に金属の鎖と板の補強のドレスアーマー
短槍と片手剣は魔法武器で風の刃が付加されている
カルネちゃんからお弁当と水筒も受け取った
さてと薔薇都市のダンジョンに潜ってみましょう
薔薇都市のダンジョン
ダンジョンの入り口は冒険者ギルドに管理されていた
入場券販売小屋に売店が併設されており、お弁当や飲み物の販売もしている
割り増しの値段であったが早朝や深夜に販売しているなら需要も有るだろう
3人分の入場券を買って戻って来ると、委員長パーティがいた
「ミリア様、お願いしますご一緒させてください」
ミリアちゃんに共闘のお願いのようである
「でも、その」
ミリアちゃんがこちらをチラチラ見ながら考えてる
「良いじゃありませんか、一緒に行きましょう」
俺の言葉に委員長パーティは驚いている
「な、なんで…?」
「えっ?」
委員長パーティが信じられないと戸惑っている
「ミリアの為になる事なら反対しませんよ」
「では、お願いします」
委員長さんが、ぺこりとしてきた
ダンジョンの中は普通に明るかった
壁全体がほんのり光っており灯りは必要ないくらいであった
委員長パーティは男が4人で女の子が2人の構成
委員長は魔術師である、学生服風ローブに30センチほどの魔法の杖を持っている
図書委員風の女の子は法服風のローブである、メイスを持っている
少年ABCは前衛の剣と盾でDは槍を持っていた
ダンジョン内を案内してもらおうと思ったのだがほとんど経験が無いらしかった
アイリちゃんが先頭でミリアちゃんがメイン盾の構成で進んでいく
1階は2メートル程のホーンラビットである、角のある兎である
動きはノソノソしているが、角を使った突撃と後ろ脚のキックは強烈であった
女の子達にいい所を見せたいのであろう、少年ABCが前に出て突撃で蹴散らされる
委員長が魔法をぶっ放して角ウサギに追われて走り回る
助けにミリアちゃんが走り角ウサギと対峙する
チャンスとばかりに後ろに回り込んだ少年Dが角ウサギから後ろ蹴りを貰う
図書委員はオロオロしているだけである
なんて予定調和な連中であろうと思わず拍手してしまった
涙目の委員長に睨まれて手が止まる
ミリアちゃんは突撃を誘い、突撃を受けきってから剣を打ち下ろす
角ウサギがミリアちゃんに集中しているところでアイリちゃんが槍を刺す
的確に処理して俺が魔石を回収する、完璧です
図書委員が治療魔法を使って委員長と少年ABCDの回復を待つ
そんな繰り返しで一度出てお昼にする
ダンジョンの横の広場で作って貰ったお弁当を食べる
出るなら宿で食べても良かった気もするが…まあ、いいか
彼らの話を離れて聞いていたが地元の子達らしい
冒険者の子供だったり商人や農家の次男や三男らしい
この町には冒険者の学校があって今年卒業してパーティを組んでいると言っていた
委員長は寄宿制の魔法学校を卒業して戻ってきたと話している、図書委員とは幼馴染だと
ミリアちゃんの事は大麦畑のダンジョンに遠征した冒険者が話していたのを聞いたようだ
テンション高めに色々話していた
午後の突入の前にミリア先生から注意が促されます
ミリアちゃんより前に出ない
ミリアちゃんが切りつけた敵を優先して攻撃する
攻撃より防御を優先する
危ないと思ったら下がる
魔法もトドメ以外は防御と治療を優先にする
出来るだけ魔法は温存する
まわりをよく見る
声を掛け合う
お互いの距離を保つ
喧嘩しない
などなど、言い聞かしていた
それからはスムーズな進行となり、順調に戦闘をこなしていく
慣れてくると少年ABCに盾役のやり方を教えたりしていた
アイリちゃんも槍を少年Dに教えていた
委員長も図書委員もキラキラした目でミリアちゃんを見ていた
さらに2メートル級の大ネズミや大イタチや牙ネコなど撃破していく
階数は進む気がないので休憩は外に出てすることにする
ダンジョンの入場券は1日券で何回も出入りできるのである
委員長パーティは夕方になる頃にはグッタリしている
こんなに長時間ダンジョンに入った経験が無いのであろう、明日は筋肉痛仲間である
ミリアちゃんは3年間休まずに大麦畑のダンジョンに通い続けていた
もはや熟練クラスである
そして素人のアイリちゃんが付いて来れるのは獣人だからである
ミリアちゃんに聞いたが獣人は人の1,5倍とか2倍の筋力が有ると言ってた
その話をアイリちゃんにしたら否定していた
自分は女の子だし弱いからそんなに無いと、あってもせいぜい1.25倍くらいだと
十分である
俺は後ろを付いて歩いて魔石を拾っているだけである
それだけなのに筋肉痛になるのである
武器防具装備して長時間戦闘なんてとてもじゃないができる気がしない
今日は解散と言って宿屋に戻ると委員長パーティも付いてきた
少年たちは2階で別れ、委員長と図書委員は隣の部屋に入っていった
隣と下に部屋取ってんのかよと、地元なら家に帰れと
1階の食堂でまた顔を合わせて夕食を取る
ミリアちゃんは夕食の席でも委員長パーティに指導していた
お姉さんキャラから新任教師キャラにチェンジであろうか
アイリちゃんも同世代の友達が出来たようで楽しそうである
俺の楽しみは夜にあるからいいのである
2人をベットで独り占めである、だから仲間に入れなくてもいいのである
翌朝は委員長パーティと風呂と洗濯と教会とギルドの定番コースを御一緒した
フルーツ果汁入りミルクを正しい作法で全員で一気に飲み干し
洗濯物はないようなので3人だけで洗濯をした
俺以外が教会でお祈りをしている間は朝市で買い物をして
ギルドで魔石を換金してダンジョン情報をみて依頼掲示板を眺め
分配してからまた宿に戻って身支度をしてダンジョンに突入である
そんな生活を1週間ほど繰り返してミリアちゃんの盾が直る
委員長パーティはお別れである
彼らも経験を得て強くはなったが一緒に行って何かあっても困るのでお別れである
これからは彼らだけで強くなっていってもらいたいものである
「今までありがとうごさいます」
「教えられたことを忘れません」
「おれ、強くなります」
「ミリアさんの事忘れません」
「もっと、ずっと一緒にいたかったです」
「もっと色々教えてもらいたかったです」
などなど、泣きながらミリアちゃんを囲んでいる
ミリアちゃんもひとりひとりに良い所と悪い所と課題を伝えていた
卒業式なんだか、何なんだかわからないノリであった
アイリちゃんも瞳をウルウルさせている
いや、お前らいつでも会えるだろうと
この1週間で委員長パーティはこの町の事やダンジョン事を教えてもらった
なかでも面白かったのが、”一番の願いをかなえる部屋”の話であった
都市伝説らしいのだが
このダンジョンには”一番の願いをかなえる部屋”が出現するという
出現するのは中層以上であると、中層以上なら何処でも出現のチャンスが有ると
そしてこの部屋の面白い所が”自分が本当に願うもの”が叶うという点にある
ある冒険者が歩けない自分の娘が歩けるようになるように願うために部屋を探していた
何年も探し続けてようやくその冒険者は部屋を見つけたという話だ
もちろんその冒険者はその部屋で娘が歩けるようになるように願った、願って戻ってきた
しかし娘は歩けるようになってはいなかった
しかし、その部屋がデマや嘘だった訳ではなかった
男の願いは叶っていた
男の部屋には一生掛かっても使い切れない程の金貨が山積みになっていたんだそうだ
で、その男がその後どうなったかって?
それはお前自身が部屋を見つけて願ってみればわかるんじゃないかな?
までがセットだった
そして部屋を探してダンジョン住んでいる者たちはサーチャーと呼ばれていると
金策がてら見つかったらいいかなくらいに考えている
面白そうである
翌日は休みとなりミリアちゃんの盾を受け取りに行く
ミリアちゃんとアイリちゃんは委員長パーティと町を巡っている
昨日の涙の別れは何であったのであろうか
俺は宿泊の準備で朝市で食料を補充する
果物に燻製肉に干魚に野菜に香辛料、ミルクに煮出し茶の葉
何日ダンジョンに籠るかわからない、10日分を目安に買いそろえるとする
その後に道具屋に行く、魔導具目当てである
前回はミリアちゃんとアイリちゃんの2人に止められたが今回は止める者は居ない
コンロである魔導コンロが欲しいのである
俺は意識が低い系なので凝った料理はできないが、普通に焼く煮る炒める位はできる
異世界転生者は料理の達人が多い、こんな事なら俺も料理の勉強をしておけばよかった
しかし、これから練習していくのもいいかもしれない
まずは、コンロの購入であるがコンロは金貨150枚もする
俺は異世界転生者でチート能力者なので他の例に漏れず、当然に何でもできるのである
魔導具を作成できないかシスに聞いたらできると言われた
しかし、できなかった
異空間収納と同じである、イメージ出来なかったのである…想像力の貧困であろうか
まあ、できなかったものは仕方がないのだが問題は金額である
買えるが買うとお金がほとんどなくなってしまう
魔導具を作って売るという手は当分使えない、ルイーズさんの目もある
作るなら触媒を鞄の奥にひとつ見つけた事にしてミリアちゃんの盾を作りたい
でも欲しい…欲しいので、やっぱり買っちゃおう
お昼は路地裏で見つけたお店でキノコのクリームパスタを食べてお茶をいただく
お店は小さくテーブルも4つしかない、昼には早かったのか俺以外の客はいない
店員さんは薄茶色の巻き髪風セミロングの髪にキュートな唇に細い指先
胸元までのショートワンピースに薄地のショールを羽織っている
お金持ちの娘の道楽のお店なのかもしれない
とても美味しかったので次回はミリアちゃんとアイリちゃんと来るとしよう
図書館か本屋の場所を聞いたがこの町には無いと言われた
魔物やダンジョンの情報が欲しければ冒険者ギルドに
ファッション情報なら洋服屋に
魔法に関する情報なら魔法屋に
武器なら武器屋、防具なら防具屋に聞けばいいと教えてくれた
お客が来ない事をいいことにお茶を飲みながら錬金と調合の本を読む
「錬金術師か調合師の方なんですか?」
店員の女性が仕掛けてくる
「魔術師ですが、興味を持ってるので」
「そうですか、私は料理をしているので調合に興味があって」
「お邪魔してすいません、失礼しました」
ぺこりと頭を下げて厨房に戻る
しばらくすると客が来る
出ようかなを客を見ると、酒飲み神父だった…出なくてもいいや
奥で店員のお嬢さんと話をしている、こっちをチラチラ見ている
「お久しぶりです」
酒飲み神父が向かいの椅子に座る
「お久しぶりです、お酒辞めたんですね」
栞を挟んで本を閉じる
「ええ、体が軽いですよ」
「錬金術と調合ですか、博識ですね」
「いえいえ、興味があるだけです」
「作れたりするんですか?」
「その…薬とか?」
「出来るような出来ないような、そんな感じです」
(シス、錬金とか調合は簡単にはできないよね?)
(いえ、東雲真人様ならできます)
(でも、道具と素材が必要だよね?)
(いえ、素材が有れば作成できます)
(道具は必要ないの?)
(はい、抽出や合成は魔法と同じでイメージできれば出来ます)
なるほど、薬草を買って本を見ながらやってみよう
「もしもし?もしもし?」
酒飲み神父さんが呼んでいた
「はいはい、なんでしょう?」
「そういえば名前をお聞きしていませんでした」
「今更名乗るのも変ですが、私はトーマスといいます」
「あれからこちらの町のロレンス司祭の手伝いをしています」
手を伸ばしてくる
「マサトです、よろしくです」
握手である
「今後ともよろしく、マサトさん」
「こちらの女性はカプレーティ商会の娘のノーマさんです」
隣に立つ店員の女性を紹介してくれる
「初めまして、よろしくお願いします」
深々と丁寧に挨拶してくれる
「こちらこそ、よろしくお願いします」
何をよろしくだろう?
「マサトさんに折ってお願いがありまして」
「内密に”仮死の水薬”という物を作って頂きたいのです」
「もちろん理由は説明させていただきます」
「お願いします、死線を潜った仲と思って無理は承知でお願いします」
テーブルに頭を付けてのお願いです、隣ではノーマさんも深々と頭を下げている
「いや、理由は何となくわかります」
定番のロミジュリが来たかと
理由は要らないと言ったのだが、身振り手振りを交えて説明してくれた
カプレーティ商会の娘のノーマさんとモンテッキ商会のハワードとの恋の話である
4日前のノーマさんの誕生日会にモンテッキ商会のハワードが出席してきた
お互いが一目ぼれであったと
お互いの気持ちを確かめ、ロレンス司祭の下で結婚の誓いも果たしていると
しかし、ハワードがカプレーティ商会の者に絡まれて争いになったと
きっと結婚を知った父が命令したのだと
その争いでカプレーティ商会の者が死んでしまったと
絶対に事故だったのだとノーマさんは言う
現在はハワードは追われる身となっていると
ロレンス司祭の指示によりトーマス司祭がかかくまっていると
そしてノーマさんは父親の命令で領主の4男と結婚させられると話す
そしてロレンス司祭の作戦が、結婚式で薬を飲み仮死になり死んだと思わせる
ロレンス司祭が死を宣言して安置所に運び、その翌日の朝にハワードと駆け落ちすると
そして、それは今日の結婚式で決行すると
「”仮死の水薬”が無かったらどうするつもりだったんです?」
「妹が今年の春に魔法学校を卒業しまして」
「妹に頼んで精神魔法を私に掛けてもらって気絶させてもらおうと思っています」
ノーマさんは真面目な顔でおっしゃいます
「それってダメージが強かったら死ぬんじゃ?」
「私はハワードと一緒になれないなら死んでも構いません」
キッパリと言い切る
「そうは言っても材料がありませんし」
調合の本をペラペラとめくる
「材料ならココにそろっています」
「食材に使うと嘘を付いて密かに集めました」
用意がいい、都合がよすぎる気もするが
「では、調合を試してみますが失敗したら諦めてくれませんか?」
ペラペラペラとページをめくり…仮死の水薬のページで指が止まる
「私たちの愛の為に必ず成功させてください」
材料を差し出してくるノーマさんの強い愛が強制力でも発生させているのかと
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます