第18話 駅馬車.3


馬車を守る様に剣と盾を構えるジョージさんとディバインさん


馬車の上から板を盾に弓を構えるカーリーさんとバンクロフトさん


馬車の横にはアンディさん


馬の所にバックさんとウイルコックさん


乗客がキャビンに入ったのを確認したプラットさんが盾を構えて前に出る



森からは昼に襲ってきた盗賊の他に更に6人が盾と剣で武装している


昨夜の弓の事を考えたら2人3人ほど茂みに隠れているだろう


数の優位に気を大きくしたのであろう、盗賊は堂々の登場である



「荷物と女を置いて行きな、命を助けてやるぜ」


先頭の男が完全な上から目線で要求してくる



「要求はそれだけか?」


「荷物は郵便だけだぜ、息子への手紙なんて必要ないだろ?」


ジョージさんが答える



「郵便なんざ興味はねーよ」


「いいから全部置いて行けよ、判断はこっちでするからよ」


めんどくさそうに先頭の男が答える



「今日の乗客は貧乏人だらけだ、まともな荷物を持ってねーぜ」


「盗賊なら金持ちから奪いやがれ」


ジョージさん言うに事欠いて乗客を貧乏人とか言ってますし



「荷物に興味があるのは俺らじゃねーよ」


「報酬はたんまり貰えるんだ客が貧乏でも金持ちでも関係ねーよ」


「ほら、さっさと女と荷物置いて行けよ」


「それとも死にてーのか?」


「勝てると思ってるのか?」


「ん?」


最後の「ん?」は威嚇というよりは驚きであっただろう


先頭の男の胸に矢が生えていた


男は自分に生えた矢を握り驚きの表情を浮かべている



ジョージさんとディバインさんとプラットさんは早かった


「ん?」の時には走り出して前に出ていた盗賊を一刀のもとに切り伏せていた


他の盗賊もカーリーさんとバンクロフトの矢に貫かれる


アンディさんは防御の呪文を詠唱している


バックさんとウイルコックさんは馬を守りながら周りを警戒している


一瞬の出来事であった



前衛は乱戦になり森から放たれる矢は明後日の方向に飛んでいく


ルイーズがブツブツ呟いては嬉しそうに笑っていた…何かしてやがる



森の奥から合図であろう口笛がなり、盗賊たちが引いていく


司祭とルイーズがキャビンから降りて護衛の治療を手伝う


ケガは有るが死者は無しである



盗賊は7人の死体が転がっており装備を剥し丸裸で埋葬する


こんな時は土魔法が便利であるらしい


アンディさんとルイーズが7人分の墓穴をボッコボッコと掘った


死体を放り込んで司祭が祈りを捧げている



盗賊の襲撃も撃退して一安心である、今日の夜は暖かい食事にベットが待っている


朝には風呂にも入れることであろう…色々と楽しみである


しかし、誰の荷物が誰に狙われているのだろうか?



夜遅くなってしまったが無事に町に着いた、馬車を下りて宿に向かう


町という程には大きくないが宿があるのは有難い



宿の食堂で4人で食事を取る、ベーコンと野菜のスープとライ麦パンである


いい加減にライ麦パンにも飽きてきた、米食べたい味噌汁飲みたい


しかし、暖かい食事は心にしみる、美味しくいただきました



宿のおやっさんに個室をお願いしてお金を払う


明日の昼のお弁当をお願いしたが干し肉しかないと言われたので諦めた



個室の部屋に入ると、何故かルイーズが付いてくる


ルイーズを見て首を傾げるとミリアちゃんがルイーズを庇うように抱きしめる


ミリアちゃんがジーっと俺を見てくる



「そうだね、小さい女の子1人で大部屋はアレダヨネ」


そう答えてベットの藁の布団にもぐりこむ



大部屋は男女別だから平気だと思うんだけど、仕方がない


ミリアちゃんをルイーズに取られているけど仕方がない


アイリちゃんを抱きしめてクンクンとペロペロしてもらう


頭をナデナデしながら眠りにつく



夜中にふと目が覚めた、誰かが起きる気配


そしてジーっと見られている気配、怖くて隣のベットを振り向け無い


じっとりと背中が汗ばむ…気が付いたら寝ていた



朝はアイリちゃんに起こされる、朝食は食堂で取る


朝食もベーコンと野菜のスープとライ麦パンである、きっと昼もであろうと思う


せめてお茶を水筒にと思ったが出がらしで水筒一本銅貨3枚と言われて止めた



この町には公衆浴場も無く風呂に入りたければ裏庭のドラム缶だと言われた


これは我慢できなかったので泣く泣く1人頭銅貨5枚で銀貨2枚渡す


ルイーズがいるのでスッキリできなかったが、スッキリしたから良しとする



風呂を出ると馬車の乗客と宿のおやっさんが血相抱えている


ピーコックさんが死んでいると


深夜に胸を刺されて殺されたらしい



大部屋から出てこないから宿のおやっさんが起こしに行って見つけたという


大部屋で寝ていた司祭もイケメンもぐっすり寝ていたからわからないと言っている


自警団の人が呼ばれて死体が運ばれていく


駅馬車の乗り場でみんなが集められて話を聞かれる



俺達は個室なのでしつこくは聞かれなかったが、司祭とイケメンは疑われていた


司祭は商品の酒を勝手に飲んでピーコックさんに掴みかかられてた


イケメンもピーコックさんと揉めていたのを護衛の人が話していた


しかし、証拠もなく…そもそも自警団に逮捕権とか無いしね、無罪である



馬車からピーコックさんの荷物が下ろされる、中身はウイスキーであった


なんでも昨日来たキャラバンに売却するとか自警団が言っていた


死人の物を勝手に売却とか怖い世界である、町ぐるみの犯行も出来るじゃないかと



死んだピーコックさんの代わりに乗り込んだのが頭頂禿のおっさんである


スーツ姿で革のバックを大事そうに抱えている、いかにも金を持って逃げている男である


わかりやすい、会計士かどこかの商会の出納係であろう…こいつも長くは無いなと考える


駅馬車は出発するが後ろのキャビンはお通夜状態である



昼の休憩中にまたもや盗賊の襲撃を受ける


しかし遠巻きに弓で射掛けてくるだけだった


しかし、ピーコックさんの荷物が狙いではないのかと考える


ケガ人が出たが司祭とアンディさんとルイーズの治療のおかげで死者は出なかった



ピーコックさんの荷物が狙いではないなら盗賊の狙いは誰の荷物なのか?


盗賊が殺したのではないなら誰がピーコックさんを殺したのか?


謎である




こうなったらもう夜は当然襲撃でしょうと、みな完全武装で待ち構える


ミリアちゃんとアイリちゃんも装備を固めている


出来るだけ自分の身は自分で守って欲しいと言われた


みな頷き覚悟を決めている


キャビンの中で身構えている



そして朝方近くに夜襲が有ったのだが今回の盗賊は一味違った


頭目らしき奴が出てきたのだ



「荷物が欲しいんだって?珍しい酒なら町のキャラバンが全部買ったぜ」


「さっさとキャラバンに向かった方がいいんじゃねーか?」


ジョージさんが頭目に言う



「酒も悪くねーが、今回は額が違うからな」


「しかも7人も遣られてる、見逃すはずがねーだろ?」


「ん?」


最後の「ん?」は威嚇でも驚きという程のものでもなかった


右手に矢を握っている、飛んできた矢を掴んだのだ


矢を握りこぶしで圧し折り、身体強化を発動する


それに応えてジョージさんとプラットさんが身体強化を発動する


1対2だが、頭目が威圧しているように見える


しかしジョージさんとプラットさんは牽制しながら死角に回り込もうと動く



ディバインさんとウィルコックさんも馬の安全を確保しながら左翼から牽制する


右翼側のバックさんと盗賊団の左右から押し込むように威圧する


アーティさんが防御の呪文を唱える


カーリーさんとバンクロフトさんは盗賊を射抜いていく


森からの弓が飛んでこないが、俺の目の前のルイーズが何かしているのだろう


ブツブツ言っては嬉しそうにニヤニヤ笑っている



頭目は何かを叫び体が淡く輝くと一瞬でジョージさんを盾ごと吹き飛ばす


肩からの体当たりであろうか、キャビンの中からではよく見えない


アーティさんの呪文が発動して護衛達の体が淡く輝く


続いて治療魔法を詠唱しているのだろうか、ジョージさんが淡く輝きだす



頭目は更に何かを叫びプラットさんに突撃する


プラットさんも盾ごと吹っ飛ぶ


アーティさんが再度、治療魔法を唱える


ルイーズも治療魔法に専念し始めた



その時に後部キャビンから悲鳴が聞こえる


血の付いたナイフを握ったイケメンがキャビンから飛び出す


呪文を詠唱中のアーティさんを後ろから刺す



後ろのキャビンでは腹を裂かれたクレアさんが呻いている


司祭がクレアさんに必死に治療魔法を使っていた


大粒の汗を流しながら必死に神に祈っていた



イケメンに刺されたアーティさんはその場に倒れる


ルイーズは何かを呟くとイケメンが弾けるように倒れる


ミリアちゃんとアイリちゃんが馬車を下りてアーティさんに掛けよる



おれはクレアさんの傷を見に行く


ガクガクと手を震わせながら神に祈る司祭


腹を裂かれ苦痛の表情のクレアさん



どうしよう、助けてもいいものなのだろうかと考える



しかし、治療魔法を使うことにした



(ハイヒール)



クレアさんのお腹の傷は修復される


クレアさんから苦悶の表情が消ているが、気を失っている



司祭から安堵の息が漏れる


「神よ」



アーティさんはルイーズが治療魔法を使っており大丈夫そうである


イケメンは事切れていた、ルイーズがやったのであろう



そんなことよりミリアちゃんとアイリちゃんが前線に出てしまった


肉だるまの頭目の前でセンチネルを発動し淡く輝きながらミリアちゃんが盾を構えている


アイリちゃんはプラットさんを助けに行ってしまった


これは困った



ジョージさんは頭を振りながら盾を構えなおし剣を振り頭目を牽制する


ミリアちゃんは正面から盾を構えて防御姿勢をとる



その向こうでザコ盗賊に囲まれるピーコックさんを助けるべくアイリちゃんが向かう


ディバインさんとバックさんとウイルコックさんも盗賊を倒しているが数が多い


カーリーさんとバンクロフトさんも援護の矢を放つが倒しきれない



頭目は剛襲撃と叫ぶと体が淡く輝き、ミリアちゃんに突撃してきた


ミリアちゃんとの身長差は1.5倍


そして、4倍近い体重だが一瞬で間を詰め肩から盾に圧し掛かる


ミリアちゃんは呪文を唱えながら突撃を受け止める



ミリアちゃんは剣を盾の内側から縁を刃でなぞる様に動かす


細身両刃直剣の刃から風の刃が浮かび上がる


左足と左腕を風の刃で撫で切られる肉だるまの頭目


しかし、切断するには腕と脚が太すぎた



左に体制が崩れた所でジョージさんがスラッシュを叫び剣先が2重にブレる


頭目は右足を2度切り裂かれる



頭目のやられる姿を見たのかザコ盗賊が逃げ始める



プラットさんとアイリちゃんがはお互いを背にザコ盗賊の攻撃をしのいでいる


プラットさんは傷だらけだがルイーズが治療魔法を続けている



アーティさんは傷を庇いながらも魔法を詠唱して護衛の防御力を維持している


ディバインさんとバックさんとウイルコックさんも満身創痍である



「俺の負けだ…俺の首には賞金が付いている」


跪いて両手をあげる頭目



戦闘は終了である


ルイーズが墓穴を10掘り死体の身ぐるみを剥いで埋葬する


司祭が祈りを捧げている



イケメンのキャラダインさんさんを埋葬する皆の表情は複雑であった


司祭の話ではいきなり刃物を持ち出したと


それに驚いたタニアさんを切りつけたとか


司祭は盗賊の仲間だったのではないかと話している



頭目は知らないと言っている…が、真偽はわからない


頭目は依頼主も目的の荷物も明かさなかった



頭目は協議の結果生きたまま連れて行くことに決まった


後部キャビンに手足を縛って座らせる


司祭が最低限の治療をしてルイーズ寝かしつける


これならば安全であろうと、ルイーズが提案してきた



ミリアちゃんは一緒に後部キャビンに乗るといったがルイーズに断られた


クレアさんも治療が必要なので後部キャビンに座る、座席は一杯になると



こちらの席には何処に隠れていたのか、いつの間にか頭頂禿のおっさんが座っている


すでに日も明けていた、朝食もそこそこに馬車は走り出す




昼の休憩地に入ったところで大きな音がする


馬車が止まり外に出てみると、後部キャビンが破壊されていた


クレアさんは瀕死であり司祭とルイーズが治療魔法を唱えている


後部の屋根の上で休んでいたプラットさんが落下の際に首の骨を折って既に事切れていた


一緒に座っていたバックさんもウイルコックさんも腕や足が折れて重症である


逃げて行った頭目を追う事はできない



司祭とルイーズとアーティさんで治療を行うが、みな疲労困憊である


馬車の点検を護衛の人がやり、馬に餌と水は乗客が手伝う


食事もみんなで取り、盗賊の襲撃を警戒する



昼食ではルイーズがごめんなさいをしていた


「魔法防御の守りを隠し持っていたみたいなの」


「クレアさんの治療に気を取られてしまっていたの」


「眠りの魔法を解除されてて寝たふりしていたようなの」


絶対に本気で謝っているとは思えないです


しかし、ルイーズが頭目と組んでる証拠も動機も見当たらない



「いや、お嬢ちゃんのせいじゃねえ」


「俺たちの検査が甘かったんだ」


「それに、任せっきりだったしな」


「謝るのはこっちの方だ」


たしかに見た目が8歳の子に言われて任すのはオカシイと思います


司祭がいたけど、この人最初はただの酔っぱらいでしたよ


最初から穴だらけだと思います



「私がしっかりしていれば、聖職者として恥ずかしい限りです」


「私は生まれ変わります、酒を断ち人々の為に祈ります」


聖職者になるときに生まれ変わっとけばこんな事にならなかったと思います


そもそも聖職者が酒に溺れるなと、はなっから人の為に祈れと



ルイーズが墓穴を掘り、プラットさんが埋葬される


アイリちゃんがしょぼーんとしている…抱きしめてヨシヨシする



ケガ人を後部キャビンに入れて、司祭とルイーズが治療しながら馬車は進む


夜には町に着く、それまでの辛抱である




街道を進んでいた馬車が止まる


何事かと前を見ると頭目と部下が街道に立ちはだかる



「てめえら…行かせるわけにはいかねえ」


「16人も遣られた、16人だぞ…絶対に許すわけにゃいかねえ」


「荷物の依頼なんざくそくらえだ、全員殺す」


高々と吠える、包帯の下から血が滲みでる



ジョージさんさんとディバインさんが盾を構えて前に出る


馬車の屋根の上からアンディさんが防御の魔法を詠唱する


カーリーさんとバンクロフトさんが弓を引き絞り頭目を狙う


頭目は飛んでくる矢を打ち落とす



ミリアちゃんとアイリちゃんがバタバタと急いで防具を準備する


頭頂禿のおっさんは座席の下に潜り込む



ジョージさんとディバインさんは身体強化を使いながら距離を取りながら回り込む


頭目の突撃の距離には入らない


頭目を牽制しながら、ザコ盗賊に近づく…頭目との間にザコを挟む気であろう


頭目がジョージさんとディバインの方を向けば頭目に矢を飛ばす


頭目が矢を警戒するならザコがジョージさんとディバインに切られる



業を煮やした頭目は剛襲撃と叫び、ザコごとジョージさんに突撃してきた


吹き飛ばされたザコはジョージさんに向かって飛んでいく


ジョージさんは飛んできたザコを下から盾ではね上げて後ろに弾き飛ばす


ザコは起き上がって来ない



頭目が動いた時にはディバインさんもザコに仕掛けておりザコは切り倒されていた


頭目の左腕にも矢が2本突き刺さっている



馬車を下りてミリアちゃんとアイリちゃんの準備も出来て戦線に加わろうとしている


俺も馬車を下りてアイリちゃんを捕まえる、ミリアちゃんには手が届かなかった



頭目は満身創痍でジョージさんとディバインさんに翻弄され、矢で射掛けれらている



このまま押し切れると思ったところで頭目が身体強化と金剛体と剛襲撃と重ねてくる


しかし狙いはもう滅茶苦茶である、木にぶつかれば木が折れる岩にぶつかれば岩が割れる


馬車の馬も2体ほど跳ね飛ばされて馬具が破壊され馬は動かなくなってしまった



身体強化とセンチネルを発動し盾を構えて馬を守る様に前に出るミリアちゃん


ジョージさんとディバインさんも盾を構えて回り込む



見境なく突撃を繰り返す頭目に矢も通じない、ミリアちゃんは何とか受けている



攻め手に掛けるなかデバインさんが吹き飛び盾がはじけ飛ぶ


ぐったりと動かないディバインさんにアンディさんが治療魔法を唱える



ミリアちゃんがジリジリと前に出る、ジョージさんがミリアちゃんに続く


ミリアちゃんが頭目の突撃を受け止める


ジョージさんのスラッシュが炸裂するが剣が弾かれる



しかし、持久戦ではこちらに分がある…魔法も戦技も無限には使えないのである



頭目は肩で息をし身構える…そして吠える


もはや戦技も強化も出来ない状態で向かってくるが、ミリアちゃんに阻まれる



ジョージさんに切り刻まれ、カーリーさんとバンクロフトさんの矢に貫かれる


頭目は動かなくなるその時まで突撃を続けた




ザコと頭目の胴体を埋める、頭は持っていくらしい


ザコの1人は居なくなっていた、逃げたのであろう


残った馬は4頭で馬具も破損していた、ゆっくりと町へと進む




夜遅くに、街道の町ローズバーグに到着する






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