第13話 大麦畑のダンジョン.4
冒険者ギルドのカウンター奥の部屋
冒険者ギルド支部長の部屋である
「それで…マサト君、何をしたんです?」
カミーユさんが問いかけてくる、ちょっと空気が重い
「えーっと…いえ、大麦畑のダンジョンに潜っているだけです」
ミリアちゃんにやましい事はまだ何もしていないです、はい
「それは知っています」
「それで…何をしたかを聞いています」
優し気に問いかけてきますが、容赦が有りません
もしかして何か責められているの?
「え?ミリアさんが何か言ってましたか?」
朝の雰囲気からは想像できないが
視姦されてるとクレームがあったのかと考える
「いえ、ミリアは何も言いませんでした」
「それで君に来てもらってるんです、何をしました?」
ジーっと俺を見つめるカミーユさん
何を責められているのかがわからない
ミリアちゃんは何も言っていないのに責められる?
「いえ、本当に真面目にダンジョンに潜っているだけです」
奴隷の女の子も買ってるし、エロ目的かナンパ目的に見えたのかな?
「それはわかってます」
「しかし、私は君が何かしたと思っています」
「マサト君、変化には必ず理由が存在します」
「そして、その変化は君が来てからです」
「昨日の夜にミリアに聞いたのですが、はぐらかされてしまいました」
「マサト君、いったい何をしたんですか?」
カミーユさんは諦めたように話すが詰問は止める気はないらしい
「いや、ホントに何も」
「でも、確かに自分かアイリくらいしかミリアさんと一緒に居ないし」
変化と言われてもアイリちゃんみたいな妹が出来て嬉しいかったとか?
やけにお姉さんモードだし…あっ、赤青ワンピーズか!
思い当たったので伝えようとする
「わかr」
が、リヨンさんに阻まれる
「カミーユ、会話がかみ合ってるようでかみ合ってない気がするんだが?」
ネイサンさん達4人も首をかしげながらもうなずく
「わかりました…これを見れば質問の意味もハッキリと分かるでしょう」
「今日の朝に見つけました、見覚えありますね?」
ため息をついて、机の下をゴソゴソする
足下からミリアちゃんの剣を取り出して机の上に置く
「あー…それは、何というか…その、なんですかね?」
あぁ…そっちであったかと
「質問しているのは私の方なんだがな」
「まあ、しかし…いまのでだいたい理解しました」
カミーユさんはリヨンさんの方を見る
リヨンさんはうなづく
「マサト、悪いようにはしねーよ」
俺の頭をポンポン叩きながらリヨンさんは楽しそうに笑う
扉を出るとギルドの中は落ち着きを取り戻していた
冒険者の数も減り、カウンター上の卓上看板には”休憩中”文字
ミリアちゃんとアイリちゃんは女性職員2人とお茶している
俺に気づいたアイリちゃんが尻尾をフリフリやってくる
ミリアちゃんがマグカップを片付けて戻って来る
「ごめんなさい、朝に剣を見つかってしまって」
しょぼーんなミリアちゃんも可愛いので許すのである
「いえいえ、問題ありませんでしたよ」
頭をポンポンしてみたかったが、避けられたら凹むのであきらめた
気軽に他人に頭をポンポンできるのはイケメン系か兄貴系の特権だと改めて思う
俺が気軽に頭をポンポンできるのは避けない確証があるアイリちゃんだけである
「これから防具屋に行きますが、一緒に行きませんか?」
「でも」
チラッとアイリちゃんを見て躊躇するミリアちゃん
視線を追って俺もアイリちゃんを見る
「一緒に行きたいです」
アイリちゃんは空気の読める子です
「ありがとう」
ミリアちゃんも嬉しそうに笑ってくれる
ミリアちゃんとアイリちゃんが楽し気に歩くのを見ながら後ろから付いていく
防具屋に付くと防具屋にお客さんが数人いた
邪魔しないように店の外から店内を眺めていると名前を呼ばれる
「あらマサト君いらっしゃい、入ってきていいわよ」
カウンターに座る赤いワンピースの店員、タニアさんである
「待ってたのよ、どうぞどうぞ」
いつの間に回り込んだのか青いワンピースの店員のサーニャさん
ミリアちゃんとアイリちゃんの背中を押して店の奥に連れて行く
「それじゃあ、後はお願いね」
タニアさんがウインクして奥に入っていく
「いや…お客さんいますよ」
カウンターとお客さんを交互に見ながら店の奥に声を掛ける
「品物には値札が付いているわ」
「直しは品物預かって名前を聞いて番号札渡して置いてね」
「お持ち帰り以外はお金は後払いでいいわ」
カウンターの奥から声が飛んでくる
お持ち帰りなんていやらしーキャーとか言ってる
諦めてポーチから水筒を出して煮出し茶をすする
何人目かのお客の相手を終えるとアイリちゃんが裏から出てきた
「マサト様、お待たせしました」
「装備ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げる、ふさふさの大きな犬耳がパフンと揺れる
見ると鎧を着こんでフル装備である
胴装備が硬革のワンピースに変わっていた、薄い金属の補強もされている
ミリアちゃんには及ばないが胸は綺麗な曲線を描いている
スカート部はパラソルスカート風で裾に向かって膨らみ気味になっている
今まで使っていた小手とブーツとヘルメットとも色合いを合わせてある
フリルを模した肩あてや上腕部の防御など実に考えられている
続いてミリアちゃんがワンピースアーマーで出てきた
硬革のワンピースに金属の鎖と金属の板で補強されている
胸はとてもとても強く自己主張しており雄大な景観である
スカート部はアイリちゃんと同じパラソル型のシルエット
小手とブーツとヘルメットとも統一されていた
当然にフリルを模した防部も自然な形で取り付けられていた
ドレスアーマーと呼んで差し支えない程の出来である
「マサトさん、ありがとうございます」
申し訳なさそうに、照れながら出てきた
「タニアさん、全部でいくらです?」
最初の依頼とまるっきり変わっているが文句は言うまい
ミリアちゃんの分が増えてるけど文句は言うまい
わかってますよと、タニアさんの方を見る
「追加料金は無いけど、お願いがあるのよ」
「もちろんマサト君にもいい話よ」
「このワンピース防具をこの店のブランドとして販売したいの」
「これは絶対に売れるわ」
「もちろんマサト君にも相応の謝礼をさせていただくわ」
「でも、いきなりは払えないから利益から出す形になるけど」
「どうかしら?」
タニアさんとサーニャさんさんが前のめりで迫ってくる
近いです
「確かに、これほどのモノならドレスアーマーと言えますからね」
「エプロンドレスアーマーやメイド服アーマーも夢じゃないですね」
「いいと思いますよ」
「お金の事は、後々考えましょう」
これからの進化が楽しみである
「んまっ…マサト君って天才かしら」
「ホント、天才じゃないかしら」
「そこまでは考えていなかったわ」
「おそろしい、なんて恐ろしい子」
「凄いわ…なんて凄い、夢が広がリングよ」
赤青ワンピーズが興奮しておかしくなってる
「はあ…その辺の案もおいおいという事で」
俺の案では無く、偉大なる先駆者達のおかげなんだけど…まあ、いいかと
食堂「ねこ×3のにくきゅう亭」
表から入りエルネちゃんに声を掛ける
「エルネちゃん、オススメ3つを裏庭でお願いします」
「まいどにゃ」
エプロンドレスをふわりと振り返る
煮出し茶を3つ入れてもらって受け取る
裏口から裏庭に出る
小さな裏庭には井戸の横に木のテーブルと椅子が置いてある
ミリアちゃんとアイリちゃんと3人で座る
本日のオススメのサバのソース煮とライ麦パンをいただく
食後はマッタリとお茶を飲む
ミリアちゃんとアイリちゃんのおしゃべりは止まることなく
食事休憩で合流したエルネちゃんも入れて会話も盛り上がっている
そんな3人を眺めながら、転生っていいなーなんて考える
途中、一人抜けて宿泊用の買い物に行く
ハム店長の雑貨屋で水筒と鍋と皿、スプーンにフォークなど購入する
キャラバンに行ってお菓子と飴を補充する
新しくきたキャラバンには魔法屋があった
魔法屋には魔法の書に巻物や触媒に紋章や水晶や杖など色々なものが有った
冒険者ギルドでは土水火風の4大属性の初級しかなかったが
この店には4大魔法の中級まで売っていた
更に精神魔法と強化魔法と弱体魔法の中級まで売っていた
触媒は色取り取りな砂や石や宝石や液体が売っていた
魔法の発動が成功しやすくなるとの事、イメージしやすいのだろう
更には効果が上がると説明される
紋章と水晶と杖はすべて精神の負担の軽減の為の物らしい
材質によって効果が変わり、効果が高いものはお値段もお高めである
杖に水晶をはめ込み紋章を刻む、3つまでは効果が重なるらしい
4大属性の中級と精神と強化と弱体の魔法の初級と中級の魔法の書を購入する
店員は青い目、青い髪を三つ編みおさげにした素朴な外見のロリッ子
見た目が8歳位の店員である、しっかりと受け答えが出来て商品の説明までこなす
完全にこの子はロリババアでヤバい奴だと判断して余計なことは言わない
料金を払って店を出る
新しいキャラバンには他に興味を引く店は無かったので戻ることにする
食堂に戻るとおしゃべりはまだ続いていた
「おっと休憩は終わりにゃ、もどるにゃ」
エルネちゃんが席を立つ
「お土産ですよ」
エルネちゃんにお菓子と飴を渡す
「ありがとうにゃ」
嬉しそうに両手で抱えて走って店内に戻っていく
会話も一段落したところで
テーブルの上にお菓子と飴を並べて明日からの探索の話をする
夕食はカミーユさん呼ばれているとの事でミリアちゃんをギルドに送る
夕食は2人で宿の部屋で取ることにする
アイリちゃんがミリアちゃんとお話しした内容を嬉しそうに教えてくれる
翌日は上層まで到達してダンジョンでの宿泊であったが
これがあまりにも辛かった
まずは寝れない、3人3交代で寝る予定だったが気が張って眠れない
聖水で魔物除けができてると思っても眠れない
聖水も途中で効果か切れるので定期的に撒きなおす必要がある
これでは睡眠不足である、しかも毛布だけなので横になっても体が痛い
宿泊は諦めてダンジョンを出たころは早朝である、ただの朝帰りである
今日は真っ直ぐ宿に帰って寝ることにする
昼頃にミリアちゃんが宿にきて起こされる
一緒に食事を取りながら反省会を始める
「ダンジョンで寝るのがあんなに怖いとは思いませんでしたよ」
「私も初めての経験で、甘く考えてました」
ミリアちゃんはしょぼーんである
「では、今後はどうしましょう?」
「宿泊は駄目なら今までの様にお昼を持って入るしかないですね」
「もしくは増えてきた冒険者で一緒に入ってくれる人達を探すか」
「でも共闘は寄生にならない相手を探さないとですし」
「募集して、当分は今まで通りですかね?」
良い案が浮かばない
「そうですね、宿泊は厳しいですね」
「もしくは経験を積んで討伐速度を上げて行くしかないですね」
「共闘パーティ募集は私の方でしておきます」
ミリアちゃんも考えながらしゃべる
「後これ渡して置きます」
強化魔法の書の初級と中級をミリアちゃんに渡す
「これは?」
手に取って眺めている
「そのうちでも、使えたらいいなと思って」
「自分はもう覚えたのであげますよ」
「そんな、私なんてまだ」
「あれ?」
「初級の魔法読めます、覚えられそうです」
一枚一枚ページをめくりながら、ブツブツと集中している
そんなミリアちゃんを見ながら思う
そりゃ覚えられるでしょうと
完全に発動まではしていなかったが
ミリアちゃんのあのタフさはきっと強化魔法でしょうと
さらに技を覚えてはいないが盾で弾くのはシールドバッシュでしょうと
技もちゃんと学べば使えると思うんですよね
「私にもできます」
テンションが上がって強化魔法を次々と披露してくれるミリアちゃん
外見からでは違いはほとんどわかりません
しかし、とてもとても嬉しそうです
「あと、攻撃や防御の技はどうやって覚えるものなんです?」
「武術や戦技と呼ばれるものは師事して学ぶものだと聞いています」
「私には師がいませんので、技は使えません」
ミリアちゃんんの上がったテンションがまた下がる、しょぼーんである
「ギルドで聞いてみましょう」
「教えてもらえればダンジョンの攻略に役立ちますよ」
「今日にでも聞いてみましょう」
席を立ち、食器を片付けて冒険者ギルドに向かう
冒険者ギルドは冒険者が数人いた
日に日に冒険者が増えてきているようである
「すいません、今いいですか?」
冒険者ギルドのカウンターの職員の女性に話しかける
「はい」
書類から顔を上げて答えてくれる
「技を教わりたいんですけど、誰か紹介してもらうことはできますか?」
「はい、覚えたい技の武器は何ですか?」
職員さんは武器を持たず、村人の服装の俺を見て戸惑っている
「いや、俺じゃなくミリアさんです」
窓際にいるミリアちゃんを指さす
「あら?ミリアちゃんなの?」
「ちょっと待っててくださいね」
席を立ちカウンターの奥の部屋に入っていく
しばらくして奥の部屋から出てきた職員さん手招きされる
ミリアちゃんとアイリちゃんと部屋にはいる
「ミリア、技を習いたいと聞いたが?」
カミーユさんが書類を見ながらミリアちゃんに問いかける
「はい、階層を進むには必要ですので」
ミリアちゃんがキリッとしている
「ふむ、いいだろう」
「丁度、ネイサンが帰ってきているからな」
「他に有るか?」
「無いなら以上だ」
書類から目を離さずに話が終わる
ミリアちゃんは拒否されると思っていたのか、ポカーンとしている
「あの…わたしも」
俺の後ろでアイリちゃんが呟く
「あの、アイリも一緒に鍛えてもらっても良いですか?」
恐る恐るカミーユさんに聞いてみる
「もちろん構わん」
「それだけか?」
「無いなら以上だ」
こちらを見ないで答える
「はい、ありがとうございます」
ミリアちゃんを促して部屋を出る
「明日の朝からだ」
カミーユさんが背後から声を掛けてくる
「はい」
返事をして扉をしめる
扉を出るとミリアちゃんが大きくため息を付いていた
「明日の朝からだそうですよ」
「当分は訓練に集中しましょう」
俺はどうするかな、1人で潜るかな
「はぁ…前は駄目だって言ってたのに」
「こんな簡単に認めてくれるなんて」
ミリアちゃんがプンプンである
「マサト様、ありがとうございます」
アイリちゃんが尻尾をパタパタしている
「無理はしないで頑張ってね」
矛盾したことを言いながら頭をナデナデする
「頑張ります」
両手を胸の前で強く握りしめて、アイリちゃんもやる気である
宿に戻り夕食を食べながら今後の方針の確認である
「ミリアさんは技と強化魔法の訓練をしましょう」
「アイリは戦い方を学びましょう」
「せっかくのチャンスです、教えてもらえるなら学びましょう」
「そして俺は魔法の練習かな」
訓練メインの提案をする
「そうですね、わたしも中層で手がいっぱいですから」
「この先は戦技と強化魔法は必要だと思います」
ミリアちゃんが瞳をキラキラさせている
「がんばります」
アイリちゃんは自信無さげに答える
「大丈夫だよアイリ、危険な事は俺もさせたくないからね」
「出来る範囲で頑張ればいいよ」
「はい」
頭ナデナデである
ミリアちゃんを送って宿に戻る
アイリちゃんの本当の役割をじっくりと教えてあげようと思う
そう、じっくりねっとりたっぷりとである
俺の胸に顔を埋めて目を閉じながらクンクンとペロペロするアイリちゃん
頭をナデナデ、抱きしめて眠りにつく
翌日の朝の日課と準備と支度を終えて冒険者ギルドに向かう
今日からはダンジョンは当分お休みで訓練メインである
冒険者ギルドには朝から冒険者でにぎわっていた
カウンターの中ではカミーユさんとネイサンさん達が話をしており
ミリアちゃんがカウンターの外でそれを眺めている
「お待たせしました」
ミリアちゃんに声を掛けるとミリアちゃんは振り返る
「おはようございます」
ミリアちゃんが笑顔で答えてくれる
しばらくするとネイサンがやってくる
「話は聞いた、アーティーとニックが教える」
「マサトはどうする?」
ネイサンさんに聞かれるが断ることにする
「いや、自分はいいです」
「そうか、武器を習いたくなったらいつでも行ってくれ」
「では、俺たちはいくか」
「じゃあな」
ネイサンさんはディノさんと出かけて行った
「それじゃー俺たちも行こうか」
アーティーさんに連れられて北門の広場に向かう
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