第11話 大麦畑のダンジョン.2
冒険者ギルドの並びの防具屋である
カウンターの赤いドレスのタニアさんに声を掛ける
その横でおしゃべりしているのは青いワンピースのサーニャさん
「タニアさんサーニャさんこんばんは」
「こんばんはです」
ちゃんとアイリちゃんも中に付いて来ている
「こんばんは、初めまして」
ミリアちゃんが会釈をする
初めましてだったのかと
「あらいらっしゃい、マサト君にアイリちゃんと…ミリアちゃんだったかしら?」
「あら、マサト君隅に置けないわね」
「着々とハーレム作っちゃって」
「私達を含めると4人ね、頑張ってもらわなきゃ」
「今夜は寝かさないわよ」
「食べちゃうんだから」
いや、ミリアちゃんが俺を見て顔真っ赤にしていますよ
目覚めて腐っちゃったらどうするのかと
「同じパーティになりまして」
「あれ?初めましてじゃなかったんですか?」
「初めまして、だと思いますが」
ミリアちゃんも不思議そうな顔をする
「お話しするのは初めてよ」
「大麦畑のダンジョンに1人で入る女の子の話は有名よ」
「とても可愛い子が1人でダンジョンに入ってるって」
「何人もの男がパーティに入ったけどみんな逃げて行ったって」
「虫ダンジョンとはいえ、だらしない男達よね」
赤と青のワンピーズが答える
ミリアちゃんは恥ずかしそうに下を向いている
「ところで、マサト君今日はどうしたの?」
「用が無くても来てくれるのは大歓迎よ」
「アイリちゃんの防具の型取りもはかどるし」
「可愛い子は眼福ですものね」
「じゃっアイリちゃんは型取りしましょ」
サーニャさんがアイリちゃんの肩を押して店の奥に連れて行く
もしかしたらこれは他の客への配慮を上手く誤魔化しているのではと
だとしたらホントいい人たちである
「あの、アイリちゃんの防具が出来るまでの防具が必要で」
「今日危なかったので」
「何かあってからでは遅いので」
ミリアちゃんがしどろもどろに説明する
「あら、防具もつけずに行ったの?」
俺の方を見る、胸筋がピクピクしてる
「いやいや、ミリアさんが鉄壁なので」
「おれもアイリ守りましたし」
「ケガ1つ無いですよ」
必死である…なんでこんなに必死にならないといけないのかと
「そういう問題じゃないでしょ」
「店番してなさい」
カウンターを指さしてジロリと睨んでミリアちゃんを連れて奥に行く
また店番なのかと
俺はこんなキャラじゃないんだけど
なんでこんな役回りをしているのかと
なんかおかしいと
結構な時間店番しているが客が来なくてこの店大丈夫なのかと
考えてた辺りでアイリちゃんが裏から出てきた
「マサト様、お待たせしました」
「装備ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げるアイリちゃん、ふさふさの大きな犬耳がパフンと揺れる
見ると装備がミリアちゃんに似た革装備に変わっていた
ミリアちゃんには及ばない大きさだが綺麗な曲線の革のビスチェに薄い金属の補強
チャップスと小手とブーツとヘルメットも硬革に薄い金属で補強されている
「マサト君にはコレ」
サーニャさんがカウンターの上の布の塊をジャラッと開いて見せる
法服に似たローブの裏側が鎖帷子になっていた
「アイリちゃんが付けていた装備は引き取るとして」
「料金はう~んとサービスして…金貨45枚」
タニアさんが指折数えて金額を告げる
「いや、高くないですかな?」
「えー高いのはマサト君のローブよー」
「そうよねー主人ですものねーいい物身につけないとー」
「アイリちゃんもカッコイイマサト君がいいわよねー」
「そうよねーいい男っぷりを見せるべきよねー」
「ウダウダ言ってないでポーンと払っちゃいなさいよー」
「そうよそうよー」
「欠の穴小さいわねー」
「キャーエッチー」
この赤青ワンピーズめ、と
「わかりました…払いますよ…もう払わせてください」
金貨45枚支払う
「おそろいね」
「はい」
などとミリアちゃんとアイリちゃんが和んでいるが、2人とも可愛いから良しとする
「まいどあり~」
「またきてね~」
赤青ワンピーズが手を振る
いい人達だと思った俺が甘かったと
宿屋「あの夏の熊街道亭」
「ただいまです、食事を3つ部屋でお願いします」
カウンターに座ってお隠さんと談笑しているおかみさんに声を掛ける
「あいよ」
「あら、また新しい女の子かい?」
おかみさんがこちらに振り返えり、ミリアちゃんを見みて答える
「パーティメンバーのミリアさんです」
「初めましてミリアといいます、マサトさんとはパーティでお世話になっています」
丁寧にお辞儀してあいさつする
「あら、よくできたお嬢さんじゃないかい」
「もしかして大麦畑のダンジョンの子かい?」
「あんたも色々と大変だろう」
「そうかいそうかい、頑張るんだよ」
おかみさんが何か1人で納得している
「出来たら呼ぶから部屋に行っていいぞ」
奥さんの会話を遮って厨房の奥から声が聞こえてきた
旦那さんの声を始めて聞いたかもである
「では、お願いします」
ミリアちゃんとアイリちゃんも会釈して2階に上がる
部屋ではミリアちゃんにアイリちゃんが防具の付け方を教わってる
革なので手入れも必要とかで手入れも教わっている
武器も防具も毎日綺麗な手拭いで汚れと埃取りで乾拭きするとか
革は週に一度防水クリームで月に一度ブラッシングして保革油を塗るとか
月に一度は武器も防具もお店に見てもらうようにと指導していた
「あれ?ミリアさんはタニアさんとサーニャさんとは面識なかったけど」
「ミリアさんは毎月お店に出してないの?」
疑問を投げかけてみる
「私の装備は…その、冒険者ギルドからお借りしていて」
「月の点検でまとめてやるからと」
恥ずかしそうにいう
「あー下宿してるんだもんね、納得です」
「あの」
「できたわよー」
ミリアちゃんが何か言いかけたけど、おかみさんの声で途切れる
「取ってきます」
「わたしもいきます」
ミリアちゃんとアイリちゃんが出て行ったので
扉を開けっぱなしにして、机と椅子を用意する
夕食はイノシシの肉野菜シチューとライ麦パンと煮出し茶とリンゴが付いていた
3人で食べてからミリアちゃんを送り届ける
部屋に帰るとアイリちゃんが装備の手入れをしている
俺も赤いポーチから短剣と盾を出して掃除を始める
「マサト様、いまその小袋から盾と短剣が出てきたように見えます」
キョトンとした顔で質問してくる
「うん、出てきたけど…みんなには言わないでね」
「はい、そこが秘密の隠し場所なんですね」
「誰にもいいません、はい」
「それで今日はどうだった?」
「戦闘もだけど・・・その、うまくやっていけそうかな?」
「はい、楽しかったです」
「戦闘は怖いけど、マサト様とミリアさんも居るので大丈夫です」
「みんないい人で、戸惑うことも沢山ありますが頑張ります」
両手の拳をギュッと握ぎる
「もしよかったら、アイリの事教えてくれるかな」
「はい、わたしはココより北にある港町ガエルの孤児院で育ちました」
「生まれてすぐ捨てられたようで、乳飲み子だったようです」
「ですので私自身の事はダックス系の犬人族という事以外はわかりません」
「ダックス系というのは司祭様が教えてくれました」
その後は孤児院のくらしをダイジェストで教えてくれた
孤児院は辛いこともあったが楽しい事もたくさんあったと言っていた
自分は売られたのではなく、自ら奴隷になったのだと言っていた
俺に買われてよかったとも言ってくれた
ベットに入ってからも話をした、色々話をした
俺の事は…取りあえず魔術師の弟子の設定の話をした
師匠のもとに戻るついでにのんびり旅をしていると
アイリちゃんは傍らでクンクンとペロペロしながら話を聞いていた
なぜだか、ちょっと寂しそうな眼をしていた気がする
朝、アイリちゃんに起こされる
すでに朝食は準備されて洗濯も干してある
朝食はイノシシの肉野菜シチューのミルク煮にライ麦パンである
朝食を済ませて、キャラバンのお風呂に向かう
いつものハンチング帽にチョッキの男に声を掛けると
「あーあんたらか、あんたらなら2人で銅貨18だよ」
「え?値上がりしてるじゃないですか?」
「あんたらの風呂は長いからな、その代わりに薪は2束渡すよ」
「わかりました、それでいいです」
「それじゃーごゆっくり」
アイリちゃんと洗いっこして朝から色々スッキリする
帰りは公衆浴場の前のフルーツ果汁入りミルクを飲む
「昨日の朝も教会を見ていたけど朝のお祈りとかする?」
「大丈夫です、ここからでもできますから」
そうか、昨日もお祈りしてたのか
フルーツ果汁入りミルクの美味しさを噛み締めてたんじゃなかったのかと
「近くまで行ってみようか」
公衆浴場から洗い場の橋を越えて、中央広場の向かいに教会が建っている
中央広場の朝市には取れたての野菜や果物や魚の干物などが並んでいる
教会は石造りの3階建て相当の尖がり帽子の鐘塔を持つ教会で
入り口は大きく開かれておりこの世界の神のシンボルが掲げられている
聖堂の中には左右に椅子が並んでおり、座りながら祈りを捧げている人達がいる
奥には祭壇と権杖を持ち祭服を身に纏った神の像が安置されている
取り囲む色とりどりのステンドガラスは神話を物語っていた
聖堂内には多くの人々が朝の祈りを捧げている
アイリちゃんは入り口の外で両手を胸の前に組んでお祈りをしている
「アイリ、中に入っても怒られないよ」
「大丈夫です、神様にお祈りするのに場所は関係ないと司祭様は言ってましたから」
「そうか」
明日からはお祈りの時間もとろうと思う
アイリちゃんのお祈りが終わるのを見ていたら、ミリアちゃんを見つけた
向こうも気が付いたらしく、胸元で手を振りながらこっちに歩いて来る
町娘の服装で、とてもとても大きく自己主張する胸がこぼれそうである
ブラウスと胸元を抑えるワンピースのスカート、朝から眼福である
「おはようごさいます」
「おはようございます、ミリアさんもお祈りですか?」
「はい、毎朝来ていますよ」
「そうなんですか、みなさん信心深いんですね」
「信者さんは治療の割引もありますが、やはり…みなさんそれだけじゃないと思います」
「叶えて欲しいお願いはみんなありますからね」
「ミリアさんは大麦畑のダンジョンの討伐ですね」
「そうですね、でも…それだけじゃないです」
「私って結構欲張りなんですよ」
「全部叶うように協力も応援もしますよ」
「はい、お願いします」
笑顔が眩しい
宿に戻って身支度を整える
旅人の服に法服風のローブを着て短剣を腰に装備する
アイリちゃんは短槍を持ち旅人の服の上にに革のフルアーマー装備
冒険者ギルドでミリアちゃんと待ち合わせる
ミリアちゃんも着替えて武器防具を装備している
「マサト君、こちらに」
冒険者ギルド支部長のカミーユさんに呼ばれる
「なんでしょう?」
カウンター奥の部屋に入り扉を閉める
「キャラバンと揉めたのかい?」
「いえ、品物の売買はしましたが揉めてはいないです」
「何かありましたか?」
「そうか、君について聞かれてね」
「揉めてないならいい、忘れてくれ」
「何か言ってましたか?」
「出自を聞かれてね、ジュルク村の出身といっておいた」
「あとはリヨンがやるから心配はいらない」
「あと」
「大麦畑のダンジョンにも興味を持っていた、中では気を付けたほうがいい」
「以上だ」
「ありがとうございます」
「いや、いい…ミリアを頼むよ」
「はい」
扉から出てミリアちゃんとアイリちゃんの所に行く
何を話してたか聞かれたので、大麦畑のダンジョンに向かう途中で話す
「ダンジョン内に他のパーティが入ってるみたいです」
「揉め事起こさないように気を付けなさいと、言われましたよ」
「あとはミリアを頼むと」
「もう、叔父さんたら」
「今までのパーティの人達が辞めた原因の半分は叔父さんのせいなのに」
「でも、ダンジョンに人が増えるのは良い事ですね」
ミリアちゃんが笑う
「ダンジョンに昨日いたのはキャラバンの人達です」
「ニオイがしました」
アイリちゃんが何か考えながら話す
「そうか、まあ…今日も大きなケガをしないように気を付けていこう」
大麦畑のダンジョン
「ミリアちゃんおはよう、気を付けてね」
「それと、今日はもう2パーティも先に入ってるよ」
昨日と別の騎士の男がミリアちゃんに声を掛けてくる
内容は昨日の騎士と同じである、要はナンパである
ウザいのでアイリちゃんを連れて先に入る
「はい、ありがとうございます」
笑顔で騎士に答えてミリアちゃんも後に続く
ダンジョン内は壁や天井がほんのりと明るく薄暗い
アイリちゃんは耳をピコピコさせて鼻をクンクンさせている
「全員キャラバンの人達です」
アイリちゃんが教えてくれる
「そうなんだ、まあ…出来るだけ気を付けよう」
「はい、進みます」
ミリアちゃんは剣を抜き、盾を構えて進む
どうやら魔物の再ポップが間に合っておらず、階数が進む
7階に来たところでミリアちゃんが悩んでいる
振り返りこちらに問いかける
「飛行の魔物に慣れるために、ここでやるか…先に進むかですが」
「ハエをやりましょう」
「そうですね、慣れていきましょう」
「はい」
アイリちゃんが槍をギュッと掴む
飛ぶ魔物は実に面倒である
ハエは正面から向かってこない、必ず回り込もうとする
更に下からもくるし上からも来る
3次元は攻撃が当てづらいのである
向かってくるハエにミリアちゃんが盾を構えると盾に取り付く
盾を壁や床に叩き付けようとするとスルリと逃げる
剣の届かない距離を回り込んで死角に回ろうとする
一方、アイリちゃんは槍を持って追っかけるが槍が届かない
スカる、槍にとまられて床に叩き付けて手がジーンと痺れてる
やっとの事で倒してもナメクジの倍以上の時間が掛かる
仕方がないので働こうと思う
「提案があります」
「敵が飛んだら魔法で落とします、そこで攻撃してください」
「はい、お願いします」
もっと早くソレをヤレ、と言わないミリアちゃんは奥床しい
「そういえばマサト様は魔術師なんですよね」
アイリちゃんは昨日の話を思い出したようだ
「うふふ…マサトさんは、魔法使いなんですよ」
ミリアちゃんが楽し気に言う
「魔法使い?何ですそれは?教えてください」
アイリちゃんも食いつく
「お昼にね」
アイリちゃんにニッコリ微笑む
普通の魔法の効果は対象にしたモノにしか発生しないようである
範囲魔法は範囲内の自分以外のすべてのモノに効果が及ぶ
開幕から飛びそうな敵は範囲をイメージして風魔法のバーストで落とす
1体ならミリアちゃんが剣で突き刺す
2体ならミリアちゃんとアイリちゃんが剣と槍を突き刺す
3体居たら3体目をミリアちゃんが盾で潰す
簡単コンボで急に楽になる
同様に9階にいた蚊も開幕バーストコンボで倒す
帰りの戦闘も考えて切り上げるとする
戻りに再ポップした魔物を倒して、午前中の成果は9階11匹である
魔物はアイリちゃんが見つけて、ミリアちゃんが先制のパターン
飛行魔物はバーストで落として攻撃、いい流れが出来ている
お昼を食べてから午後にまた入るとしよう
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