第8話 ブレオテ町.4


翌朝のダンジョンは早めに切り上げてキャラバンを見に行く




ブレオテの南門


冒険者ギルドのある場所から中央広場を挟んで反対側


南門の外にはキャラバンが来ており店舗や宿屋が営業している



宿屋の大型テントの前にいるハンチング帽にチョッキを着た男に話しかける


木の看板を指さしながら値段を教えてくれる



「大部屋が銅貨8枚、毛布は無料で貸し出す水差しと桶は共用だ」


「小部屋が銀貨4枚、毛布と水差しと桶は無料で貸出で蝋燭は一本サービスだ」


「食事は無し、店を出しているのでそっちで買って食べてくれ」


「風呂は銅貨6枚、石鹸や手拭いは店で売っている」



ちょっと、お高めである


考えるふりをしながらその場を離れる



武器屋と防具屋があった


チラッと見たが、やはりお高めである



道具屋の値段も見たが、やはり少しお高めに設定されている


町の店への気遣いだろう



古着は異国の洋服や小物など珍しい物もあったが


一時のテンションで買って、一度も着ないのはよくある話


箪笥の肥やしになるだろう



飴やお菓子も売っていた


ミリアちゃんに聞いてエルネちゃんの分も買った


ミリアちゃんの分はいらないと言われたので自分用に買った


休憩の時に分けて食べようと思う



奴隷の販売もしているようで


店員さんに値札が付いていた


面白い売り方しているなあ、などど感心してしまった



ハンチング帽にチョッキの人


ジャケットやワイシャツなどなど


それなりに身なりがしっかりしている人が商人のようである



平服の人には値札が付いている、もちろん奴隷紋も付いている


金額はもちろん金貨3ケタは下回らない


読み書き計算に、丁寧な対応で販売まで出来る奴隷


お高めの人たちなのかもしれない



ちょっとした広場では芸も披露している


こちらは戦闘系の奴隷のパフォーマンスで客寄せのようだ


金額は少し下がるが金貨2ケタ後半・・・やはりお高い



その横は愛玩用と引き立て役?と思われる老若男女



愛玩用の男女はピッカピカのテッカテカで輝いていた


引き立て役はボロボロのダルンダルンな感じであった



愛玩用は金貨3ケタ前半ぐらい


引き立て役でも金貨2ケタは下回らなった



美少女奴隷を探してみたが見当たらなかった


それほど大きなキャラバンではないので仕方がない


などと思ったがキャラバンの裏方に牢箱に入っている少女が居た



黒と茶の二色の髪に薄茶色の肌に黒ずんだブラウスに赤黒いスカート


暗がりで良くは見えなかったが、顔立ちは整っている



見つけたので我慢せずに聞くことにする


木綿のシャツにチョッキの男が近くに居たので聞いてみる



「あの子は販売はしていないのですか」



「あーあの子か、あの子はまだ準備してないんだ」


「ここに来る前の港町の孤児なんだけど契約前なんだ」


「自分からの身売りなんだが、育った町では奴隷契約は嫌だと言ってな」



「売るとしたら幾らになります」



「どうだろうな」


「金貨200枚って所じゃないかな?」


「買うなら親方に聞いてみるが?」



「魔法の付加されている武器と交換でも大丈夫です?」



「モノ次第だな、何を持っているんだ?」



「えーっと…刀身が炎に包まれる短剣かな」



「熱を帯びて熱くなるんじゃなくて、炎が出るのか?」


「それなら大丈夫だと思うぞ」



「では、彼女をもっと良く見せてもらっても?」



「いいぞ、近くで好きなだけ見てくれ」



牢箱の前まで行くと隅の方で体育座りで小さくなって座っている


年齢は14歳か15歳くらい、顔は汚れているけれど無茶苦茶可愛い



「初めましてこんにちは」


声を掛けてみる



少女はチラリとこちらを見て軽く会釈をする



牢箱を離れて木綿のシャツにチョッキの男の所に戻る



「それで親方に話しを通しておくがいいか?」



「おねがいします」



「じゃー適当に店でも見ててくれや」


裏のテントの1つに入っていく




急いでギルド並びの武器屋に入り短剣を見に行く


新品の短剣を物色する


装飾が他よりも有ってそれでいてお高くない短剣


出来るだけ見栄えが良くて綺麗な短剣…派手な奴



良さげな品が銀貨18枚程であった


掴んで筋肉店員の所に持っていく


黒髪短髪刈り上げにハチマキを撒いた筋肉もりもりの若者である


「すいません、これください」


「鞘もお願いします」



「あいよ、新品は盗難防止で研いでないから研いでから渡すよ」



「すいません、急ぎなので急ぎでお願いします」



「おう、なら…今やっちまうよ」



「ありがとうございます」



「いいって事よ、これ打ったのは俺だからね」


「買ってもらえるのは嬉しいもんだよ」


「親方の所に来て…」



「すいません、急ぎなんです…お願いします」



「お、おう」




短剣と鞘を受け取り中央広場の隅、塀に腰かけて剣を見つめる


刀身に纏う炎…ユラユラ炎が揺れる…炎の波が揺らぐ…炎が揺らめく


波紋から揺らぐ炎…刃から出る炎ユラユラ…ユラユラ…揺らめく炎



”揺らげ、揺らげ、炎よ揺らげ、波浪の炎、永久の宿、魂の承允”



(”揺らげ、揺らげ、炎よ揺らげ、波浪の炎、永久の宿、魂の承允”)



短剣が微かに光る、刀身に炎の文様が浮かんでいる



(シス、使い方は?)



(はい、短剣を抜いて刀身に集中してください)



集中してみる



”炎よ揺らげ、波浪の炎”



なるほど



(”炎よ揺らげ、波浪の炎”)



刀身に薄く波の様な炎が纏わり付いている


剣が燃えているのではなく刀身に炎が鱗の様に波打っているのがいい


見入ってしまう



おっと、急いで戻らないとである




南門から出たところで声を掛けられる



「おう、にーちゃん消えたのかと思ったぜ」


木綿のシャツにチョッキの男が声を掛けてくる



「短剣を取りに行ってて」



「こっちだ来てくれ」



裏のテントに案内されるとキャラバンの親方に紹介される



親方と呼ばれる男は50代か60代か油っぽい太っちょである


頭が禿げ上がっており鼻も潰れている、口から金歯が覗いている


絹のシャツから胸毛が見えており…なんか汚い



「君かね、奴隷を買いたいというのは」



「はい」



「お金では無くて、魔法の武器で交換を希望と聞いたが間違いないかね」



「はい」



「見せて貰っても?」



「どうぞ」


机に短剣を置く



「では、見させてもらうよ」



短剣を収納したまま、鞘をマジマジと見つめる


次はグリップをマジマジと見ている


鞘から短剣を抜いて刀身を見ると声を漏らした



「むぅ」


暫く眺めた後、目を閉じて瞑想している



「”炎よ揺らげ、波浪の炎”」



刀身に鱗状の炎が纏わりつく、ユラユラと波立


自分で作っといてなんだが、炎の美しさは見惚れる



「ふむぅ」


「わかった、準備してきなさい」


木綿のシャツにチョッキのおっさんは黙って出ていく



しばらく刀身の炎を見入っているとおっさんに呼ばれてた


「きみ、きみ」



「はい、なんでしょう?」



「これはどうしたのかね?」



「やましい事はありませんが、教えることはできません」



「出所が不明な武器だと買い手が限られてしまうかもしれないのだが」



「自分の人柄なら冒険者ギルドで聞いてみてもらって構わないです」


「あと、最悪は取引中止で構わないです」



「そうか」


「条件は奴隷と交換が希望だったね」



「はい」


「もし短剣の方が価値が大きく勝るとしたら、次は別の商人の方に売るので」



「持ってるのかね?」



「何をです?」



「魔法の武器を、まだ持っているのかね?」



「無いとは言いません」



「あてが有ると?」



「そうですね、そうとも言えます」



「ふむ」


「その、あてとやらの情報を売る気は無いかね?」


「言い値、とまでは言わないが相当な金額は用意出来ると思うが」



「すいませんが、売る利点がありません」



「ふーむ」


「なるほど、君とは友好的な取引をしようじゃないか」


「奴隷の娘の他に欲しいものは無いか?」


「好きに店を見てもらって構わないが?」



「ありがとうごさいます、差額は現金でお願いします」


「買い物はその後でしますので」



「そうか」


「うむ、そうか」


「準備をしよう、楽にしていてくれたまへ」




しばらく1人でテントに残される


テントの中には見たこともない動物のはく製や彫像などが並んでいた


きっと高価なのだろうが価値がわからない



しばらくすると木綿のシャツにチョッキの男の男が呼びにきた


木綿シャツにチョッキのおっさんに付いていくと馬車の横に案内される


馬車の横には祭壇が作られていた、町の教会の司祭が立っている


傍らにキャラバンの親方と牢箱の女の子が居る



木綿シャツにチョッキのおっさんが説明してくれる



「まずは、うちとの奴隷契約をする」


「これをやらないと彼女と孤児院との約束を破ることになるのでやる」


「次に、にーさんとの契約をする」



司祭が懐からスクロールを出して祭壇に捧げる


祭壇に置いてある神の紋章を胸の前で握り祈りの言葉を唱える


祭壇に捧げられたスクロールに光の文字が浮かぶ


スクロールの文字を読み契約と制約を与えると言っている


キャラバンの親方が人差し指でサインをすると光で文字が書かれる


牢箱の女の子が躊躇した後にキャラバンの親方に何か言っている


キャラバンの親方は頷いて俺の方を見る


牢箱の女の子は俺を見た後に人差し指でサインをした



「では、こっちへ契約しますんで」


木綿のシャツにチョッキのおっさんに説明されている間


牢箱の女の子にガン見される


なんか…恥ずかしいやら、ヤマシイやら



司祭が懐からスクロールを出して祭壇に捧げる


祭壇に置いてある神の紋章を胸の前で握り祈りの言葉を唱える


祭壇に捧げられたスクロールに光の文字が浮かぶ


スクロールの文字を読み契約の変更を認めると


キャラバンの親方が人差し指でサインをすると光で文字が書かれる


俺も人差し指でマサトとサインをする…が


マサトとだけ書いたのだがスクロールのサインはフルネームになっている


契約も終わり司祭がキャラバンの親方に契約書を渡す



「ファーストネームをお持ちでしたか」


「言っていただければよろしかったのに」


「これが契約書と差額分の金貨400枚となります」


キャラバンの親方が急に敬語を使いだす、ニヤニヤして気持ち悪い



木綿シャツにチョッキのおっさんが金袋を渡してくれる


「確認してくれ」



「友好的取引を信用していますよ」



「良い取引でした、これからもよろしくお願いします」


キャラバンの親方がずっとニヤニヤしていて気持ち悪い



「はい、ありがとうございます」



振り返り牢箱の女の子の所に向かう


あらためて見ると無茶苦茶可愛い犬人族の女の子である


年齢は14か15歳位の薄茶色の肌、黒と茶の2色混じりの髪


内巻きおかっぱのショートボブ、頭上の耳は大きくふさふさで内向きに垂れている


洋服は村人の洋服で麻のブラウスに麻のフレアスカートにサンダル


身長は低めだが胸はそれなりにありブラウスの上から形を見て取れる


尻尾はふくらはぎまでり、ロングヘヤーの柔らかそうな毛並みである



「歩きながら話しましょう」


「名前は何といいますか?」



「奴隷ですのでありません、お好きにお呼びください」


声に抑揚がない、頷いて付いてくる



「奴隷の前は何と呼ばれていましたか?」



「アイリと呼ばれていました」



「ではアイリと呼んでも良いですか?」



「はい、もちろんです」



「俺の事はマサトと呼んでください」



「はい、マサト様」



アイリちゃんの向こうにミリアちゃんが小走りで近づいてくるのが見えた


「マサトさん、何処行ってたんですか?」


「いきなり消えて、探したんですよ?」


「あら?こちらのお嬢さんは?」



「えーっと、買っちゃいました」


「犬人族のアイリといいます」



「アイリと言います、初めまして」


同性に安心したのか、声に抑揚が少し戻る


おずおずと軽く会釈する



アイリちゃんを眺めた後、ミリアちゃんの質問が一気に飛んでくる


「奴隷は戦闘系を買うのではなかったのですか?」


「この子は戦えるのですか?」


「職業は何ですか?」


「戦闘経験は有るのですか?」


「お金はどうしたんですか?」


「お金持ちなんですね…いやらしい」



「えーっと、その」



「戦闘経験というほどは有りませんが獣と魔物は倒した経験はあります」


「1人ではありませんでしたが」


「戦闘もできます」


アイリちゃんがおずおずと話す



「も?」


ミリアちゃんが俺を睨む



「あっ、すいません…こんな綺麗な方がいるのに必要ないですよね」


「私が買われるとしたらソレしかないかと思ってましたので」


「失礼しました」


ぺこりと頭を下げる、ふさふさの大きな犬耳がパフンと揺れる



「いえ、私は…違います、違いますから」


腕を目の前に伸ばし両手をブルブル振っている


顔を真っ赤に否定している、年頃の女の子である



アイリちゃんが見てくるので答える


「残念ながら」



「そうですか、失礼しました」


もう一度、ぺこりと頭を下げる



「もう今日は…お休みにします、ごゆっくり」


真っ赤な顔で、フル装備で全速力で走って行った



「マサト様、追わなくていいのですか?」



「大丈夫だと思うけど」



「そうでしょうか…申し訳ありませんでした」



「いえいえ、だいじょうぶですよ」



「所でお腹は空いていませんか?」



「いえ、朝に食事をいただきましたから」



「そうか」


「ところで身なりが綺麗だけどお風呂に入ったの」



「はい、契約の前にお風呂と洋服をいただきました」



「なるほど」


「おれも入ってこようかな」


そういえば、今日の朝は浴場に行ってなかった



「はい、お供します」



「えっ?」



「えっ?」


アイリちゃんが驚き返す



「あぁ…そうだね、いこうか」




宿屋の大型テントの前にいるハンチング帽にチョッキを着た男に話しかける


「風呂2人で入れます?」



「2人なら銅貨12枚だよ、石鹸と手拭いは店で買ってくれ」



風呂料金2人分だが薪は1人分渡された、石鹸1つと手拭い2つ買う


4畳半くらいの布ので仕切られた空間


ドラム缶風呂と水の入った樽が置いてある


ドラム缶の下の火は付いていたので消えないよう薪をたす


ドラム缶の中に水をつぎ足して温度の調節をする


洋服を脱いで盗まれないように荷物は風呂場に持っていく



樽からドラム缶に水を入れて温度を調整しながらお湯を頭からかぶる


石鹸で頭を洗う、上から下へ落ちる泡と石鹸と手拭いで体を洗う


洗っていると…いきなり優しく背中を触られる


「うわっ」っと声に出た



振り向くとアイリちゃんが裸で立っていた


薄茶色の肌、張りのあるツンと上向きのおっぱいを隠さないで立っている


掌で下から持ち上げるとしっかりとした存在感を感じる


息を漏らすアイリちゃんの顔を見ると、目を閉じて震えている


抱き寄せてキスをする


閉じている唇を舐めながら、ギュッと抱きしめる


しかし、このままでは色々とヤバいので手を借りて賢者になる


まずは自分を洗う徹底的に泡だらけにする


そして一気にお湯で洗い流す…久しぶりに色々とスッキリする


次はアイリちゃんを洗う


先ほどの風呂では石鹸までは使っていなかったような気がするので洗い直しである



「あの、お風呂はいただきました」



「お湯で石鹸使った?」



「いえ、お水でしたがちゃんと洗いました」



「わかった、では頭からお湯をかけるから目をつぶって」



頭からお湯をかけてから石鹸で頭から頭上の耳まで洗う


一度目は泡立たなかったがそのまま全身を手を使って洗った


当然だが手の指と掌で全身をくまなく石鹸で洗う


2度目でも泡立たないが髪の毛と全身を手でくまなく洗う、尻尾も洗う


3度目で泡が立ってきたので泡泡にして全身を洗う


頭は手櫛で頭皮と犬耳をゴシゴシと洗い耳の内側も手拭いで洗う


顔も首も腕も手も指も鎖骨も胸もわきもおっぱいもお腹も背中も脇腹もお尻も


股も太ももも脛も足も指も尻尾も洗った表も裏も余すことなく洗った


ドラム缶のお湯と樽の水も使い切る


手拭いで体の水分を取り着替える


とりあえずはアイリちゃんに自分用に買ったばかりの下着と洋服を着せる


男装もなかなか可愛い



食品を売っているテントで常温の煮出し茶と肉の串焼きを2つ買う


テントの外で待っているアイリちゃんに1つずつ渡す


タレたっぷりの肉の串焼きを平らげて串をゴミ袋に入れる



「はい、どうぞ」


アイリちゃんが串焼きを差しだしてくる



「いや、食べて飲んで」



「はい、ありがとうございます」


まわりを見ながらチビチビ食べ始める




飲み終わったマグカップを回収して返却する


キャラバンのお店を見物してから、町の武器屋に向かうとする






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