第7話 ブレオテ町.3


食堂「ねこ×3のにくきゅう亭」



店内のテーブルは半分ほど埋まっており


カウンターでも何組かの冒険者が食事をとりながら会話をしている


テーブルに着くと猫人族の女の子がお盆にマグカップを乗せて持ってやってくる



黄色の瞳に白い肌と肩までかかる毛先が細目で外にはね気味な黒薄茶色2色の髪


控えめな胸と腰からお尻とそこから延びる尻尾のラインがとてもとても美しいです


16か17歳くらいの白黒薄茶三毛猫人族、耳と尻尾が猫のコスプレ系獣人の女の子


この世界に来てよかったと心底思う



マグカップをテーブルに置く


「いらっしゃいにゃ」



”にゃ”って言いましたよ、”にゃ”って



「エルネ、オススメを2つお願い」


ミリアちゃんが答える



「うけたまわりっにゃ」


エプロンドレスをふわりと、尻尾をゆっくり振りながら厨房に戻っていく


すばらしい、とてもとても素晴らしいです



「あの」


ウエイトレスさんを見ているとミリアちゃんに呼ばれていた


紺碧の瞳で上目遣いに覗いてくる、とてもとても大きな胸がテーブルに乗っている


凝視してると通報されそうなので正面から見れない



「はい?」



「まずは報酬ですが、今日は24匹でしたので半分の銅貨96枚です」


お金袋をテーブルの上に出す



「いえ、午後からですから銅貨だと64枚かと」



「いえ、今日からのパーティですから受け取ってください」


お金袋をこちらの方に指で押してくる



「わかりました、ありがたくいただきます」


お金袋をポーチにしまいながら考える



こんなに稼ぎが良いのに何で不人気なんだろう?


虫はわかるが、安全に稼げるのに



「あの」


考えてたら呼びかけられる



「はい?」



「今後なのですが…あの、その…いかがでしたか?」


不安げに問いかけてくる



「思ったより稼げるのに驚きです」



「はい…いえ、あの…そうではなく」


下を向きながら呟く



「オススメおまたせにゃ!」


空気を読んでか読まずか、オススメが2つテーブルに並べられる


干したニジマスをオリーブオイルに浸しタマネギとニンニクと黒胡椒で風味を付けオーブンで焼いた料理


ライ麦パンが2つ入った籠もテーブルに置かれる、料金を払って食べるとする




「あの」


食後のお茶にマッタリしていたら呼びかけられる



「はい」



「今後の事ですが…あの、パーティを組んでいただけるのでしょうか?」


不安げに問いかけられる



「はい、もし宜しければ」



「そうですか…ありがとうございます」


ホッとしたようである



沈黙が続くが会話が思いつかないな




「あの…お聞きしても?」


不安げに問いかけられる



「はい」



「使っていた魔法ですが…詠唱しているようには見えませんでしたが?」



「ああ、頭の中で詠唱すれば口に出さなくても良いみたいですよ?」



「そうなんですか?」


不思議そうに見てくる



「ええ、イメージさえしっかりできていれば大丈夫だそうです」



「イメージですか」


考え込む



「そう習いました、はい」



「そうですか」


考え込む



「あの、魔法の本とか巻物は何処かで見れたり、売ってたりします?」


ミリアちゃんに聞いてみる



「小さな町ですから…初級のモノでしたら冒険者ギルドで売っていますが?」



「ありがとうです、明日の朝にでも聞いてみます」


「自分は魔法は師匠に教わっただけで他の人がどうしてるのか知らなくて」


「もしよければ、わかる範囲でいいので教えて貰えれば助かります」



「そうですか、私で知っている事なら喜んでお話しします」



「よろしくお願いします」



魔法の基本はシスの言ってたように呪文とイメージではあった


魔術師は魔法の書や巻物で魔法の名前や効果そして呪文を学ぶそうだ


そして現象をイメージしながら呪文を詠唱して魔法が発動されると



俺はイメージで呪文を手に入れている…転生者ですからとシスは言っていた


魔法の発動は現象のイメージと魔法に付けた名前を切っ掛けに発動している


ある意味同じである、呪文詠唱とはイメージするための集中と切っ掛けであると


これならば納得である



武器や防具に関しては制約はないらしい


使えるなら武器や防具の制限はないとの事である


武器や防具は筋肉の問題なのであろう



「それで」


「それで、マサトさんは魔法をどれくらい使えるのですか?」



「魔法は一通りは使えると思います」



「いえ、使える種類では無くて…数です、回数」



「えーっと、回数は行って帰ってくる位は問題ないかと」



「それは30階までですか?」



「そうですね、それくらいかと」



「そうですか」


「あと」


恐る恐る聞いてくる



「はい?」



「行けるところまで階層を進みたいのですが?」



「行けるところまでというのは?」



「行ける所までです」



「それは帰りの安全も含めた行ける所までですよね?」



「それも含めてで…自分が何処まで進めるか知りたいんです」



「危険でなければいいと思いますよ」



「ありがとうございます」





翌日からダンジョンの階数を進める



討伐依頼ダンジョンは冒険者ギルドでマップが販売されているので購入する


ナメクジを超えて、ヒルを超えてダニを超えて進む


ダニはそれなりに素早かったが攻撃は直線的なのでわかりやすかった



盾を構え前進するアイリちゃんに1メートルほどのダニが素早く近づく


盾に向かってくるダニは盾に弾かれ飛ばされ


剣側のダニはカウンター気味に突き出された剣に貫かれる


貫かれたダニをファイアで燃やす


弾かれたダニも素早く、しかし真っ直ぐにアイリちゃんに突き進む


盾を構えてダニにカウンターを合わせて剣を突き刺す


アイリちゃんが更に3度差してダニは魔石に変わる



ノロマのナメクジやヒルとは違ってダニは少し疲れたのか6階でUターンする


次回からは魔法を多めに使おうと考える




そして最初の壁は2日目、7階で登場したハエであった



ボスの部屋には1メートルほどのハエが2体いた


ミリちゃんは盾を構え前に進む


ハエが気付き、羽音を唸らせて飛び立つ


盾を構えるミリアちゃんの周りを飛行するハエ


一匹が盾に取り付き消化液をまき散らす


もう一匹は背後から取り付こうとしている


背後のハエにカッターを使い羽を切り裂くとハエは地に落ちた


落ちたハエに続けてカッターで3度切りつけると魔石に変わった


ミリアちゃんは苦戦中である


盾から離れないハエを振りほどこうとしているが振りほどけない


盾の前面部に火魔法のファイアを発動しハエを焼く


ハエは腹を焼かれ仰向けに地面に落ちる


ミリアちゃんが上段から剣を打ち下ろしてハエは魔石に変わる



「大丈夫ですか?」



「ありがとうございます、大丈夫です」


消化液を手拭いで拭う、手拭いが変色する



ヒールの魔法をミリアちゃんの全身に掛ける



「ありがとうございます、何でもできるんですね」



「魔法使いですから」



「魔法使いですか?」



「いや、最初の頃はよくわからなくて」


「職業を魔術師じゃなく魔法使いって言ってたんですよ」


「笑われてしまいましたよ」



「そうなんですか、魔法使いですか…確かに、それは面白いですね」


「でも、魔法使い…いいと思いますよ」


ミリアちゃんがニッコリ笑ってくれる



ハエの後は進むのを中止して戻りながら魔物を討伐する


本日の成果は7階31匹である



ギルドに戻って換金後にエルネちゃんのお店で夕食とする




食堂「ねこ×3のにくきゅう亭」



白黒薄茶三毛猫人族のエルネちゃんの働いているお店である


早めの夕食の為まだ混んでいなかったが席の半分は既に埋まっていた


テーブルに座るとエルネちゃんがマグカップをもってやってくる



「2人ともオススメで良いにゃ?」


他の猫人族の話声を聞いたが”にゃ”を付けるのはエルネちゃんだけである



「はい、お願いします」



「しかし、続いてくれてよかったにゃ」


「ミリアにゃんがいつも1人で食事してるのは可哀そうだったのにゃ」


「末永く助けてやって欲しいのにゃ」



「そのつもりですよ」



「もう、エルネはいいから向こうにいって」


ミリアちゃんとエルネちゃんは、仲の良い友達なのである



オススメのマスのムニエルをライ麦パンでいただく


食後には反省会である



「やはり飛ぶ相手は厳しそうですね」



「空中の相手は経験がないので」


「しかも回り込む敵も初めてでした」



「しかも、盾に取り付くし」


合の手を入れる



「はい、まさか取り付かれるとは思ってなかったです」


「でも、次からは壁にぶつけて潰しちゃいます」


「プチっと」


笑顔のミリアちゃんである



「プチっと、ですか」


苦笑いである




「でも、本当に助かりました」


「1人では階層は進めませんから」


「これからも、お願いしますね」


ミリアちゃんは嬉しそうである



「それはいいですが、やっぱりメンバー欲しいですね」



「ギルドに募集はしていますが…残ってくれたのはマサトさんだけです」



「後は装備の充実か…レベルアップですよね」



「私も技か強化魔法が使えればいいのですが、力不足ですいません」



「いえいえ、前衛として十分やってますよ」



とは言え、人手か強化か



(シス、よくあるチートのメンバー強化とか出来ないのかな?)



(はい、よくあるチートはわかりませんが仲間の強化はできます)



(能力やスキルの変更とかジョブの変更が出来たりするのかな?)



(いえ、能力やスキルの変更はできませんが職業の変更は名乗ればできます)



(名乗るとは?)



(はい、戦士と自分で名乗りまわりが認知すれば職業は戦士です)



(職業による特有の効果などは?)



(はい、名乗る職業の依頼を受けやすくなると思われます)



(特殊な効果とかスキルとか得られないの?)



(はい、職業による特殊な効果もスキルも得ることもありません)



(なら、強化とは?)



(はい、持っている武器の強化です)



(エンチャントとか?)



(はい、付加による強化です)



(なるほど…それしかないか)


(エンチャントされた道具は一般的なのかな?)



(いえ、古いダンジョンに存在するだけですので希少です)



(例えば短剣に火のエンチャントならお幾らくらいになるかな?)



(はい、火の魔法の強さによりますが、最低価格は白金貨1枚位かと思われます)



(思ったほど高くない気がするけど?)



(はい、希少ですが存在しますので、豪商や貴族の中にはコレクターもいます)



(ふむ)



「マサトさん?大丈夫ですか?」


心配そうに俺を見る



「あーはい、考え事してました…人員を雇えないかとか」



「依頼はお金が掛かります、討伐まで考えたら幾らあっても足りないくらいです」


「何年も依頼するくらいなら戦闘奴隷を買った方がいいくらいです」


「買うお金もありませんけどね」



「奴隷売買が有るんですか?」



「お金持ちの商人や貴族の方が売買しています」


「裕福な冒険者も奴隷を連れている人も居ます」


「でも奴隷は高いですよ?」



「幾ら位なモノなんです?」



「よくはわからないですが、最低でも大金貨以上だと聞きました」



「なるほど、この町でも売買しているんですか?」



「いえ、大きな町にしか奴隷商はいません」


「それ以外はたまに来るキャラバンが連れているくらいです」



「なるほど」



(よし、いつか必ず大きな町に行って獣人コスプレ美少女を買おう!)



「キャラバンなら来ているのにゃ」


「南の門に一昨日くらいからきてるにゃ」


「行ってみるがいいのにゃ」



「それは、行ってみたいですね」



「でも、明日も朝からダンジョンに」


ミリアちゃんがボソボソ言う



「ダンジョンは何時でも行けるのにゃ」


「キャラバンはめったに来ないのにゃ」


「マサトさんに何か買ってもらうにゃ」


「エルネは甘い物が欲しいにゃ」



「それはエルネが欲しいだけでしょ」



「ミリアも買ってもらうにゃ」



食事を終えてミリアちゃんを家に送る


ミリアちゃんは冒険者ギルドの2階に下宿している


もともと住んでいた家は騎士団の宿舎だったそうである


お父さんが死んで宿舎を出ることになって行く当てがなかったところ


カミーユさんの好意で住ませて貰ってると言っていた


武器防具も冒険者ギルドからの借りものだとか



ミリアちゃんを送ってから宿屋に向かうとする




宿屋「あの夏の熊街道亭」



「ただいまです、本日もお願いします」


カウンターのおかみさんに話しかける



「あいよ、ネイサンから伝言があるわよ」


「後はよろしくだってさ」



「えっ?宿を出たんです?」



「今日の朝で引き払って依頼で数日出てくるって言ってたわよ」



「そうですか、ありがとうです」



2階の部屋に入り寝支度を整えてからベットに横になる



(シス、奴隷は契約魔法なの?)



(いえ、神を介した契約となります)



(では、使えないか)



(いえ、教職者となれば使えます)



(ほう、神を介した契約とは?)



(はい、教職者の立会いの下、双方合意の契約書に両者がサインをします)


(この契約は神の加護によって守られます)



(契約を守らない場合は?)



(はい、契約には制約も付けられます)


(制約を破ろうとするとあらゆる苦痛が生じます、最悪は死に至ります)


(制約を課せられた者は額と喉と胸と両手と両足に契約と制約の種類によって紋が浮かびます)


(制約を受けたものは2重に契約することはできません)



(ん?奴隷は1人まで?)



(いえ、奴隷の契約は奴隷に制約が課せられるものですから主人には制約はありません)



(契約によっては、制約は片方と両方の2種類あると?)



(いえ、制約を付けない契約もありますし2人以上への制約もできます)



(1回で2人以上との同時契約が出来て制約される人の数も選べると?)



(はい、そうです)



(紋を消すには?)



(はい、教職者の立会いの下、解約を行います)



(奴隷の主人が死んだら?)



(はい、主人の死の種類によって殉死や相続や開放などあります、神の采配となります)



(そうか)



そうか…なんか、なんか眠れなくなってきた


まだ見ぬコスプレ系獣人の美少女との出会いに心を躍らせる


お金貯めないとだ





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