第5話 ブレオテ町.1
ジュルク村を出て途中休憩をはさんで、馬車に揺られて…昼頃に
ブレオテの町が見えてきた
ブレオテの町は大麦畑に囲まれた石作りの街並み
2階建ての建物が立ち並び中央広場には3階建て相当の高さの教会まである
町の入り口には自警団の歩哨が1人立っており町の出入りを監視している
「ブレオテにようこそ」
ネイサンさんがお道化たように両手を広げる
赤茶色のミディアムショートの熟練前衛戦士風である
「冒険者ギルドで登録するんだろ?」
弓使いのディノさんが馬車を下りながら言う
カールの入った金髪のミディアムショートで猟師風である
「はい、できれば」
「リヨンのお墨付きがあるからな、大丈夫だ心配するな」
両手剣持ちのニックさんも太鼓判を押してくれる
ストレートロングの灰色の髪、イケメン細マッチョである
「はい、ありがとうございます」
「じゃー俺は馬車を返してくる」
御者台のアーティーさんは馬車を返却しに行った
自然なボサボサ赤髪の村人風だが、熟練戦士である
馬車を下りてネイサンさん達と冒険者ギルドに向かう
冒険者ギルドは小さな役場の様な感じであった
室内は何人かの冒険者が居た
掲示板を見ているもの
張り紙を見ているもの
ベンチに座ってカウンターの職員を見ているもの
立ったままウロウロしているもの
受付カウンターの中では職員の女性が2人ほど働いていた
受付の職員が番号よ呼ぶとウロウロしていた男がカウンターに向かう
ネイサンさんが別の女性職員に声を掛ける
一言二言会話して戻って来る
女性職員は一礼して奥の扉に消えた
チラリと張り紙を見ると”最新版~ダンジョン情報~”と書かれていた
”人気ダンジョンランキング”とか”ダンジョン別攻略法”などの見出しが見える
掲示板には紙が幾つかピンで留められている
ギルドの依頼票である
調査&討伐依頼に納品依頼と護衛依頼や労働依頼などなど…普通に職安です
定番の野草の採取依頼は無く、野草は常時買取していると書いてある
安いもので野草1枚で銅貨1枚から銅貨5枚である
討伐依頼も魔物を倒して魔石を手に入れれば魔石は常時買取のようである
魔石Fで銅貨8枚で魔石Eで銅貨16枚と書いてある
この世界は魔物は倒すと魔石になるとディノさんに教えてもらった
魔石F1つで野草8枚分は高いのか安いのか、わからん
「マサト、こっちだ」
ネイサンさんに呼ばれる
振り向くとネイサンさんはカウンターの中に居る
「こちらにどうぞ」
女性職員に奥の部屋に案内される
部屋は机を挟んで椅子に座ったダンディーなおっさんがいる
銀髪ショートオールバックで眼鏡である、中衛か後衛系であろうか
ストライプのスーツを着ている、脳筋ではなさそうだ
冒険者ギルドの支部長のようである
「初めましてマサト君、話は聞いている…協力ありがとう」
「はい」
「それで今日は何の用事で?」
「マサトのギルド登録をしに来た」
ネイサンさんが代わりに答えてくれる
「登録なら受付で出来るだろ?」
「そうだが、マサトの故郷が分からない」
「それで?」
「リヨンが保証人になると言っている」
「なら、それでいいだろう」
「では、そういうことで」
「私は何も聞かなかった」
「じゃー以上だ、邪魔したな」
「ネイサン、また、明日から、よろしく、お願いします」
やけに強調する
「あ…ああ」
ネイサンさんはうんざりしたように右手を上げてドアを開けて出ていく
会釈してからネイサンさんに続いて出ていくところで支部長から声が掛かる
「これから、よろしく」
「はい、よろしくお願いします」
もう一度、会釈してから扉を出る
扉を出るとネイサンさんから用紙を貰う
「名前を書くだけでいい」
「はい」
マサト、とだけ名前を書いて渡す
ネイサンさんは用紙を受け取り女性職員と話している
暫くして職員の女性に呼ばれたのでカウンターに向かう
カウンターの上に銀色のネックレスがが置かれていた
ギルドカードじゃないのか
ネックレスについている銀のプレート
「冒険者ギルド証」「冒険者ランク:F」「名前:マサト」の文字が書かれていた
書類に書いた内容はデータ化されてるのかな?
血をたらしたり、魔力込めないのかな?
などと考えていると説明が始まった
冒険者ギルドは冒険者を支援する団体で国を超えて運営されていますとか
身分は自由民であるので納税は冒険者ギルドに収める形になるが実際のお金のやり取りはしないとか
自由に冒険者ランクに見合った仕事をしてもらう形ではあるが、指名依頼や月の最低ノルマがあるとか
冒険者ギルドの裁量で違法と判断された場合は降格処分や除名処分されることもあるとか
ギルド証の再発行はお金がかかるとか
素材の解体と買取を行ってるとか
希望があれば講習会もやってるとか
町や村の人に迷惑をかけないようにとか
むやみに喧嘩をしないだとか
身だしなみに気を付けなさいとか
色々教えてもらいました
説明が終わり、登録料を払い貰ったギルド証を身に着ける
「よろしくお願いします」
職員の女性が丁寧に頭を下げる
「よろしくお願いします」
答えてネイサンさんの所に行く
「おめでとう、これで今日から冒険者だ」
ネイサンさんが歓迎のポーズを取る
「今日は宿を取って必要なものを買い集めろ」
ディノさんが言う
「夜は歓迎会だ…宿に行くぞ」
ニックさんが外への扉に向かう
宿屋「あの夏の熊街道亭」
「おかみさん、新人だ…よろしく頼む」
ネイサンさんがカウンターの女性にに声を掛ける
背が低めなふっくらとした体格、赤茶色の髪を頭の後ろでお団子にしている
「あいよっ、まかせなさい」
おかみさんは胸をドンと叩いて答える
「じゃー夜に、この食堂で」
「また」
「あとでな」
ネイサンさん達は部屋に入っていく
見送っているとおかみさんが話しかけてきた
「大部屋は1泊で銅4枚、いまは2人ほど先客が居るよ」
「毛布は銅1枚で貸出、水差しと水桶はセットで銅2枚で貸出だよ」
「獣蝋燭が一本サービス、水は裏の井戸を自由に使っていいよ」
「食事は食堂が明いている時間なら銅6枚でいつでも食べれるよ」
「他の冒険者とは揉め事は起こさない、これがルールだよ」
大部屋は盗難が怖いよな
「うーむ…1人部屋は無いですか?」
「あら、お金持ちなんだね」
「個室は1泊で銀貨3枚で、ベットは2つ付いているよ」
「毛布2枚と水差しと水桶の1セットと獣蝋燭1本サービスだよ」
「ちょっと考えさせてください」
「あいよ、決まったらよんどくれ」
厨房に入っていく
(シス、貨幣のレートは?)
(はい、銅貨10枚に対して銀貨1枚です、さらに銀貨10枚に対して金貨1枚です)
(10倍か、その上は?)
(はい、金貨10枚で大金貨1枚です、さらに大金貨10枚で白金貨1枚です)
盗賊の討伐報酬で貰ったのは金貨20枚
悩むが仕方ない
「すいません」
厨房の奥に声を掛ける
「決まったかい?」
手拭いで手を拭きながらおかみさんが出てくる
「個室でお願いします」
「あいよ、銀貨3枚だよ」
毛布2枚と水差しと水桶の1セットと獣蝋燭1本を貰って部屋に案内される
部屋は2階の角部屋、奥の2部屋はネイサンさん達だそうだ
部屋にはベットが2つ、藁の布団が敷いてある…枕も藁だ
棚に水差しと水桶を置いてベットに入る
紙とペンが欲しい
必要なモノか
仕事次第か…1泊で銀貨3枚は銅貨30枚で野草なら30枚と魔石Fなら4個
食事が…銅貨6枚だから3食で銅貨18枚で野草なら18枚と魔石Fなら3個
トータルだと1日で野草が48枚で魔石Fなら6個必要と
これを毎日出来るのか?
取りあえず冒険者ギルドに行こう
冒険者ギルドで掲示板を睨む
労働依頼は…ファンタジーで肉体労働は最後の手段だよな
護衛は無理だよな…信用無いしな
納品依頼は…ランクがE以上か
調査&討伐依頼は…ランクE以上か
やはり野草探しながら弱い魔物倒すしかないか
張り紙のダンジョン情報を見る
ダンジョンなら魔物は確定だよな
ふむ…やはり魔石狙いでダンジョンか
カウンターに向かい職員の女性に声を掛ける
明るめの茶色の髪をショートボブにカットした活発そうな綺麗可愛い女の子
ギルド職員のタイトなシルエットの制服が少し凛々しさを感じさせる
「はい、なんでしょう?」
書類から顔を上げて対応してくれる
「今大丈夫ですか?」
「はい、なんでしょう?」
「一番近いダンジョンは何処でしょう?」
「それなら、北門を超えた大麦畑のダンジョンです」
「おお、近い…難易度はどれくらいです?」
「ダンジョンは初めてですか?」
「はい」
「では、こちらの用紙をどうぞ」
足元の引き出しをゴソゴソする
”初めてのダンジョンの手引き”と”ランクC 大麦畑のダンジョン”をくれた
「ありがとうございます」
壁のベンチに座って内容を読む
”初めてのダンジョンの手引き”
ダンジョンには種類が幾つか存在すると書いてある
魔物ダンジョンと精霊ダンジョンがあるとか
地上型は横と上に向かう、地下型は横と地下に向かうとか
ダンジョンは成長していくとか
魔物や精霊がダンジョン内に生まれるとか
階層ボスを討伐して階層を奥に進むとか
奥に進むにつれて敵が強くなるとか
魔物も精霊も倒すと消えて魔石や精霊石を残すとか
ダンジョンコアを壊すと魔石か精霊石に変わるとか
表示のランクの説明もあった
魔物や精霊の強さは大人何人分の強さで評価されていた
Sで128人でAで64人でBが32人でCで16人でDで8人でEが1人らしい
Fはいわゆるザコ、半人前であると
ダンジョンランクは階数や最終ボスなどで評価されるらしい
Sが神話級でAが伝説級でBが物語級でC達人級でDが熟練級でEが一般らしい
必要な道具としては
聖水・野営準備・食料・各種治療薬・各種状態異常回復薬
人数としては、最低でも2人からが推奨と書いてあった
”ランクC 大麦畑のダンジョン編”
10年前に地上に現れた地下階層型の魔物ダンジョン
討伐依頼ダンジョンで報酬は現在、金貨300枚
現在の階層は30階(下層15階・中層10階・上層5階)
最高到達階層は30階(ボス未踏破・ダンジョンコア未破壊)
ダンジョン入場無料
下層15階では魔石ランクFの魔物が1-3体出現
階層ボス部屋は魔石ランクEのボスが1体出現と魔石ランクFの魔物が1-2体出現
ジャイアントリーチ・ジャイアントティック・ジャイアントフライ・ジャイアントフリー
ジャイアントモスキート・ジャイアントスラッグ
中層10階では魔石ランクEの魔物が1-3体出現
階層ボス部屋は魔石ランクDのボスが1体出現と魔石ランクEの魔物が1-2体出現
ジャイアントアント・タイガーモス・アイアンビートル・ジャイアントスパイダー
ジャイアントコックローチ・ジャイアントビー
上層5階では魔石ランクDの魔物が1-3体出現
階層ボス部屋は魔石ランクCのボスが1体出現と魔石ランクDの魔物が1-2体出現
ジャイアントセンチピート・ジャイアントスコーピオン・ポイズンホーネット
確認されているボスはキラーマンティス
虫だらけであった…虫ダンジョンのようである
討伐寸前なのかな?
討伐報酬は金貨300枚か
出現が1体なら試しに行ってみようかな
しかし、虫か
でも、6体倒せれば…行ってみるか
カウンターに戻り先ほどの職員の女性に声を掛ける
「すいません、よろしいですか?」
「はい、なんでしょう?」
書類から顔を上げて対応してくれる
「大麦畑のダンジョンについてなんですが」
「行ってくれるのですかっ?」
顔がパァッっと嬉しそうに変わる
「えっ?はい…行ってみようかと」
「ありがとうございますっ」
「討伐依頼ダンジョンなのに人気が無くて困ってたんですよー」
「何せ虫ですからね、私も苦手ですし」
「虫が大丈夫な人が居てくれると助かりますっ」
「それで、パーティメンバーは?」
急に気軽な感じに早変わりである
「あー1人です…すいません、試しに覗いてみようかと思いまして」
「…そうなんですか」
「1人の方もたまにいますが、パーティ推奨ですよ?」
「もし宜しければパーティに入ってみます?」
「ちょうど大麦畑のダンジョン討伐のパーティ募集がありますが?」
今度はガッカリな感じに早変わりである
「それは30階まで行ってる人達ですか?自分初心者なんですが?」
「いえ、別のパーティですよ、まだ下層ですね」
「詳しい内容は募集掲示板に募集票が貼ってありますよ」
「募集掲示板?」
「はい、依頼掲示板と告知の張り紙の間にありますが…なかったです?」
「なかったかと」
「あら?」
「明日の朝に来ていただければ紹介しますが、どうします?」
「そうですね、お願いします」
「はい、では明日の朝にお待ちしております」
笑顔で送り出してくれる
カウンターを出た後に募集掲示板を探す
大きい掲示板と小さい掲示板
大きい掲示板には依頼票、小さい掲示板には何もない
小さい掲示板が募集掲示板かな?
お約束では下に落ちているはずだが
あった
床の上を探していると奥の隅の方に紙が落ちていた
黄ばんだ紙、文字は色あせていたが内容は読める
パーティ募集
募集者、ミリア
目的、大麦畑のダンジョンの討伐
報酬、人数の均等分け
パーティ構成、戦士
希望職、やる気のある人、ナンパ目的でない人
職種は問いません、短期でも構いません
よろしくお願いします
募集掲示板にピンでしっかりと貼りなおす
”ナンパ目的でない人”ここは書き足されたかのようにインクの色が違う
そして丁寧だが男の文字に見える
うーむ…読み取れるのは女性で真面目なタイプかな?
戦士か…なら、軽装でいいか
武器屋と防具屋に行ってみるかな
武器屋と防具屋は冒険者ギルドの並びに有る
武器屋には武器が並んでいる…当然なのだが
壁に掛けられている笑いが出る程の金額の、ド派手な武器を一通り眺めてから目を下ろす
棚に並んでいる武器を見る…が、やはりお高い
短剣ですら金貨1枚を下回る物は無い
普通の剣に至っては2ケタはする
カウンターで眠そうに大欠伸をする筋肉もりもりの店員を尻目に店を出ようとしたところ
「スゥーパァーセール」と書かれた木の板が見えた
「この出物は素晴らしい!」
「!!!超大特価!!!」
「人生で2度と無いお買い得品!!」
ポップが踊っている
店内の隅に置かれた樽には色々な種類の武器が乱雑に差してあり
剣に槍に斧に…一通りそろってはいる
冒険者たちが買い替えた際の引き取り品…中古である
長物がいいけど防御がな
片手剣か短剣か
重さ的には短剣だよな
しばらく悩む
樽の中から肘までの長さほどの片刃の鉈の様な形の短剣を引き抜き軽く素振りする…君に決めた!
短剣を手に取り筋肉店員の所に持っていく
黒髪短髪刈り上げにハチマキを撒いた筋肉もりもりの若者である
中古品は研いでないと言われたので研ぎも合わせて注文する
研ぎと鞘も注文して料金を支払う、防具屋に行く旨を告げて店をでる
防具屋には防具が並んでいる…当然である
まずは展示されている目玉の飛び出そうな値段の一式装備を眺める
ビキニアーマーがある事に感慨深く思う
別売り装備のコーナーを抜け部分装備で小手と脛当てと盾を見る…やはり、お高い
金属系は金貨が2ケタ、木や革製でも金貨枠である
こちらの「スゥーパァーセール」は何処かなと店内を見まわし
「この出物は素晴らしい!」
「!!!超大特価!!!」
「人生で2度と無いお買い得品!!」
どこかで見たようなポップを見つける
こちらは装備が乱雑に放り込まれた木箱が幾つか壁の隅に並べられていた
木箱の前にしゃがみ込んで物色を開始する
さて…盾に小手に脛当てに帽子、余裕があれば胸当てかな
小手と脛当てと帽子はリネン製であるが樹脂と所々薄い鉄で補強されている
円型の盾は木製で50cmほどの大きさで樹脂と鉄で補強されていた
胸当ては断念
カウンターの赤いワンピースの店員に声を掛ける
装備の代金を支払い店を出て武器屋にもどる
武器屋に戻りカウンターの筋肉店員に声を掛ける
カウンターの下から短剣と鞘を出して渡してくれる
筋肉店員にお礼を言って、店を出る
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