第1章 3-3 竜の息吹
「おまえさあ」
「はッ!?」
「あんなんでびびってんの?」
「ハアア!?」
何を云ってるのか、一瞬、混乱した。
「あんなもん、オレが本気だす相手じゃねーから。そんなのもわかんねーのかよ」
「な……」
バ、バ、バ、ババ、バッ、バカにしてえーッ!!
「なんでもいいから、そんなに強いんだったら、軽くやっつけてよ!!」
「だからよー」
「なに!!」
「やっつけんのはおまえ。オレはおまえの道具」
あー、もー意味わかんない。意味わかんなさすぎ!! 興奮して、目が回ってきた。
と……。
人狼がこっち見てる。バレた。しかも。
「あ……!!」
人狼の後ろから、なんてこと……三匹も同じようなのが出てきた。……ぜんぶで四匹もいるじゃん!!
「聴いてないよ、
見ると、雷がいない。そんな……。
人狼が動いた。
「ゾン!」
さすがに肝が冷える。ゾッとした。速い! 四匹がいっせいに向かってくる。それも、途中から二手に別れて、二匹がゾン、二匹がゾンを避けてあたしへ向かってる!
「こいつら……!」
狩り蜂を知ってる!?
「……動け、
あたしが涙目で叫ぶと、酔っぱらいみたいにふらりとゾンが動いた。
ボッギャアアア!! ゾンビとも思えないスピードでゾンがドラゴンへ変身もせずに人狼を殴りつけると、紙屑みたいに人狼がクシャクシャにひしゃげて、道路の向こうまで五十メートルくらいもぶっとんでそのまま海へ落ちた。そして殴った右腕へ踊りかかったもう一匹も、左手で首根っこを鷲掴みにして、そのまま大きく振りかぶるとおもいきり地面へ叩きつける。
「ギャンン!」
犬みたいな声で人狼が鳴いた。それを容赦なく、恐竜並の脚でふみつける。ドッ、バギシャ! いやな音がして、どす黒い血と内臓がはみ出て道路を濡らした。そのまま、人狼が黒い煙となって蒸発する。
その間にも、二匹があたしめがけてすっ飛んでくる。バイクでも向かってきてるのかという速さだった。とても、ゾンじゃ間に合わない。そう思った。
(死んだ。早かったなー)
引きつって、涙目で笑ってしまった。なんで、ゾンなんか出ちゃったんだろう。何も出なかったら、ふつうの人生だったのに。
さよなら。ママ。パパ。うらむぜ、ババアー。
グボォアアアア!! あたしが真っ赤な炎に包まれる。炎は渦を巻いて、竜巻となって電柱より高く立ち上った。
「ギャアアン!!」
人狼が火達磨となってアスファルトへ転がった。あたしはなんともない……。
見ると、ゾンが火の塊を吐いたのだ。ブスブスとその竜人の口や、喉や鼻の穴から煙が上がってる。こんなの、初めて見た。ドラゴンだから火くらい吐くんだろうけど……強力すぎない? それに、マジであたしはなんともないし……。
ズシ、ズシとゾンが歩いてきて、まだ道路でジタバタと悶える人狼を虫でも踏みつぶすかのように踏みにじった。人狼は、たちまち燃え尽きて消し炭となり、黒い障気が海風に舞って消えた。霊的な存在は、霊の炎でまるで油を染みこませた人形のように燃えてしまう。それは、聖邪に関係がない。
「……もう一匹は!?」
周囲を見ると、雷がそのゴステトラで逃げた人狼をとらえていた。初めて見た。雷のゴステトラ。
「なんだ、ありゃ。オレの……お仲間か?」
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