第1章 2-3 ゴステトラ遣い
ウチ……本部道場の入門資格と段位は江戸時代のそれをいまだに踏襲してるので、他の支部より単純だ。
まずゴステトラ遣いと認定されると、仮入門が認められる。あたしは、さっきまでここ。
実戦で土蜘蛛を三体倒すと正式に入門が許可されて、正式な狩り蜂となる。←いまここ。
七体倒すと「
十三体倒すと「
二十五体倒すと「師範代」になる。
四十九体倒すと「免許」になる。武道とかでいう、免許皆伝ってやつ。
道場で「免許」になると、国家資格としての「狩り蜂」になってプロとしてお金を稼げるし、役所や民間会社の狩り蜂として就職できる。かなりお給料は高いみたい。お給料のほかに、ウチからも報奨金がでるし。
仕組みは簡単。仕切り直しじゃなくってトータルだから、あたしはあと四体倒せば紙切になる。でも……そうは云っても四十九体の土蜘蛛を倒すって、よっぽどだから! 勝手に雑魚ばっかり倒したって意味がないから、正式なウチからの出動命令が出た土蜘蛛を倒さないといけない。とうぜん、どんどん相手は強くなる。それを四十九体、死なないで倒しまくらないと免許皆伝にはならない。負けても、生きて帰ってきたらまだチャンスはある。死んじゃったら意味無い。死なないのが大事。
例外的に、すっごい強い土蜘蛛をラッキーでも倒したら、数体分として認められる場合もある。三体分、五体分……記録では、七体分や十体分なんてのも……。滅多にないけどね……。そんなもん、ふつう退治の依頼が来ない。まちがって当たってもふつう死ぬから。そういうのは、やっぱりそれなりにもっと上の、強い狩り蜂が倒す。
一生かかっても師範代で終わる人もいるし、数年で免許になる人もいる。江戸時代から数えて、免許最短記録は一年半。ひいばあちゃん。
それは、強いゴステトラを持つ運と、それを使いこなす才能よね……。
いくら強くったって、あたしみたいな云うこときかないウスラボケのゴステトラが憑いたんじゃ、免許なんて夢のまた夢ってこと。
師範代でもそうとう凄くて、ウチからの報奨金だけで充分に生活できるんだけど、まだ身分は「道場生」だから、やっぱり……なんていうのかな。肩書っていうか、扱いっていうか……免許の人たちとは、雲泥の差がある。半人前というか。お相撲の、十両と大関くらい一気に差がある。って雷が云ってた。お相撲嫌いだからよくわかんないけど。
とにかく、あたしはなんだかんだと三体倒したんだけど、それだけでもうお腹いっぱい。ひいばあちゃんの面目は立てたし、これでいいよ。
免許なんてムリムリ。
3
と、いうわけで、仕事の無いときは学校へ行く。学区が変わったので、ほとんど転校生状態。幸いというかなんというか、ここいらじゃあたしの家はチョー有名なので、みんな遠巻きにしてあまり近よらない。むしろ助かる。気を使ってくれなくてもいいし、こっちも使わなくて住む。でも、そんなあたしに積極的に声をかけてくる空気の読めないのもいるけどね。
「ゆすらぁ、おはよ」
「おはよ」
にぃなは、あたしより少し背が高い。あたしは一四八センチで、ちょっと小さい方なんで、にぃなの背が高いわけじゃないけど。
いつもねむそうな目で、おっとりしている。でも頭はいいんだ。小テストの点数がまじでヤバイ。不思議。
「どお? わるものたいじは」
「悪者って……」
頭がいいのに、一般人の認識って、こんなもん。
「土蜘蛛は、悪者とかそういうんじゃないよ。人間じゃないし」
「でも、もとはにんげんでしょ?」
「そうなんだけど」
「わるいことかんがえてるからぁ、つちぐもになるんじゃないの?」
「うん……」
鋭い。さすが。
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