第二章④:燦派傷華(さんぱしょうか)

 朝鮮人達との戦いで負った左腕の傷は、学校と道場に通いながら日を追って順調に回復していく。そして真也は、数日前からよく真也の自宅前や学校で群がってくる女子20人の中で、真也の目に最も可愛く映ったた友代(ともよ)という名の少女に一目惚れする。

 真也はその少女とは別の子で、中学1年生で荒れ果てていた頃からずっと支えてもらって付き合っていた志歩(しほ)という同級生がいた。その子とは近日別れてしまったのだが、志歩は通っている塾にて真也の写真を見たせたり、普段何をしているのか、どういったことをしてきたのかを時折り喋っていた。その情報が荒川区にまで流れ着き、そこから一目惚れした少女は区を跨いで遠征してきたらしい。そして互いに初対面から好印象だったので、友代とすぐに付き合い始めた。

 交際を続けていくうちに、サンシャインの水族館やお台場等といったスポットへ二人でよく遊びに行くところまで進展する。

 そうした色恋沙汰に関与していくと同時に、真也は道場にて1つの課題に取りかかっている。“柔”というのはどういうものなのか、それを把握する為に石出師範は組手の時間を利用してまず真也の正面にて少し離れた位置に立つ。すると石出師範は物凄い気迫を込めて“柔”の正拳突きをスローモーションで打ち込む。


「スゥーーーッ、ハァ~~ァア”ア”ア”~~!! ……ッツス!!ーーお前も、鼻から吸って口から吐く。ベストキッドでよくあるだろう? ライトハンドだ~、かけ受けで受けろ!」


 石出師範の右正拳突きを、右かけ受けで打ち払うという鍛練である。しかし、真也も同じ呼吸で気合いを込めて力一杯打ち払おうとするが、石出師範の腕はビクともせずそのまま打ち込まれた。

 本来は人体の構造上、どれだけ力を込めていても必ず横から力が加われば動いてしまう。しかし石出師範の正拳突きは、あの人並み外れた真也の腕力を持ってしても、打ち払うどころか一切ブレる事無く真っ直ぐ飛んでくるのだ。


「んだゴレァ”ア”ア”ア”ア”!!? っふぅお”あ”あ”あ”あ”あ”!!」


 互いの前腕がしっかりと密着した状態で、真也が必死に押し払おうとするが変わらずビクともしない。その真也の様子を見て、石出師範はいつも通りニヤついた顔で笑っている。


「どうだよ、これが“柔”だよ」


「っ! これかぁあああ!! これはマスターしなきゃいけない……、石出師範頼みます、ちと今までの組手の時間を“柔”に回してください!」


「いいぞぉ~」


 こうして快く受け入れてもらい、道場に来て必ず行っていた組手1時間の分を、“柔”を習得する為の修行に置き換える事となった。



 年に2~3回ある剛柔流の全国空手大会、そこへ出場する際には確実に同じ道場の門下生と交えることとなる。そしてその門下生の中でも、勝ち上がっていくこと強者だけが残るようふるい落とされていくと必ず対戦相手に当たる人物がいた。その門下生は芸術的に研ぎ澄まされた型で、小学生の頃から何度も優勝している金山友紀(通称:カネちゃん)である。真也はその金山に“柔”の心得による差でいつも敗れていた。


「(いやぁ……、これちっと届くの大変だなぁ……)」


 真也は敗れる度に、金山との差を埋める難関を思い知る。


 剛柔流の全国空手大会は、試合を4つの形式に分けて順に行っていく。午前中に型の部で個人戦、団体戦、午後の組手の部で個人戦、団体戦といった流れである。

 その大会で型の部に出場する以上、真也にとって“柔”の擬人化である金山を打ち破ること。それが人の壁を越える、二重の意味を持つことになる。

 中学2年生の内に出場出来る、その年最後の全国大会に向けて修練を積んでいく。そうして豪地や創にも相当な実力がついて、3人とも順調に修行を重ねていく。しかし、その修練の中で“剛”の方は格段に伸びていくのだが、“柔”の方に伸び悩んでしまう。


「俺、これどうしたら……」


 そう思い悩んでいると、心の奥底に眠っていた生理的本能が突然目を覚ます。


「……一発、ヤるしかねぇな!」


 思い立った真也は、腹を括って友代と会う。


「悪い、ちと漢になる為に……抱かしてくれ」


 そう率直に頼むと、友代は深く頷いて承諾した。そして14歳の冬頃、互いに初めての性を交えた。真也はその経験から、“守るべきものがある”ということを知り、漢としての本能が彼を突き動かすことによって毎週のトレーニングで格段に実力が伸びていった。

 その後も順調に成長している豪地と創と一緒に、三人で石出師範を相手に『回し組手』という修行を積んでいく。回し組手とは、順番に一人ずつ石出師範との組手に挑むことである。

 一番手である真也がまず全力で挑み、一撃も当てられず疲労が溜まりきってブッ倒れそうになるくらいに打ちのめされる。


「よし次、豪地ぃ」


「っしゃあオラァアア!」


 気合いを込めて踏み込むも、真也の時と同く一本も入れられず疲れ果ててノックダウン。


「んじゃ次、創~」


 続いて創も持ち前の並外れた気合いで何度も立ち上がって挑むのだが、これまた2人と同様に相手にダメージを与えられぬままスタミナが尽きてしまう。だが、石出師範の方は全力の3人を相手にピンピンしている。そうして順番が回されてくうちに、3人ともまた相当な実力が伸びていく。


『ここまで来たら、剛柔流空手を世に知らしめてやろうじゃないか』


 3人でそう言い合った後に、真也は金山にも声をかける。


「カネちゃん、俺相当な実力がついたから。見てて分かったっしょ?」


「ね、真也君すごく頑張ってるよね~。俺恐いよ~! 俺、型で負けたくないも~ん、組手で勝ったこと無いのに、型でも負けたら俺カタ(・・)無しだよ~……」


「っはっはっは! いやでもこれは勝負だよカネちゃん! 次の大会で勝負だからね! 俺も負けられない戦いだからさ」


「うん、そうだね。俺ももちろん全力で戦うよ、金冠の座を明け渡す訳にはいかないからね!」


 金山はとても気の優しい喋り方で、真也の闘志をしっかりと受け止めた。



 そうして月日が経ち、全国大会の前日に差し掛かった。そして最後の調整の為に、石出師範と組手を行う準備をする。真也は繰り出す力の強さが重心のバランスを越えて有り余ってしまう為、つい癖で上段回し蹴りやミドルキックを打った際に足の汗ですっ転ぶことがある。その為組手をする際には必ず、濡れ雑巾と乾き雑巾を用意しておくのである。


「あんま派手にやるなよ? 明日大会なんだから」


 そう石出師範に言われるが、真也は一層気合い入れて濡れ雑巾で足の裏を擦り、乾き雑巾でそれを拭い、足首の柔軟をしつつ軽くステップを踏む。


「一本でも良いから、いつでもいいぞ~? 一撃でも俺に当ててみろぉ……!」


「ッシャアア! 今度こそ入れてやるぞォアアア!! ゥオ押ォスッ!!」


 真也はいつも以上の凄まじい気合いを入れて構え、手始めに目線を左右に揺らしてフェイントをかける。左振り打ちや左上段正拳牽制打ち、前蹴りの寸止め牽制といったフェイント技を次々と繰り出していく。そして一気にバックステップをし、そこから隙を突くようにして思いっきり距離を詰めていった瞬間、つるんっとすっ転がってしまった。


「あれ……? 何が起きたんだこれ……」


 疑念を抱きつつも立ち上がってみると、右足に床から電流を流し込まれたかのような激痛が走った。


「ってぇ……、なんだこれ!?」


 右の足裏を見てみると、なんと爪先と親指の皮が全部剥がれていたのだ。3mmほどの皮が剥がれ、それの内層にあるピンク色の皮膚が見えてしまっていた。


「うわやっちったぁ~!!」


「お前バカだなぁ~お~い!」


 真也は石出師範に思いっきり頭を叩かれる。


「あれほど言っただろうが……、大会前に無理するなって言っただろうが!!」


 石出師範は物凄い形相と剣幕で真也に本気で怒鳴った。


「いや……でも石出師範……、俺、石出師範に一本でも取る為に何年掛かってんすかこれ! 生涯貫き通しても、一本も入れられる気がしませんよ!!」


「お前の気持ちは分かるけど! 言ったことは守れ!!」


 真也は初めてそこで、石出師範に本気で叱られてしまった。


「でも大会には出るんだよなぁ? お前の気合いなら」


「出ます!」


「よし、じゃあテーピングをグルグル巻きにしてやっから明日、それで出ろ」


「押忍!!」



 そして大会当日、石出師範の手で例によってテーピングしてもらったのだが、床に足をつけるだけで激痛が走るので右足が殆ど使えない状態だった。利き足がそうなってしまったので、本来なら利き足の右足を軸にして左の膝を上げる猫足立ちを構えるところ、それを逆にして左足を軸に右足を少しだけ前に添える形で構えを取ることにした。

 午前の試合で最初に行われる型の部の個人戦、技を魅せる競技において右足を思いっきり床に打ち付ける行程がいくつもある。それ故、変に浮かせておく訳にもいかず、金山に勝つ為にも真也は気合いで我慢してやり切る覚悟を決める。


「ーーッセヤァアアアア!! エェイッ! スゥーー……ハァッ!!」


 痛みを堪えつつ表情に出さないよう、歯を食いしばって型を進めていく。そうしていく内に、床の右足が触れた部分に血が付着していってしまう。その為、次の番が回ってくるまでの合間に何度もガチガチにテーピングを巻き直す。

 そうして順調に型の部を勝ち進んでゆき、今大会で真の倒すべき相手である金山との一騎討ちが決勝戦で行われた。その決戦において真也が出したのは茶帯(三級)の型である“セイエンチン”、金山が出したのは緑帯(六級)の型“サイファー”である。全国大会で黒帯以外の型を使わないというのは中々見かけない風景らしく、“お前ら黒帯にも関わらず、初心の型でやるのか!?”と周囲の審査員を含め観客席は大盛り上がりで歓声が鳴り響くのである。


「金山……勝負だ」


「あぁ!」


 真也が先攻で全身全霊、今まで積み重ねてきた修練全てを懸けて型を進める。次に後攻の金山も負けじと本気で型をぶつけた。それにより実力がもつれ合い、あまりの誤差に審判達は暫く相談を始める。そして、相談の末に審判の挙げた旗は……真也の旗だった。


「……っしゃあああああああ!!」


 真也は身体中から高ぶる感情が溢れ出し、思いっきり叫び散らす。そして、金山は膝から勢いよく床に崩れて涙を溢す。そこへ真也が近づいてゆき思いっきり抱き締めた。


「これで俺も一つ、壁を越えられたよ……」


「悔しいけど……、おめでとう!!」


「あぁ……ありがとう!」


 金山は精一杯敬意を込めて抱き返す。




 ーー午前の部が終了し、組手の前に昼休憩を挟む。


 組手の部では中学の1~3年の学年別に部が分かれていて、中学3年にはやはり巨体の持ち主が居た。重量別に分けられている訳ではないので、体格の差が大きく響いてしまうのだ。


 そして、今回の組手の部は参加人数的に、約12戦ほど連続で試合を行わなければならなかった。

「おい豪地、創、行けっか? 俺はこの怪我も気合いで何とかすっけど、お前らも何とか獲れよ? 俺らワンツースリーでここで決めんだからな! 分かったか!?」


「ウォオ”オ”分か”った”よ”!!」


 創はいつものように気合い十分に声を張る。そして初戦でいきなり創が試合開始の合図直後に突っ込んで行く。


「ォ押オ”オ”オ”忍!!」


 対戦相手に向かって勢いよく走り込んで行き、相手の防具関係なしに右正拳突きを顔面に打ち込んだ。


「……ちょっと来い」


 真也は創の首根っこを掴んで、場外に引っ張ってゆき控えの場で説教を始める。


「お前よぉ……前も言ったよな? 冷静になって、寸止めでポイント取るんだ分かったか? てめぇホントいい加減にしないとブッ殺すかんなマジで!」


「ごめん分かった、ちと落ち着く!」


「呼吸法を整えろ、教えてもらってんだろ師範から」


「スゥーー! ハァ~~……、スゥーー! ハァ~~……。おし、落ち着いた!」


「頼むぞ創、絶対負けんじゃねぇぞ!!」


 そう創を再び場内へ送り出した後、場外から相手の急所を横から見ながらジェスチャー踏まえてアドバイスを送る。


「おい! 下から入るぞ!! 下突き!!」


 そうやって順調にポイントを取らせて、豪地と創は勝ち進んでゆく。真也も片足状態で立ちながら、石出師範との特訓の成果によって相手の軌道がゆっくりに見え透いている。それに加えて手で相手の狙いを絞るよう煽りつつ、打ち出された正拳突きをかけ受けで流してカウンターで上段正拳突きを決めてポイントを取り勝ち進んでゆく。

 そして中盤辺りに当たった真也の対戦が、身長190cmで両手足が長く手長猿を思わせるようなビジュアルをしていた。


「(手長猿かお前は! こりゃリーチの差がやべぇな~……。俺の手が届く前に向こうの手が先に届いちまうな~……どうしよう)」


 真也は脳内で対策を考えてみるも、全く思い付かない。石出師範は近くの場外で真也を見ながらうろうろしていて、いつもなら真也の様子を察してジェスチャーでアドバイスを貰えるのだが、今回ばかりは様子見で、どういう戦い方をするのか見たかったらしくアドバイスは貰えなかった。なので自力で行くしかない。


「(マジでこのリーチの差どうするよ……)」


 そう思いつつも試合開始の合図をされ、無策で一旦相手に突っ込んで行く。


「ッセャアアアア!!」


 しかし右足の傷でスピード勝負に持ち込むことが出来ない為、待ちの姿勢で相手の様子を伺った。すると相手は持ち前の長い足で前蹴り、前蹴り、前蹴り、前蹴りと延々に同じ技を繰り出してきた。ステップで避けることが出来ないので、身体を反らしたり手で受け流したりと必死に蹴りをいなす。


「ったぁああもう面倒くせぇなァア”ア”! んの野郎ァ”ア”ア”ア”!! てめぇゴラァまともに戦えこの野郎ァア”ア”ア”ア”!!」


「赤、警告」


 真也は恐喝によって審判から警告を受けてしまった。


「暴言は吐かないようにね?」


「あ、すみません……押忍!」


 そして持ち場について直ぐ様対策を考え始める。


「(まずこのクソ手長猿は、常に前蹴りを打ってきやがる。けど何でか知らねぇが、手も長ぇのに蹴りしか打ってこねぇからタイミングも大体分かってきた。これ肘徹(ひじてつ)で足を折るか……、退場させりゃあ良いや!)」


 相手が攻撃体勢に入る前から、“俺は受け身しか取れませ~ん”といった仕草で相手にアピールする。そして相手はニヤけた顔でまた、延々と前蹴りの連打を繰り出す。試合終了時間ギリギリを狙って、打ち出してきた蹴りの膝に目掛けて上段から肘徹を思いっきり振り下ろした。


「ッウォ”エ”ア”ァ”ア”ア”ア”ア”……!!」


 膝を打たれた相手は痛みのあまりに叫び散らして場内を転げ回る。


「おっしゃ決まったぜオラァ……、こりゃ足の甲は粉砕骨折だわ。っしゃあ……」


 相手は真也の思惑通り試合を棄権し、退場していった。そして部は、1~4位までの順位決定戦に移り、そこに豪地と創も一緒に勝ち上がっていた。


「これ誰が当たるんだろうね~」


「準決勝は誰と誰だ~?」


 3人でモニタートーナメント表を確認する。


「あ、これ俺と創じゃん! 豪地、何かお前変な奴とやるみてぇだけど負けんじゃねぇぞ! 決勝でやるんだからな!」


「おう、わーったよ」


「お前には今回勝ってやっからな~!」


「おめぇ如きに負けっかよッ! おっし、んじゃ創~俺とやるか」


「マジでお前俺とやんのぉ~?」


 そして試合が始まり、教えてる側として創の動きは全て分かりきっているので、開始30秒くらいで真也が3本取って二人の試合は終了。


「もう、お前には勝てねぇわ……」


 創は完敗のあまりに泣きに入ってしまう。観客の中には真也や豪地の身内も出席していて、盛気喝采に紛れる。石出師範や桧山師範も自分達の流派が決勝で並んでいる事にとても喜んでいる様子であった。

 真也と豪地は場内に入るなり互いに睨み合う。そして真也が今大会で何度も相手の攻撃を打ってくるのを待ってカウンター決め、ポイントを取っていた所を見て知っていたので豪地は警戒して一切攻撃を打ってこない。そして試合終了時間ギリギリになってようやく豪地が動き始めるのだが、強者同士の対決においては睨み合っているだけで両者の顔が汗ばんでくる。

 両者一撃も攻撃を繰り出さずして、両者共々汗だくになる。


「打ってこい……!」


「お前に先に出したらヤられんだろうが……!」


「おっし、いつでもいいぞ来い~!」


 そして睨み合うだけで時間切れになり、延長戦に入る。延長戦では、試合時間1分間の間に先に一本取った方が勝利する。


「(さて、豪地は恐らくカウンターを警戒してまた打ってこないだろうなぁ、あまり長引いても足に負担かかるし動けなくなるから持久戦は無理だ。もう足の怪我を庇ってらんねぇなーー)」


「延長、先取り一本! ……始め!!」


 ここまで真也が勝ち上がってきた試合は、全て後の先(ごのせん:相手の攻撃に対してカウンターの意)によるものだったので、その様子を見ていた豪地はしっかりと見切りをつけている。その事を察知している真也は、後の先に見せかけた姿勢で間合いを一瞬で詰める。

 同じ右利きの豪地が左拳を突き出してきて、それを左手で先の先(せんのせん:相手の攻撃を察知して、仕掛けられる前に手を打つ至難の極意)によって力一杯に弾き飛ばす。そして、透かさず上段正拳突きを寸止めで打ち込んだ。


「赤一本、勝ち!! 優勝、束岡選手!」


「押忍!」


 豪地はその場で悔しそうに真也に叫んだ。


「お前受けに回ったんじゃねぇのかよ!! 不意打ちかよ汚ぇな~……」


「汚ぇもくそもねぇんだよ、喧嘩や空手においてはよ~。競技によっては汚ぇもくそもねぇんだよ! 負けは負けだ~。まぁでも大したもんだよ、俺に延長戦まで持ち込んだ奴は中々いないぞ。よく考えたじゃん、凄いぞ」


「おめぇにやっと勝てると思ったのによぉおお!!」


 そして3位と4位の決定戦が行われ創と、豪地が倒した相手との試合が始まる。その際に、創は豪地からアドバイスを受け、その通りに動いたことによって創も3位に入賞する事が出来た。それにより、今大会でも目標である1位から3位まで並んで入賞する事に成功した。

 表彰式の後、その1位~3位までの入賞者に高校からスカウトが来た。


「あの~、○○高校の空手部で顧問をやっている者ですが、君達同じ中学3年生だよね? 同じ流派で3人乗るって凄いよね!」


 顧問と並んで新聞記者やTHE・空手という雑誌の記者も来て、3人はその場で多くのインタビューを受けた。


「是非うちの空手部に入部してくれないか? 推薦で学費とか全て免除で、学力とかも無くて良いので、とにかく空手部にさえ入ってくれれば入学は出来ますので!」


「僕、中2ですよ?」


「「「……えぇええええっ!?」」」


 群がっていたインタビュアーやスカウトの人達は一斉に驚愕する。


「俺ら3人共、中2っすからまだ。高校とか考えてないんで~」


「マジかぁ~!? 中2でそれはやばい!! もう是非ね、今後も大会に出てくれるんであれば、目ぇつけておきますんで、中学3年になった頃にまたね、大会に出て、スカウトに来ますから」


 そういった呼び掛けが5件ほどあった。しかし、3人からすればスカウトの方はどうでもよかった。高校に関しては共学行って、女子と沢山遊びたいという気持ちでいっぱいだったからである。


「(部活に没頭なんてしてられるかこっちはよ~……)」


 その後、大会は締め括られ3人は石出師範や家族皆と一緒に、笑声を交わし合いながらそれぞれの自宅に帰っていった。

 後日、真也は自宅のポストに投函された新聞を取り、リビングに持っていってテーブルに広げる。するとそこには、3人の中学2年生が目元を赤くしながら、満面の笑顔でメダル握っている写真が大きく写し出されていた。




つづく

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