第一章①:乱戦入学(らんせんにゅうがく)

『二人の度数』


 河迅こうじん家との友好が結ばれたあの日から一週間後、束岡家の4人である父親、母親、真也、そして6歳離れた弟が河迅家に再び招かれる。父親がインターホンを押すと、マイクから主婦の声が聞こえていた。


「は~い、開いてますから勝手に肺って来てくださ~い」


「はい、失礼します!」


 父親が大声で応答し、扉を開けて4人一緒に中へ上がる。すると即座に主婦の方がこちらへと出迎えに参じた。


「そちらのスリッパをお履きください、ようこそ御出おいで下さいました。どうぞ中へお入り下さい、主人がお待ちしております」


「ありがとうございます。では、お邪魔させていただきます」


「失礼します」


「おじゃましまーす」


「はい、ではベランダに案内しますね」


 主婦に招かれ4人は玄関を上がってリビングを通り、ベランダへと案内してもらう。と思いきや、4人の想像していたリビングとは全く異なる領域が広がっていた。ベランダと聞いて思い浮かぶ洗濯用の干し竿や、僅かなスペースと共に物置が設置されている光景が見当たらないのだ。


 広大なスペースの各場所でバーベキューしており、人数は従業員や子ども含めおよそ60人。水遊びをしている子ども達や、食事や談笑に夢中になっている大人達、その60人が伸び伸びと堪能している状況から見るに、相当な広さを持ったもはや1つのキャンプ場、あるいはそれよりも広い敷地に値していた。


 3人は太乙氏の元に辿り着き、父親が先頭に立って一言述べる。


「この度は、我々をご招待いただきありがとうございます」


「いえいえ、こちらこそぉ……。今日呼び出してホントすみませんねぇ、まぁこちらにお座りください」


  太乙氏の指す先に置かれているのは一般用より一回り大きなタープ(上部に布地を広げて日傘のような役割をする、テントとは少し違うキャンプ用具のこと)、その下にはまるでハワイのビーチにあるようなサマーベッドが並んでいて、そこに父親は言われた通り座る。


 左右のサマーベッドの間には据え置きのテーブルがあり、そのテーブルでさえも高級品であるらしい。こういった当人や周囲の隅々まで行き届いた富豪さからして、彼は相当な富の持ち主であると束岡家は驚愕する。その中で6歳の弟だけは、他の子ども達と一緒に遊んでいた。


 到盟氏は周囲について笑みを含みつつ、驚いた様子で彼に問う。


「あの……、これは何の集会ですか?」


 太乙氏は周囲の大人達に向けて各々に指を指し、周りの高揚なムードに影響されない変わらぬ静かな地鳴り声で束岡家に告げる。


「っはっはっは! こいつら全員なぁ、俺の従業員だぁ……よろしく頼むよ。まぁテキトーに注文してくれりゃあ何でも作らせっからよぉ……到盟さんも、好きな物があればお子さんにもね。何でも持ってこさせますから、言ってください、遠慮無く。一緒に呑みましょう!」


 そう言う彼の片手には泡盛を携えており、豪快にラッパ飲みしている。到盟氏もアルコールには強い方なので、一緒になって度数の高い酒を飲み交わしている。


 当時12歳である真也にはその会話が聞き取り辛く、豪地と二人で談笑する。


「あの人達、楽しそうだね」


「いやぁ、うちの親父の会社の従業員の人達なんだよ~」


 真也が見回す中で、少し怖い外見の人の元に視線が止まり一歩後退する。


「大丈夫だよ、皆優しいから」


 彼の様子に豪地は気を遣って言葉を連ねる。そんな中、太乙氏は彼らに言う。


「おい、クソ餓鬼共~、好きな物食ってけぇ! 飲み物もそこのクーラーボックスにいくらでも入ってっから何でも好きなもん取って飲んで良いからよぉ~。好きなだけやれ~!」


 二人の見る太乙氏の様子は、いつもののような轟々しい威圧が少し雲隠れしていて、揚々としている風に見えた。その後に太乙氏は束岡家の両親に距離に合わせたボリュームで同じように食事を勧める。


 そうこうしているうちに、真也氏は周囲の違和感に気づく。周囲の会話を聞いている限り日本名が多いのだが、何故かその人達は片言な日本語で喋っているのだ。


「なぁ、何でこの人達ってみんな片言なんだ?」


「ん? 俺もよく分かんな~い」


 二人はその答えを深く追求すること無く、他の子ども達の元へ駆けて行きホースを持って水遊びに加わる。しかし園児も混ざる中で顔面照射など、少し過激な面が目立ってしまう。


 周囲の従業員達が使っている鉄板は、縦幅がおよそ1.5mで横幅が2m近い大きなサイズで的屋とも言える立派な代物である。そうした従業員の中で、人間とは思えないような体格の人間がいた。真也が一歩引いた人物だ。


 太乙氏はその従業員へ指を指し、彼について語り始める。


「あいつはうちの嫁さんの倅せがれでな、俺んとこの会社のナンバー2をやってたのよ。なのによぉ、独立しやがってよぉ、俺が仕事振ってやって金儲けてんだアイツよぉ……っはっはっはっは」


「っはっはっは、さて、私はここいらで皆様方へご挨拶に伺おうと思います」


「おう、好きにしていきな!」


 到盟氏は一旦席を外し、従業員の元へ挨拶に回る。


「この度はお招きいただきありがとうございます、色々作っていただいて申し訳ないのですが、これいただいてもよろしいですか?」


「到盟さ~ん、良いから座りましょうよぉ! 一緒に呑みましょう!」


「あ……、そうですか分かりました。では、お言葉に甘えさせていただきます」


 周囲に礼儀を尽くす到盟氏に対し、陽気な声で戻るよう呼び掛ける太乙氏。彼の言う通り席に戻り、次々と運ばれてくる料理やテーブルいっぱいに並んだ酒瓶を大人組は堪能する。一方で真也と豪地は別の部屋でゲームするなり仲良く遊ぶ。そうして夜中まで過ごしていった。


 その日の20時を回った所で、束岡夫婦が帰宅する旨を伝えて4人揃って玄関へと見送られる。だが到盟氏一人に対して太乙は引き留める。その時の真也にはその理由が分からなかったが、後に母親から聞くにはその後も二人で他の店へ呑みに連れていかれたそうだ。




 翌朝、月曜日の8時にも関わらず父親はあの夜から帰って来てはいなかった。真也が登校し授業を受けている10時頃に、父親は帰ってきていたらしい。アルコールにとても強いとされ、先日のベランダでも平気な顔をしていた父親がベロベロに酔った姿で玄関に倒れ混んでいたと、下校し帰宅した後に母親から聞いて真也は大いに笑う。


 暫くして正常に戻った父親は真也に言う。


「あんな体験をしたのは初めてだ……、あの人は本当にヤバイ……。今後家族ぐるみで仲良くすることになったから、豪地とも仲良くしろよ?」


「おう!」






『チンピラ連合軍』


 中学校入学式の式典後、厳ついチンピラのような格好をした中学2年の男一人が真也の元へと歩み寄る。髪型はスキンヘッドで腹部に太ましさがあり、まるで小柄の相撲取りのような体格をしていた。彼の装いはヤクザや不良の間で昭和中期に流行った、グラデーションのかかった茶色いサングラスを掛けていて、ズンドウ(ずんどう:自分の体型に合っていないダボダボなズボン)にネルシャツ(ねるしゃつ:フランネルシャツというイギリス発祥のパジャマ等に用いられる柔らかい生地のシャツ)というミスマッチな格好をしていた。


「おめぇ、良い身体して目立ってんじゃねぇか……。テメェお前調子こいてっとブッ殺すかんな? 覚悟しとけよオイ、分かったか!?」


 とお決まりの台詞を吐き捨てては応答を待たずして去っていく。そして一緒にいた豪地と共に笑いながらチンピラに向けて指を指す。


「あのデブなんなん?」


「知らね! 動くだけでストレス溜まって大変なんじゃね?」


 二人は特にヒソヒソと小声で話した訳ではなく堂々と普通の大きさで喋っていた為、当然そのチンピラの耳にも届いた。


 一時限目が終わり教室の扉を開けて出ようとしたら、扉のすぐ前でこれまた別の大きな中学3年が待ち構えていた。学年で一番大きな体格をしていて、番長だの何だのと恐れられているらしい人間が、舎弟を3人引き連れて真也の前へ立ち塞がる。


「貴様、ちと来い……」


 彼が連れていかれたのは、階段を上った先の屋上前だ。屋上へは鍵を掛けられている為、その扉前の踊り場でゾロゾロと数人が待ち構えていた。中学3年生の15人が集まり結成した連合軍である。


 髪型は特に統一しておらず、リーゼントやパンチパーマ、スキンヘッド、オールバックといった各々が好きな不良ヘアスタイルになっている。服装は式典後に現れた中学2年と同様に長ランとズンドウ、短ランにポンタン(ぼんたん:変形させた学生服)、そして刺繍が入っている者もいた。要はその連合軍は暴走族に加入している厄介な連中である。


 真也はたった一人、その15人によって囲まれ行く手を塞がれる。


「貴様よぉ、うちの2年坊に何か文句つけたらしいじゃねぇか……。調子こいてっと、今から殺すぞ?」


 しかし真也はその威勢よりも、その人の声や容姿に見覚えが有り、それが気になっているせいで全く怯む様子が無い。そして思い出す為に深く考え込む。


「あぁ? 何だ怖じ気づいて声も出ねぇか?」


「いや待て、コイツ確か……」


 威勢を張った方も次第に気づき始め、何かを悟ったかのような口振りで真也に問う。


「お前……、ちょっと名札見せろ!」


 真也が有無を言う間もなく強引に名札を捕み、じっと苗字の方を睨み付ける。


「束……岡? おかしいなぁ、昔の知り合いで居るんだけど……もしかしてお前、○○二丁目のあのアパートに住んでいなかったか?」


「……住んでました」


「……っ!! お前、覚えてるか俺のことを!? 俺の名前は衣之原繁樹いのはら しげきだ! 幼馴染みだろ覚えてっか!? うちのマンションでよく遊んだよなぁ、秘密基地でも作ってよぉ!」


「……っ!? 繁樹君じゃないっすかぁああ!!」


 真也は感激の余りに声を荒げる。それもその筈、彼ら二人が再開するのは幼稚園以来の、実に8年振りだからである。二人の激変した様子に周囲は騒然とする。


「何だ知り合いなんじゃねぇかよお~い!」


「っはっはっは何だよそれー」


「良かったじゃねぇか再開出来てよぉ~」


 そう言って連合軍の皆が笑い飛ばす。そして繁樹は真也に言う。


「お前大したもんだなぁ、アイツに喧嘩売る奴なんか中々居ねぇぞ! ただ、アイツも結構ヤベェ奴だから気を付けた方が良いが……お前の方がヤベェだろこれ……。ムカついたら勝手にやれ、ブッ殺して良いからよ」


「あ、分かりました! っはっはっは、好きなようにやらせてもらいますんで、宜しくお願いします。んでえっと、一応礼儀は尽くしますんで繁樹君にタメ語は良いでしょう? お互い幼馴染みなんだからさ」


「おう、いいぞ」




 真也はそうこうしている内に、また頭の中で何かが過よぎる。小学6年の頃、その中学2年のチンピラとは一度とあるコンビニで会っていたのだ。


『お前、○○中学へ入学するらしいな。噂は聞き付けているぞ、随分と生意気な荒くれ者らしいな……来たら絞めてやっから覚悟しろ!』


 そう告げられていた事を咄嗟に思い出し声を上げる。


「あぁ! アイツかぁー!」


 正体が判明した途端、真也の内心で叩きのめすことを決心する。






『蝶刃の構え』


 彼の剛柔流空手の階級はこの時点では初段。そしてその道場での階級は九段より前に初級から始まるので、初級、九級、八級……一級、初段歩、初段、正初段、二段歩、二段、正二段……正十段といった順に計30段階あり、年に2度試験が行われる。その正十段を取得しているのは、全国空手道連盟を束ねる一番上に立つ人物ただ一人とされている。


 しかし真也の師匠である石出いしで師範とは、その一番上に立つ人物が頭を下げるほどの人物である。石出師範は大会会場で喫煙しながら寒い寒いと歩き回るようなふざけた態度を取るにも関わらず、周囲の人間全てが頭を下げる変わった人物である。


 そのような人間に教わった真也はどのような人間に対しても恐れを抱かず、力とて負ける気がしないほど自信に満ち溢れていた。


 そして真也はその中学2年、基宮もとみやというチンピラに喧嘩を吹っ掛ける。


「おい、基宮! あの時俺の事をブッ殺すと言ってたよなぁ? 今からタイマン張ろうじゃねぇか、ちょっと体育館裏へ来い」


 基宮は不貞腐れた態度ながらも真也の後をついていく。そして体育館裏で二人が向かい合った途端、基宮の方から威勢を張る。


「貴様、中一のくせに生意気ぶっこんでんじゃねぇぞオラァッ!? ブッ殺してやっからよぉ!」


 と言いバタフライナイフをポケットから取りだし、持ち手をを回転させて刃を露出させた形態で持ち手を力一杯握りしめる。(バタフライナイフ:持ち手が2つに分かれていて、片方を持ちながら回転させて刃の納刀と抜刀を行う携帯型ナイフ。現在市販されている物の殆どが刃の無いトリック用の玩具だが、基宮の手に持っているのは本物の刃が付いた凶器である)


 しかし刃物を突きつけられても真也は一切動じない。バタフライナイフ程度の凶器ならばと、真也は冷静に教えの通りにしっかりと戦闘体勢を取り始める。


“おい真也、お前は刃物を持った相手と戦闘になった場合、どう立ち回る?”


“んなの、刺される前に刃物持った手を叩き折ってやりますよ!”


“バカ野郎!!”


“いっっってぇえええ!!?”


“刃物で刺してくる手はな、思っているよりずっと速くこちらを突きつけてくるんだよ。そうなったらいくらお前でもその程度の痛みじゃ済まんぞ”


“はい……すみません”


“どのような相手においてもな、決して油断するな。慢心するな。力に溺れるものは皆早死にするーー今からお前に、本当の刃物相手への正しい立ち回りを伝授する。心して聞け”


“はい、師匠!!”


 真也は脳裏で深く、相手から目を離さず師範の教えを思い浮かべる。


“まず刃物を向けられたら、一番始めにお前は右利きだから左足の靴を脱いで手に嵌はめろ。防刃対策としてな”


 真也は足早に靴を脱ぎ始め、左手に自分の上履きを嵌める。


“次に構え方だが、血管を切られぬよう手首を内側にして動脈を守れ”


 真也は手の甲を相手側に向けてガードを固める。


“そして踵かかとを上げて蹴り技と回避が瞬時に行える状態にする。これが猫足立ち、剛玄先生から教わった立ち方だ。そこから少し距離を取って深く腰を落とせ、その姿勢で冷静さを常に意識すれば準備完了だ。これを常に忘れるな、そうすりゃお前はその辺の刃物持った奴なんぞ相手にならん”




「うおぉおおおおおらぁ!!」


 基宮が奇声を上げて勢いよく走ってくるのを、真也は靴を嵌めた手で力一杯に弾き飛ばす。


(この弾き方は、ベストキッドという有名映画のシーンにある“レフトハンド(外かけ受け)、ライトハンド(内かけ受け)”という場面に相当するものらしい)


 その内かけ受けは彼の経験から出たアレンジによるもので、瓶切り手刀のような速度で手先のナイフと上履きは同時に手元から離れ、壁に弾かれた後に地面へ横たわる。弾かれた基宮の右腕はあまりの衝撃により痺れて垂れた状態にある。そして真也は突き出た基宮の左袖を掴み、思いきり引っ張ってこちらに相手の胴体を勢いよく引き寄せ、その勢いを利用して基宮の顔面の正中線(せいちゅうせん:左右対称形の生物体で、前面・背面の中央を頭から縦に真っ直ぐ通る線)のうち、下脣と顎の間にある窪みに中指、鼻下と上唇の間に人差し指が当たるようにして二ヶ所の急所を狙った強烈な縦拳を叩き込む。すると基宮の顎は粉々に砕け、顔面は血だらけになる。そう、勝負は真也のワンパンによって一瞬で形がついたのであった。真也の右中指には基宮の前歯が突き刺さっている。


 真也は横たわっている基宮に向けて唾を吐きかける。


「……雑魚が」


 それを影で見ていた豪地の基へ振り返り、二人で学校サボって帰宅するのであった。その帰りの道中、豪地は静かに言葉を紡ぐ。


「……俺は、人生で一度もお前に勝てた事がない。だから親父には散々コキ使わされてるし、筋トレも毎日させられている。だが、それでも勝てない。親父には何度もボコボコにされてる。俺は親父を殺す為、お前を絶対に倒す為、お前の道場にどうか、入会……させてくれないか?」


 豪地は必死に真也へ頼み込む。真也は有無を口にする前に忠告する。


「うちの流派は、殺人空手だ。下手したら人を殺してしまうぞ? それでも良いのか? あと、礼節を重んじて礼儀正しく接しないと師範達にも相当ボコられるぞ。それでも良いなら……紹介する」


「それでも構わない、俺はお前に勝ちたい!! 俺はいつか親父を倒したい……それが俺の夢だ!! どうかその夢を叶える為に協力してくれないか!?」


「……いいぞ、じゃあ一緒に空手道を学ぼうじゃないか! でもお前はまず初級からだぞ~? お前は俺の左手一本にも敵わねぇぞ? っはっはっは!」


 こうして二人が同じ空手道を学ぶ生活は始まったのだった。




 そしてその入学初日以来、真也に目をつける者は現れなかった。何故なら彼自身が少し狂った様子をしていたからだ。目が血走り、表情も固く殺気立っている為、誰も近寄ることができなかった。豪地を除いて。


 彼がそうなったのには一つ理由がある。それは父親が、中学1年の頃に突如倒れてしまったからである。検査によると、その父親の胃からガンが見つかったらしい。そして余命は僅か半年であると、残酷な診断結果が彼の身心みこころに強く突き刺さったのだ。


 真也はそれ以来、荒れに荒れた。しかし週4日の空手には欠かさず出席し鍛練に打ち込んだ。2時間のトレーニングを終えた空き時間に、彼は余った時間があれば組手を石出師範に頼み込み、一時間ほど組手の相手をしてもらっていた。しかし真也はどれだけ必死に打ち込もうと、その一撃たりとも石出師範に拳を入れることが出来なかった。


 そして錬心会では支部として活動している所も有り、色んな小学校の体育館で練習は行われていた。そんな中、真也は石出師範に技術を1つ見せてもらうことになる。


「正拳突きとは、こうやって打つのだ。よく見ろお前ら」


 門下生が全員急いで石出師範の元へ集まり、石出師範が正拳突きを1発打ち込む。すると、ペラペラのカーテンが常人ならばボフッと威力を吸収されるだけだが、石出師範の打ち込んだ正拳突きではそのカーテンが勢いを吸収しきれず、まるで鞭のような鋭く甲高い炸裂音が道場内で反響する。その常人より遥かに素早く鋭い正拳突きに真也と豪地は思わず目を丸くし絶句する。周囲の門下生も同様に。


 自分の父親、豪地の父親、そして石出師範までもが人間を超えた力を秘めていたと真也は胸がざわつく。 






つづく

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