次は君を守れるように
ペーンネームはまだ無い
第01話:次は君を守れるように
――システム起動。エネルギー残量:極少。活動限界まで残り300秒。
僕が目を開くと、突き抜けるように青い空が広がっています。それは、辺りに漂う血と埃と硝煙の臭いとは、とても不釣り合いのように思えました。
ふと、
「やあやあ、起こしてしまってすまないね。アンドロイドくん」
少女を観察してみると、どうやら大きな怪我をしているようです。座るのも辛いのか、地べたに寝そべったまま言葉を続けます。
「申し訳ないのだが、私が死ぬまでの間、話し相手になってくれないだろうか? 恥ずかしながら
少女の言葉に、僕は
「ありがとう。……なに、そんなに時間はとらせないよ。それでは雑談と
そうして僕たちの会話が始まりました。
話題はたわいの無いものばかりでしたが、少女はとても幸せそうに喋ります。そんな彼女を見ていると、僕の心が温かくなっていくのが判ります。だから、僕も彼女の心を温められるように、一生懸命に話をします。
少女の声を聞くたびに、僕の心が
いつまでもこの時間が続けば良いのに。そう思わずにはいられません。でも、とうとう終わりがやって来ました。僕の頭の中でエラー音が鳴ります。
――エネルギー残量:ゼロ。シャットダウン実行。
パチンと小さな音をたてて僕の心臓が止まります。
途端に全身を巡るエネルギーが供給されなくなりました。体から、頭から、心から、力が抜けていきます。
――でも。まだです。まだ終わることはできません。
切断されたはずの意識を必死に繋ぎ留めます。物理的に動かないはずの体を必死に動かします。
「……どうかしたのかい?」
少女が不安そうに僕を見上げます。
僕が笑って首を振ると、少女は安心したように「そうか」と言ってから話を続けました。
エネルギーの切れた僕が、なぜ動けるのかは解りません。
でも、少女を一人に出来ない、僕はまだ彼女と一緒にいたい、そう強く願うと不思議な力が僕の奥底から湧いてくるのです。
僕は死に
しばらく雑談を続けたところで、不意に彼女が声をあげて笑いました。
「……あぁ、楽しいな。こんなに話したのは、久しぶりだよ」
それを最後にして少女の言葉は途絶えました。安らかに眠るように彼女は目を閉じています。……彼女は天国へ行けたのでしょうか?
僕の身体にも限界がきました。気が抜けたのでしょう。僕の身体に残っていた不思議な力が、急速に消えていきます。
もう何も見えません。何も聞こえません。体も動きません。このまま意識も失えば、僕は天国に行けるのでしょうか?
消えゆく意識の中、少女のことを想い返します。
もし叶うのなら、次に目覚める時は、貴女を失わないよう、貴女を守る
次は君を守れるように ペーンネームはまだ無い @rice-steamer
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