第3話状況把握
家を出た俺は、まず見慣れない風景に戸惑った。
そうして少し歩くと、そこには小さな公園があったので、ベンチに座りながらさっきの出来事を思い返した。
まずは現状把握だ。
部屋はいつもどおりと少し違ったが、そこはどうでも良い。
一番の疑問は、知らない美少女が俺のことを兄と呼び、その美少女がお母さんと呼んでいる美女は、俺のことを恭一さんと呼んでいたことだ。
普通に考えれば、俺は美少女の兄であり、美女の息子なんだろうと思う。
でもだ。俺には家族なんて居ないし、二人に関しても見覚えがない。
おまけに部屋以外は全部はじめて目にするものだ。
異世界召還?
いやまさかだ。よりによってこんなファンタジーも糞も無い異世界召還なんて
物語にもならない。
でも、今までとは違う世界というか概念の場所にいることは間違えないと思う。
それに何故だろうか?あの美女の悲しそうな顔を見るとものすごい罪悪感と後悔の念が俺の中に不思議と沸いてきたのだ。
とりあえず、今の現状で俺はあの家以外にいけるところも無いし、なにせパジャマのまま出てきたのだ。一回帰るしかない・・・。
俺はそう思い来た道を引き返したのだった。
すこし歩いたところで向こうの方から先ほどの妹が駆け寄ってきた。
「お兄ちゃんどうしたの?本当に変だよ・・・大丈夫?」
朝の勢いはどこへ行ったやら、今にも泣きそうな声でそう言った。
その姿を見てやはり、俺の心は痛んだ。
「ごめん・・・。とりあえずあの人に謝るから帰ろうか」
そうやさしい口調で告げた俺に妹は笑顔を見せてくれたが、すぐに怒ったようにこういった。
「あの人ってなにさ!お母さんのことをそんな風に言わないでしょ!」
そうだよな・・・俺あの人の息子って設定だもな。
俺はとりあず、お前らなんて知らぬ存ぜぬで突っ張っていてもしょうがないと思い
今の立場を受け入れることにした。
なにより、不思議と悲しい顔はさせたくないという思いが俺をそうさせたのだった。
「そうだよな。ごめん。ちゃんと母さんに謝るよ」
そういって頭を撫でてやると妹は恥ずかしそうに顔を赤らめ、微笑んだ。
その笑顔を見て、未だ自分が置かれている状況を理解できないが、それでもいいかと思ってしまったのだ。
そしてポケットからタバコを出し、火をつけると妹にそりゃもうめっちゃ怒られた。
しょうがないじゃん。癖なんだもの・・・
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