第4話謝罪と母親と
妹とふたり来た道を歩き数分でさっきの家まで戻ってきた。
先ほどのあの人の表情が俺の足を重くさせたが、妹が手を引き俺をリビングまで導いてくれた。
そこには、なにやら真剣な表情で考え込んでいるあの人がいたのだった。
「・・・母さん。さっきはごめん。俺が悪かったよ」
そういうとこちらを見ておかしなことを口走り始めた。
「恭一さん!いいのよ別に。それよりも大丈夫?頭ぶつけたんですが?
恭一さんがあんなことを言うなんてありえないですもんね。病院へ行きましょう!今すぐにです。学校には連絡を入れておきましたので、今日は休んでください!」
先ほどとは打って変わって元気になっている・・・というより顔が真剣すぎる・・・。
「いやぁ・・・俺は大丈夫だよ。まじで・・・。病院とかいいから!」
そういうとその人は
「そうかしら・・・普段は優しい恭一さんがあんなことを言うなんてただ事じゃないです。本当に大丈夫かしら・・・?私の恭一さん・・・」
ん?何最後の?俺息子って設定だよね?
思わず苦笑いしてしまい横に居る妹を見ると、妹も苦笑いをしながらこういった。
「あはは・・・しょうがないよお兄ちゃん。お母さんは異常なくらいお兄ちゃんが好きだからね・・・」
と。いやいや家族としてだよね?なんか顔赤らめてますけど・・・
「はは・・」
俺は乾いた笑い声を出し、目の前の母さんをなだめるのであった。
◆
とりえず落ち着きを取り戻したリビングで隣には妹、前には母さんという構図で
食卓テーブルに着き遅めの朝食をとっていた。
もちろん学校なんて遅刻である。
「恭一さん。今日はもう学校に連絡しちゃったので休んでくださいね」
とは母の言である。
とりあえず俺は、会話の中で多くの情報を得ることが出来た。
まず、俺は高校に通う学生であるということ。
俺は高校3年生で、妹が1年生。ちなみに妹は舞という名前らしい。
で普段の俺は優しく、母さんっ子で妹もたいそう可愛がっていたそうだ。
今は妹も年頃なので、あまりべたべたはしてこないが、昔はいつも俺にべったりだったらしい。
で、未だ見たことの無い親父は海外へ単身赴任をしているらしく、2年に1度くらいしか帰ってこないようだ。
ちなみに、隣には幼馴染が住んでいるらしく、これまた俺に大層なついているとのことだ。
うん。なんとう主人公的な人間関係だ。
そして何よりも、今までそれどころじゃなく深く意識していなかったが
俺の母さんめっちゃ可愛い。見た目が高校生でも精神的には25歳の俺にとっては
ドストライクのお姉さんだ。もう見た目がおかしい。明らかに20代後半
にしか見えない。これで30代後半だというのだからビックリである。
「舞ちゃんはもう学校へ行ってください。遅刻の連絡はしてありますからね。」
一通り話し終えたところで、母さんがそういった。
「はぁい。それじゃお兄ちゃん行ってくるね!」
そういって手を振り妹は学校へと向かった。
「それじゃ俺も自分の部屋もどるわ」
そういって俺は自分の部屋に戻ろうとしたが、母さんに呼び止められた。
「恭一さん。ポケットのタバコ出してくださいね。」
そう笑顔で言ったその目の奥は全く笑っていなかった。
まったく。抜け目のない母親なことで・・・
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