第2話いつもと違う風景

「おは・・よう・・・ちゃん!お兄ちゃん!朝だよおきてよ!」


寝起きの為か意識がはっきりとしない。


なにやら騒がしい声がする。


『そいや昨日PCつけっぱで寝ちゃったのか・・・』


そうと思えば行動は決まっている。いつもどおりの休日の始まりだ!


俺は寝巻きのポケットに入っていたタバコに火をつけ朝の一服としゃれ込んだ。


「ねー!お兄ちゃん!きこえてるのーーー!」


ん?


そのとき、部屋の扉が効果音でも付きそうな勢い開いた。


「お兄ちゃん!学校遅刻しちゃう・・・・よ?」


扉の前には、全く見覚えのない美少女がぽかーんと口を開け佇んでいた。


「・・・・・誰?」


俺は理解が追いつかず、そんな言葉を口にした。


だってそうだろ?自分の部屋・・・?の扉の前に知らない美少女が立っているんだ。


俺は一人暮らしだし、身寄りもない。ましてや俺をお兄ちゃんなんて呼ぶ存在などありえないのだ。


「何言ってるの?そんなことより何してんのさ!お母さーん!お母さーん!」


そう言って扉を閉め、ドタドタと走り去っていった。


謎の美少女が去った後、俺はもう一度周囲の状況を確認した。


寝ぼけていて気づいていなかったが、この部屋はなんだかおかしかった。


一見いつもどおりの部屋に見えるのだが、まずベッドの横に置いてある灰皿が無いし、間取りも若干違うのだ。


それにあの子が立っていた場所は、アパートの玄関ではなく普通の床だった。

そんなことはありえありえない。


俺の家の扉は玄関しかないのだ。


不思議に思い俺は部屋の扉を開けてみた。


するとそこには廊下があり、その先にはフローリングの階段があった。


下からは何か話し声の様なものが聞こえてきたので、そのまま俺は下へと降りていった。


階段を降りるとそこには見慣れない玄関があり、その横にはリビングへ繋がっているだろう扉があった。


どうやら話し声はこの扉の向こうから聞こえてくるらしいので、俺はためらいながらもその扉を開けた。


「あ!お兄ちゃん!」


「あら、恭一さん。何をやっているのかしら?」


そこには、先ほどの美少女とその美少女にお母さんと呼ばれている美女がいた。


「・・・・誰?」


もうそれしか出てこなかった。


部屋から出たら知らない家で、知らない美少女と知らない美女が俺の名前を呼んでいるのだから。


「誰じゃないでしょ?変なことを言わないでください。それよりも恭一さん・・・その口に咥えているものは何かしら?」


そんな誰が見ても分かることを怖い笑顔で聞いてくる美女。


「何って?タバコですが・・・」


「そういうことを聞いてるんじゃありません!何でタバコなんて吸ってるんですか!」


いやはや、美女が怒ると迫力があるね・・・。


じゃなく、なんでタバコを吸っていると怒られるんだよ・・・。


「すみません。ここ禁煙でしたか?」


とりあえず俺は謝っておくことにした。


「何を言ってるんですか?学生がタバコなんて吸って良いわけがありません!」


おい、おい・・・何言ってんだこの美女は。


学生?俺が?勘弁してくれだ。こんなふけた学生居るわけ無いだろうに・・・


「とりあえず、お父さんには内緒にしておくから、もう二度と吸ってはいけませんよ!」


「・・・・・」


何言ってんだこいつ。だんだん腹たってきたよ俺・・・・


「タバコくらい社会人の自由だろ?だいたいあんた何なんだよ?お父さんって誰だよ?俺の親父はとっくの前に死んでるわアホ」


・・・・ついイラっとして言ってしまった。


目の前に居る美女は驚いた顔をした後、ものすごく悲しそうな顔に変わった。


その表情を見て俺は、なぜか居た堪れない気持ちになった。


「お兄ちゃん!何その態度・・・それにどうしたの?おかしいよ・・・」


すると謎の美少女も怒ったあと、悲しそうな表情をした。


「・・・・・・」


その場は無言に支配され、俺はとうとう我慢できずに急ぎ足で家を出たのだった。




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