第2話
場所は変わり夕暮れの子と佐藤光彦との対峙と同刻。
防弾ジョッキをきた警官十数が水鏡組の総本山に車を横付けすると一斉に出てくる。人相が悪い下っ端と思われる男数人が警官にガンを飛ばすが綺麗さっぱり無視して建物の中に入る。
ガンを飛ばした男たち数名は殴りかかろうとするが制され、公務執行妨害で現行犯逮捕され警官が乗ってきた別の車体に乗せられる。素直に応じるわけもなく頭突きをかましたり警官を払いのけて逃げようと試みるが警官たちの役回りが今回のような組織を相手する三課だけあり下筋縄に対抗させられなかった。
その様子を水鏡組玄関で幹部と対峙していた今回の事件の三課の警部であり、参加を率いている人物、
「麻薬密売の容疑で家宅捜査の令状が出された建物の中を見させてもらおうか」
「ああっ?!何言ってやがる!うちはそんなのやってねぇって前にも言ったろぉが!」
「前ってのは数日のことか?こっちもあまり証拠も無くて引いたがな?今回はちょっとした証拠があるんで簡単にはいかないな」
今回のは殺人事件が、関わっている。殺人の容疑のところはある人物と一課が抑えに行っているがこちらは三課の領分。
事件の協力者から話は聞かされている。どんなに足掻こうが証拠の場所はその人物の言っている事が正しければその場所にあるはずだ。
「って外れた事はねぇけどな」
「あ?!なんか言ったか!テメェ!」
ボソッと呟いた鎌ヶ谷の言葉に過剰に反応した。警官が大勢で現れた事により焦りを見せたのかもしれない。冷静に対処していれば水鏡組に勝ち星がついたかも切れない。
「いいや?こっちの話だ。お前らここにある書類、怪しいもの、パソコン関連は全て押収しろよ!抵抗するものには容赦しなくていい!」
後ろを振り向きつつそう言った。組の者が道を塞ぐが押しのけ目的の場所に足を進める。
(なんで俺が三課の真似事なんてしてんだろうな?)
元々鎌ヶ谷は三課の人間ではない今回の件で三課の連中を率いているが本来は一課の刑事で、今いる鎌ヶ谷の立ち位置は別の人物がいる場所だが、その人物は今、入院中で代行を務めさせられている。事件の協力者のお陰で畑違いの仕事をさせられているわけである。
「なんだテメェ!」
「警察だ。この部屋を調べさせてもらうぞ」
「ここは組長の部屋だぁ!勝手に入るんじゃねぇ!」
「へいへい、これ令状な」
グッと詰まった表情をした男は扉を譲る。そして、その扉を乱暴に開ける。
「警察だ!家宅捜索させてもらうぞ。壁際に立って何も触るな!」
余計な抵抗をすれば積もらなくてもいい厄介事が積もると悟った部屋の主の取り巻きは舌打ちをしながら警官たちを睨み不貞腐れたように壁際に立つ。
部屋の主である人物は、微動だにせず革張りの椅子にどっしりと身を落としていた。
「組長さんあんたもだ。そこから退いてもらおうか」
「ふん、私がここから立ち上がらなくとも家宅捜索やらはできるであろう?」
「はっ!出来るちゃ出来るな」
「だったらいいだろう?」
「そこから退けない理由は根深そうだな、そこに……椅子に隠しているのか?」
ガタンと取り巻きが鎌ヶ谷に突っかかろうと腕を上げ拳を握った男を他の警官が抑え、その警官を殴った為、その場で現行犯逮捕される。
「午後5時37分公務執行妨害で逮捕する!」
両手に輪をかけられた男は警官に噛み付くが無理やり部屋から出され連れて行かれる。
「馬鹿な奴め」
そう冷たく吐いた組長には薄っすらではあるがまだ、余裕が残されていた。その様子に眉をひそめた鎌ヶ谷は爆弾を落とした
「組長さんよぉ、余裕なのはその椅子に座れっているからだろう?この前見た時と椅子の形状が違うよな?そのに俺たちに見られたらまずいもんでも隠してるのか?」
図星を突かれたのか組長はすかさず立ち上がり、机をバン!と叩いた。
「小僧、俺が隠し事をしとるといいたいのか?」
「おや、組長さんともあろうお方がこのくらいの挑発に乗ってくるとはな」
ちらりといつの間にか組長のそばに来ていた警官が椅子を部屋の角に持っていき、明日とその警官を守るようにガタイのいい警官が前に立つ。
椅子の前にしゃがんだ警官が持っていたカッターナイフを取り出し、革張りの高級そうな椅子に傷をつけ内部を明らかにした。
ガサガサと漁り、中から本来は椅子に使われていない物が出てきた。
「ありました!麻薬らしき物とと拳銃!」
「よし、押収!組長さん?これはどいうことか説明してもらおうか?」
鎌ヶ谷の整った顔……ではあるがお世辞にも怖くないと言えない顔で組長に詰め寄る。
「儂は知らん!あ、アイツが…佐藤光彦が悪い!」
「ほおー、それにしては佐藤光彦とやらが持ち去らなかった、麻薬と拳銃は自分たちで回収しときながらそいつになすり付けか?」
真っ青な顔で鎌ヶ谷の一言で事切れたようにがっくしとうなだれた組長は抵抗もなしにおとなしく両手に輪がかけられた。
抵抗をしても椅子に入っていたのは殺された女性のクレジットカード、保険証、その他が入っており、言い逃れはできない。
抵抗し、要らぬ罪状を増やしたくないのか、組長が捕まったと知った組の者たちは暴言罵声を日々聞かせていたがシンと静まり聞こえてくるのは警官が動く音と声のみ。
「刑事さん、悪いが佐藤光彦には死んでもらうことにしたよ」
「あ?その事だけど密売船乗組員を装って佐藤光彦に近づいた奴らも既に冷たい、牢屋の中だぜ?無駄な動きだったな佐藤光彦も高まってるからじゃないのか?」
「っ!」
タイミングを計ったようにスマホの着信が鳴る。
「暮松?どうした?あー佐藤光彦捕まえたか。で?なんで俺に電話」
『………し……』
電話の相手の声はほとんど聞こえず何言っているのか分からないが佐藤光彦が捕まったのはわかった。この組はここで終わるだらう何代に渡って続いてきた伝統ある極道の一つが事実上の壊滅となるのは間違いないだろう。
「あーわかったわかったそっちに向かわせる港でいいんだな」
通話を切った鎌ヶ谷がは乱暴にポケットにスマホを突っ込む。
「犯人逮捕、こっちも終着だ。やっぱりアイツが関わると違うな。やっと一課に戻れる」
そう呟くと机に腰を預け項垂れ連行される組長の背を見送る。
「アイツのことを教えないとな。暮松のところだからそのまま放置だからさっさと向かわせるか」
スマホを片手に窓の外の夕焼けを眺めた鎌ヶ谷は眩しそうに目を細めゆっくりと息を吐き出すのだった。
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