研究所で研究される
そして次の日。改めてセタ教授の元を訪れた僕達。
「いよいよ人外まさよしの正体が判明するわけやな。」
「私としては、本命は人間に化けたスライムなんじゃないかと思うんですよね。」
外野がうるさい。なんだよスライムって。ふと、全裸にされて女神に視姦された過去を思い出した。
「協力感謝する。それでは、まさよしはこちらに。2人は申し訳ないがこの部屋で待っていてもらおう。」
そう言われて部屋から連れ出される前に、部屋に残った2人の前になんだか美味しそうなスイーツやら飲み物が置かれていくのが見えた。いいなぁ。僕もあっちがいいなぁ。
セタさんに連れて行かれた部屋には、CTのような機械があった。
「ではここに寝てもらおう。」
なにやら台のような物に乗せられ、CTっぽい機械の中に入れられていく。未知のテクノロジーによって健康診断もどきを受ける僕。なにこれすげぇ怖い。
トンネル状の機械の中に入ると、なにやらビューーンというような不思議な音が聞こえる。経験した事ないけど、宇宙人にさらわれるってこんな感じなのかな。頭の方から入っていって、足の方から出てきた。
「はい。ご苦労様。では次にこれを飲んでもらおうか。」
謎の灰色の液体が満たされたコップを渡された。これを、飲めというのか・・・。なんか凄く今さらだけど、よくもまぁこれまで異世界の食べ物や飲み物を躊躇無く食べてたもんだ。
チビチビ飲むのも怖いので、ここは男らしく一気にガっといった。何が驚いたって、これが意外に美味しかった事。言葉で上手く説明出来ないが、クセになる味だった。
「では次はこちらに。」
次に連れて行かれた部屋では、ゴチャゴチャコードの付いた椅子に座らされた。指先や頭に次々吸盤の付いたコードが貼り付けられ、いかにも実験という空気になった。
「では始めます。」
セタさんが部屋から出て行き、いつの間にかいた助手っぽい人にそんな事を言われるが、そもそも何を始めるのか知らないのにこちらとしては何も言いようがない。ただただよくわからない覚悟を決めるばかりだ。
椅子に座って検査が始まりしばらくしてから、コードの先にある謎の機械からピーピー音が鳴り始めた。機械に付いている計器っぽい針も激しく動き始めている。
その反応を見て、血相を変えて助手が出て行った。しばらくしてからセタさんが戻ってきて、なにやらヒソヒソ会話している。なんだこれ。どうなってしまうんだ。やっぱり僕はスライムなのか。
その後も得体の知れない謎の検査は続き、朝から始めた検査だったけど気がつけばもう夕方になっていた。
「ではこれで終わりだ。協力感謝する。」
最初の部屋に戻ってくると、なぜかそこにはガウン姿に着替えてイケメンにマッサージを受けている女性陣の姿があった。それはまるでエステのような。
「・・・何やってんすか?」
「何って・・・。ほれ。マッサージよ。」
「いや・・・。それは見たらわかるんですけどね?」
「他にも、最初に美味しいスイーツから始まって、豪華なお昼ご飯やら大型マジック・ビジョンで色々見せてもらったり、また美味しいおやつが出てきたりで、最高でしたよ!協力してもらってるお礼ですって!」
今まで見た中でも最高の笑顔で笑うマキノさん。
「協力したのは僕ですよね?当然、僕の分も残してあるんですよね?」
「あるわけないやろ?おらんかったんやからしゃーないわ。こればっかりはしゃーないわ。」
ドヤ顔でニヤニヤするパーマネントミセス。
「まぁいいですよ。今さら言ってもしょうがないわけだし・・・。」
ガッカリしょんぼりしていると、そこへセタさんがやってきた。
「では、これから検査の結果を細かく調べていこうと思う。結果が出るのはまた明日という事になると思うが、せっかくだから夕食もここで食べていくといい。」
その言葉と共にイケメンマッサージ師達は片付けをはじめ、女性陣も普段着に着替える。もちろん、僕は部屋を追い出された。
その後3人で部屋を移動し、案内された部屋のドアを開けた瞬間、僕達に衝撃が走った。
「うわぁぁぁぁ!」
開けたその部屋の中にあったのは、いわゆるビュッフェ形式というやつだろうか。異世界人の僕が見ても明らかに豪華だとわかる料理の数々が、テーブルにズラっと並べられていた。
「もうなんやかんやでそれなりの付き合いになるけど、今日ほどマー君と知り合ってよかったと思った日はないわ。」
「同感です・・・。なんですかこれ。何やったらこんな事になるんですか。もしかして、まさよしさんは内臓とか売ったんですか?」
相変わらず女性陣は好き勝手言っているが、何やったらこんな事になるのか?という意見には激しく同意だ。実はこの後、とんでもない法外な値段をふっかけられて、払えない僕達のためにちょっとマニアックなお店によしえさんが売られてしまうんじゃないか心配になってきた。
「・・・よしえさん。遠慮しないでいっぱい食べてくださいね?」
憎たらしいパーマネントミセスだけど、お別れするとなるとこみ上げるものがある。さようならよしえさん。僕はマキノさんと2人で生きていきます。
「・・・なんやの。なんか微妙に腹立つ顔やな。」
「今日はすっかり1日迷惑をかけてしまった。好きなだけ食べて飲んで帰ってくれればいい。もちろん、お金もいらない。」
僕達の心中を察してか、セタさんがそんな事を言う。なんとこれタダですって。タダですってよ奥さん。聞きました?
そうとわかれば遠慮はいらない。そう言えば今日食べたのは謎の液体だけだった事を思い出した。
テーブルの中央に置かれたステーキっぽい肉の塊の所に行くと、執事っぽい人がそれを切り分けてくれた。そんなに力を入れてるわけでもなさそうなに、それはもうスっと切れた。
何枚かの薄切りにしてくれたそれを、お皿に乗せて渡してくれる。一切れその肉を食べた瞬間、これまで食べた『美味しいお肉』が自動的に1ランク下がった。
なんだこれ。めちゃくちゃ美味しいんですけど。
「よしえさん!このお肉凄い美味しいですね!」
僕の隣で同じように切り分けてもらった肉を食べているよしえさんに話しかけた。
「これは・・・!美味しいな!こう・・・、美味しいな!」
この女神の語彙力よ。しかし気持ちはわからないでもない。上手く言葉に出来ないくらいに美味しいのだ。
一方、部屋の隅ではなにやら美味しそうな刺身を食べて幸せそうにしているマキノさんの姿が。
さっそく行って僕も食べたが、異世界にはこんなに美味しい魚が泳いでいるのかと感動した。
そういえば、海ってまだ見たことないな。この街には空飛んできたはずなのに、外の景色を見た記憶がまったくないのはなぜだろう。
その他にも、飴細工がシャンデリアみたいになったケーキとか、フルーツモリモリのパフェなども食べ、贅沢な食事を楽しんだ。最後にはお土産までもらってしまった。魔法研究所まんじゅう。さっきの晩餐から比べると5段階くらい落ちる感があるが、ありがたくもらう。
宿の部屋に戻り、明日の事をぼんやりと考える。自分の全てが判明するとは限らないが、なんとなくは今後の事もわかっていくのではないか。
不安半分。楽しみ半分。
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