4章

譲れぬ戦い その1

そして翌日。


従者の方の案内でまた城へとやってきた。


魔法都市ってどこにあるのか、どうやって行くのか僕はよく知らないので、また今回も高速馬車での旅だと思っていたのだが、城へついた僕達を待っていたのは予想外の乗り物だった。


「おぉぉぉぉぉ!でっかぁい!」


城の広い庭へと通され、そこで僕達を待っていたのはなんと飛空艇だった。自分の体を基準に大きさを測ったところ、その全長約60mほど。


「こちらが、我が国が誇る飛空艇であるミシガン号です!」


ミシガン号!かっこいい!というか、見た目本当に船なんだけど、ちゃんと飛ぶのだろうか。飛行機よりも納得出来ないし不安になるんだけど。


「それではさっそく乗り込みましょうか。魔法都市であるクサッツにはこの船で6時間ほどで到着します。」


従者の人がそういうと、作業員のような方々がどこからともなくタラップのような物を持ってきた。それを使い、船に乗り込む僕達。


船に乗ってみて思ったのだが、この船。甲板が吹きさらしだ。どれくらいのスピード出るのか知らないけど大丈夫なの?人が飛ばない?


「あ、あの、僕こういうのに乗るの初めてなんですけど、こんな吹きさらしの甲板だと人が外に出たら飛んでいきません?」


「その点はご心配なく。船の周りには魔法で障壁が張られていまして、飛行中に甲板に出ても止まっている時となんら変わりません。安全です。」


なるほど~。魔法ね魔法。とりあえずそう言っとけばいいってくらい便利だな。



船の中にあるリビングのような場所に僕達と従者の人で集まって、これからの予定について話し合う。


「まず、この船内にはこの船の運航に必要な人員がすでにスタンバイしています。ヒコーネ王家の名にかけて、道中みなさんを不安にさせたり不便な思いをさせたりしないとお約束します。」


自信満々の従者の人。


「どうしてこんな凄い物を僕達のために貸してくださるのですか?」


確か以前によしえさんが、空飛ぶ船もあるにはあるけど費用が高いと言ってたような。


「それだけ王様からの期待が高いという事ですよ。魔王の存在を知っていて、なおかつ強いという人物は、あなた方が思っているより少ないのです。それと、実はこれが一番大きい理由なのですが、ヒコーネの見栄ですね。」


「見栄?」


「はい。王家の名前を出して紹介するのに、まさか貧乏旅行の船旅で疲労困憊で到着。というわけにはいきません。最高のもてなしをしてお連れしましたよ。という見栄が大切なのです。」


なるほど。偉い人の世界には色々あるんだなぁ。


「というわけなので、道中は充分にくつろいでください。用事などありましたらこちらの者達に遠慮なく申し付けてください。」


そう言っていつの間にか後方に控えていたメイドさん&執事さんの群れを指差す従者の人。なんか最近こんな扱いばっかりで勘違いしそうになる。


「先ほども言いましたが、甲板に出てもまったく問題なく安全です。空からの眺めはまた一段と素晴らしいですよ。道中にも様々な観光スポットを通りますので、よろしければご案内いたします。」


空から見る観光スポットかぁ。なかなか楽しみだ。元いた世界での飛行機とはまた違った楽しみ方が出来そうだった。


「では、そろそろ出発しましょうか!ついでに離陸の様子も見てみますか?なかなか凄いですよ?」



甲板から見た離陸の風景はそれはそれは凄いものだった。船体が緑に光り、ふわっと浮いたかと思ったらそのまま急上昇からの急加速。甲板に居た僕達には何の衝撃も無いのだから驚きだ。


そのまましばらく甲板で景色を見ていたが、景色が凄い速さで流れていくのに船体は一切揺れない。という状態は思ったより酔うので船内に戻った。




それから、船内の様々な設備を案内してもらい、最後に自室へ。この自室も、さすがにスペースの関係で宿の時ほどではないものの広い部屋だった。


フカフカのベッドに寝転び、30分ほどしたところで、やる事が無くなった。


しかし相変わらず異世界というのはやる事がない。元いた世界がそれだけ娯楽に溢れていたのだろうか。少しのヒマすら不安になるというのは、それはそれで良くない事のような気がしないでもない。


とりあえずフラっとさっきのリブングに向かうと、そこには同じくヒマを持て余したよしえさんとマキノさんの姿があった。


「凄かったですねぇさっきの離陸。」


と、なんとなく話を振ってみる。


「そうやなぁ。でも景色はアカンな。酔うわ。」


やっぱり異世界感覚でもあの景色はダメらしい。


「私は嫌いじゃなかったですよ!速いの好きですから!」


モンスターレースが好きだったり戦闘スタイルがあんな感じだったりで、結構スピード狂なところがあるようなメイドさん。


「・・・それにしてもヒマやな。やる事ないわ。なんか立派な食堂とかあったけど、ご飯なんかそんな何回も食べるもんでもないしなぁ。退屈や。」


我々庶民はいわゆる優雅な時間の潰し方というのがわからないらしい。まぁ女神が庶民かと言われればわからないけど。


「そうだ!まさよしさんが居た世界で流行ってた遊びみたいなものは何かないんですか?手軽に出来そうなやつ。」


メイドさんが異世界の遊びに興味を持ったようです。


「ん~・・・。そうだ!じゃあ、せっかくだし王様ゲームをやりましょう!」


1人オバサンが混じってるとはいえ、女子2人と遊ぶのだ。やはりこれしかないだろう!一応王様に借りた船の中でやるわけだし、こんなふさわしいゲームもないはずだ!


「王様ゲーム?」


不思議そうに聞いてくる2人に、ルールを説明する。まず食堂でもらってきた割り箸に『王様』『1』『2』と書く。


「この箸をみんなで引いて、王様と書いたやつを引いた人の言う事はなんでも聞く。というシンプルなゲームです。」


「なんでも・・・?なんでもって言うたな?後悔せんやろな?」


「い、いや。あくまでそういうルールというだけで、あまり過激な事とか言うと後が続かなくなって盛り下がりますので、ほどほどにね?」



そんなわけで。第1回王様ゲームinミシガンの始まりである。

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