僕の世界を紹介します

「マー君、大丈夫か?」


心配そうな顔でよしえさんとマキノさんが僕の部屋にやってきた。


「あ、はい。大丈夫です。すいませんなんか。心配かけちゃって。」


そうだ。僕達はドラゴンを倒したのだ。おめでたい事なのに辛気臭い顔をしていてはいけない。


「それにしても凄かったな!なんかビーム出てたで!でっかいのが!一瞬やったな!やるやんマー君!」


そう言ってニッコリ笑うよしえさん。


「そうですよ!私達2人がかりで全然だったのに!よっ!ドラゴンスレイヤーまさよし!」


そこにマキノさんも続く。


「・・・なんだったんですかね。アレ。」


そこに、上手く乗れない僕。どうにも色々気になってしょうがない。


「ん~・・・。とりあえず、銃そのものはあの時も言うたけど、ごく一般的なもんやと思うで。」


しょうがないなぁという顔で説明してくれるよしえさん。


「じゃあ、誰が使ってもああいう感じになるというわけではないんですよね?」


「そうやなぁ。普通に使ったらちょっとしたビームが出るだけやな。」


やはりあのとんでもない威力は普通ではないらしい。しかし、そのちょっとしたビームとかいうのも微妙に気になる。どんな感じなんだろうか。


「でも、その辺は考えてもわからんのやから、あんまり気にする事でもないんちゃう?」


そう言われればそうなんだけどね。そもそも、根本的にはここで悩んでも答えなんて出ない。もしかすると、今までなんの説明も無かっただけでこれこそが異世界チート特典なのかもしれないし。


「そうですね。わかりました。なんかよくわかんないけど、謎のまさよし砲が出た!という事でとりあえず納得しときます。」


正直まったく納得してないけど、これ以上心配かけるわけにもいかない。とにかく、必殺まさよし砲を覚えた!のだ。


「ま、でもとりあえずはあんまり使わん方がいいとも思うで。理由もわからんのにあの力をバンバン使って、何か反動があっても困るやろうし。いきなり干からびるかもしれんからな。」


怖い事言うなこの人は。でもまぁ確かに、ビームを撃った途端にガリガリに干からびていくとか怖過ぎる。どこからエネルギーを手に入れているのかわからない以上、多用するべきではないかもしれない。


「わかりました。と言っても、銃無くなりましたけどね。僕のヒジごと。」


あの時はわけがわからなかったからスルーしたけど、よく考えたらとんでもない事だ。


「ホントですよ!いきなり凄いビーム出たかと思ったら、まさよしさんのヒジから先無かったですからね。慌ててヒールしましたけど。ビックリしましたよ!痛くなかったんですか?」


「いや・・・。痛いって言うかなんというか、あんな事になるなんて思ってなかったですからね。すぐにヒールしてもらえて助かりましたよ。」


痛いと思うヒマもないくらいに迅速なヒールだった。お腹に穴が開いた事はあったけど腕が無くなったの初めてだったので、ニュルニュル腕が生えるのは非常に気持ち悪かった。


「で、とにかくドラゴンは退治したわけで、晴れてドラゴンスレイヤーになったわけやけども。英雄になった気分はどうや?」


ニヤニヤしながら聞いてきた。


「全然実感わかないですよ。カチっと押したらドーーンってなって、もういませんでしたからね。」


なんとお手軽インスタントドラゴンキラー。


「正直僕は直接戦ってないからよくわからないんですけど、ドラゴンてそもそも強いんですよね?シャイニングさんとマキノさんの2人がかりでも大変そうだったし。」


「そこもな、ちょっと不思議なんよ。ドラゴンて確かに強いのは強いんやけど、あのドラゴンは強すぎた気がするんやわ。まぁでもそんなに何回も戦った事あるわけでもないし、そういうもんて言われたらそういうもんなんかもしれんけど。」


何回か戦ったとか気になる事を言っているけど、相変わらず謎の多い女神様だなぁ。



「確か前にも聞いた事あると思うんですけど、よしえさんて僕と出会う前は何してたんですか?」


「そんなもん、内緒よ。」


相変わらず意外と自分の事を話さない秘密主義の女神。言いたくないなら聞かないけどね。


「それより、私はまさよしさんの事の方が気になりますよ!こことは違う世界から来たんですよね?どんな所なんですか?」


キラキラした目でズイっと寄ってくるマキノさん。距離感が近い。ドキドキしてしまう。


「え・・・えっと、どう説明したらいいのかなぁ。ん~・・・。こことは全然違いますよ。魔法とか無いし、モンスターもいないし。」


「へ~。魔法が無いとか凄い不便そう。どうやって生活してるんですか?」


この世界の人からしたら確かにそこは疑問かもしれない。


「科学ってのが発達してるんですよ。例えば、馬車みたいな乗り物の代わりに自動車って乗り物があります。」


「自動車?」


「はい。馬の代わりにエンジンっていうのを動力にして走る車です。めちゃくちゃ速いんですよ。あと最近ではスマホってのがあります。遠くの人とでも自由に会話が出来たり、あとは・・・なんか色々出来るんです。」


「あ、そのなんか色々はよくわからないけど、遠くの人と会話出来るのならここの世界にもありますよ!魔法で通信するんですけどね!ちょっと大掛かりな設備なんで一般には普及してませんけど。」


ほ~。まぁ地理とか全然わからないけど、大陸渡って国同士連絡を取る。とかいう必要があるなら、そんな物が発達してもおかしくないかもしれない。


「じゃあ、そっちとこっち、どっちの方がいいですか?」


・・・ちょっと、考えてしまった。


「あ、いや、あの、なんか・・・。すいません。ガツガツして。自由に行き来出来ないなら、どっちが良いも無いですよね。」


マキノさんが慌てて謝った。


「あぁ、いや!別にそんなつもりじゃないですよ!気にしないでください。ここの生活も結構気に入ってるんで、大丈夫ですよ。」


どっちが・・・。か。簡単に答えの出ない話ではある。



「さ。とりあえずほな、今日のところはもう解散しよか。みんな疲れたやろうし。」


気がつけば結構話し込んでしまった。


「そうですね。あとは王様からのご褒美タイムでも楽しみにしますか!」


こうして、今日のところは解散となった。



みんなが帰って、1人ベッドに入って思う。


果たして、帰れるんだろうか。元の世界に。そもそも、帰りたいんだろうか。よくわからない。

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