vsドラゴン その1
「またとんでもなく勝ちましたね!」
帰ってきた僕とマキノさんを待っていたのは、両手に革袋を持ったギャンブラー女神だった。
「神のお告げがあったからな!ところでなんやの2人して。私のおらん間にデートか?ヒューヒュー!」
一昔前のひやかし方で煽ってくるよしえさん。
「ち、違いますよ!デートとかそんなんじゃないですよ!」
あわてて否定する僕。
「え~?デートじゃ無かったんですか?私はデートだと思ってたのに悲しいなぁ。」
笑いながらそんな事を言うマキノさん。
やんわりとした、おだやかな幸せの時間。これが、数日後にはドラゴン倒しに行く予定があるのだから、異世界は本当に恐ろしい。
そして、いよいよドラゴン討伐当日がやってきた。
従者の人が馬車でお出迎え。
「みなさん、準備はよろしいでしょうか?それでは、王様からの支給品をお渡しします。まずこの腕輪を付けてください。」
3人にそれぞれ腕輪が渡された。腕輪のサイズが微妙に大きく、なんだこれ途中で抜け落ちるんじゃないかと思ったけど、腕にはめて腕輪に触れるといい感じのサイズに小さくなった。ピッタリフィットだ。超便利。
「その腕輪には魔法がかけられていまして、ドラゴンのブレス攻撃を防いでくれます。ただし、どこまでもいつまでも防ぐというわけでもなく限度もありますので、気をつけてください。」
おぉ!なんて素晴らしい!一応限界はあるみたいだけど、いきなり炎吐かれて消し炭になって全滅。という事は無さそうでよかった。
「その他にも、こちらの箱の中に様々なアイテムを用意しましたので、必要に応じてお使いください。」
そう言って、割と大きめの箱を渡された。中を開けてみるとなんかよくわからない物がゴチャゴチャ入っていた。使い方が全然わからん。
これだけたくさん物が入っていると、持ったらさぞ重たかろうと思ったが全然重たくなかった。きっとまた魔法だろう。最近はあんまり驚かなくなってきた。何事も慣れだ。
「では、さっそくイブキ鉱山に向かいましょう!」
馬車に乗り鉱山とやらを目指す。前回乗った馬車と違い、今回のはちょっと装甲が厚めというか、いかにも戦闘用!という感じだった。
さらに、前回の馬車より大きかった。たぶん本来はこれに屈強な冒険者を10人くらい詰め込んで移動する用なのだろう。そこにイケメン従者とメイドとパーマとモブ凡人。
こんなパーティで大丈夫か?今さらながら不安が襲う。よしえさんが強いのは知ってるよ?でも、相手ドラゴンよ?空とか飛んだらどうしようもなくない?
時間がたつにつれ加速度的に増す緊張と不安。もうダメだ。お腹痛くなってきた。帰りたい。超怖い。
よく考えたら、僕の異世界対戦成績はゴブリン相手に1キル1デス。キルはまだしもデスが1でも付いたら基本的にダメなので、僕の成績は最底辺だと言える。
それが、次回対戦相手はドラゴンなのだ。マッチングがぶっ壊れとしか言いようがない。ちゃんと仕事しろよ運営。
別に何もしてないのに段々呼吸が荒くなってきた。全身を嫌な汗が濡らす。きっと他の2人も緊張しているだろうと思って車内を見渡した。
「あ!よしえさん!なんか今動物がいましたよ!」
「おぉ!ホンマや!えらい可愛いのがおったわ!なんやろねあれ?」
馬車の座席にヒザで立ち、窓から外を眺めてはしゃぐ2人。そして、それを穏やかな微笑みで見つめる従者の人。
なにこれ。そんな感じなの?王様凄い困ってるみたいな感じじゃなかった?緊張感無さすぎじゃない?異世界の人はちょっとした遠足気分でドラゴン討伐するの?
それとも、俺が想像してるドラゴンと違う生き物なの?チワワサイズの可愛い生き物が出てきたりするの?
でもよく考えたら、一応ブレス攻撃はしてくるみたいだし。それで本体がチワワサイズなら攻撃が当たらなくてそれはそれで手に負えない気もする。
ダメだ。異世界の常識を知らなすぎるせいで、不安ばかりが増す。悪いイメージしか浮かばない。そもそも、モンスター相手に活躍した記憶がほとんどない。
「さぁ。そろそろ到着しますよ。」
従者の人が真面目な顔でそう言った。ほどなくして、なにやら開けた洞窟の入り口のような場所で馬車は止まった。
これから、この洞窟を進んで最深部にはドラゴンが。というような冒険が始まるのだろうか。
「では、その洞窟を入ればすぐそこにドラゴンがいますので、みなさん頑張ってください。私はこの馬車の中で待機していますので。」
・・・え!もう?もうそこにいるの?ってか従者の人ヒドくないですかね?
なんの心の準備も無いままに、はいそれでは戦ってください!となった。あぁダメだ。足が震えてどうにもならない。だってトカゲでも怖いもん。
「さ、ほな行くで!グズグズしてたらドラゴンの方から来るで!」
そう言って、さっそくシャイニングさんになった。
「じゃ~いきますか!サクっとドラゴン退治しちゃいましょうよ!」
やる気満々のマキノさん。不安そうな顔の僕を見て、背中をポンと叩いてきた。
「ほら!頑張りましょうよ!リラックスリラックス!」
出来るか!!と言いたいところだったが、多少はマシになった。女性陣が張り切っているのだ。異世界初心者とはいえ男の僕が頑張らないでどうするか。
「いざ!ドラゴン討伐へ!」
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