3章

旅立ちの時

レッサーデーモン討伐から数日後。


我が家に町長さんがやってきた。


「モンスター討伐を王都に報告した件への返事がきまして。まず、こちらが今回の報酬になります。」


そう言って、前回の物よりも大きい革袋を渡された。さっそく中身を確認すると、ちょっと数えるのも大変そうな感じの金貨が入っていた。


「それとですね・・・。どうやら、王様がよしえさん達に興味を持ったらしくて、1度王都の方へと足を運ぶようにと・・・。」


なんという事だ。王様から呼び出しとは。かなりファンタジーっぽい。


「わかりました。まぁ、せっかくやし、マー君も1回くらい王都に行ってみてもいいやろうしな。」


「一応、強制というわけではないんですよ。どうしても無理なら断ってもいいんですが、じゃあ行かれますか?」


「はい。せっかくなので、1度王様にお会いしてみようと思います。」


「ではそのように返事をしておきます。あと、向こうでの滞在先や生活の面倒は王様が面倒を見てくださるそうなので、心配いりません。」


まぁ、自腹だったとしても凄い量の金貨もらった後なんだけど。


「恐らく一週間ほどで迎えが来ると思いますので。」


こうして、僕達の王都行きが決まった。



「王都ってどんな所なんですか?」


「そやねぇ。一言で言えば都会やね。ここと比べたらだいぶ発展してるよ。」


「それに、ここより大きなモンスターレース場があるんですよ!凄いですよね!楽しみですよね!軍資金もなんか・・・。凄いいっぱい・・・。」


キラキラした目で語るギャンブラーメイドさん。皮袋を見る目が怪しい。


「ま、まぁ、せっかく行くんだし、ちょっとくらい遊んでもいいですよね。それにしても、王様から直々に呼び出しかぁ。なんか凄いですね。なんの用ですかね?」


「珍しいもの見たさ。みたいな部分もあると思うよ。なんや言うてもレッサーデーモンて強いモンスターやからね。いきなりそんなん討伐した無名の冒険者がどんなもんか見たいんやろう。」


強いって言われても全然実感わかないけどね。気の毒デーモンさんは、拷問されて泣いて謝って殺されただけだからね。


「それと、国に害のある存在かどうかの見極めとかもあるやろな。強いって事は良い事ばかりではないよ。」


確かに、強い人がみな国に味方するかどうかわからないもんな。というか、むしろそっちの理由の方が大きい気がしてきた。


「でもまぁ緊張せんと普通にしてたらいいと思うよ。ちょっと目立ったってだけで、わざわざ一般人に目をかける程ヒマでもないやろうし。」


それはそうかもしれない。いくら個人として強くても、軍隊で来られればどうにもならないだろうし。


「王様なら、魔王の事も何か知ってるかもしれないですよね。聞けそうなら聞いてみようかな。」



そうしてそれから1週間後。



僕達の家の前に豪華な作りの馬車がやってきた。


なんか、想像してたより馬車が大きい。前に商団の人達を助けに行った時のやつと全然違う。


前に乗った馬車は、4人乗りくらいで向かい合って直角のシートで微妙に座り心地の悪い物だったのに、この馬車は8人乗りくらいの大きさがある。


ワンボックスの車よりやや大きいくらい。こんなん馬が引けるのか?


不思議に思ってよしえさんに聞いてみると、どうやら魔法で強化された馬らしい。なんでも出来るんだな魔法。


「よしえさんご一行ですね?お迎えにあがりました。」


金髪の髪を短く綺麗に整えた、爽やかな従者っぽい人が僕達を迎えにやってきた。従者の人が明らかにお金のかかった綺麗な服装なのに対して、こちらは完全な平民スタイル。


メイド姿のマキノさんがなぜか一番正装に見えるファンタジーの不思議。


「あの・・・。なんか、僕達こんな格好ですけどいいんですかね?」


「大丈夫ですよ。こちらか招いたのですから、楽な格好で来ていただいて結構ですよ。」


そう言ってニッコリ微笑む従者の人。ビックリするほどかっこいい。


「なんやの。えらい男前やないの。」


「本当ですよねぇ。目の保養になります。」


デレデレする女性陣。しょうがないよね。僕だってドキドキするレベルだし。しょうがないよね。うん。住んでる世界が違うもの。異世界だけに。


全然環境が違うはずの異世界においても、イケメンがイケメン扱いなのが腹が立つ。


「では、特に何も無いようでしたら、さっそく行きましょうか。」


馬車のトビラを開け、ごく自然に、そうするのが当たり前かのように女性陣の手を取りエスコートする従者の人。ハイハイイケメン凄い凄い。


そして最後に、僕の手も引いてエスコートしてくれるイケメン。


え!?なにそれ・・・。こんな事あるの?異世界って凄い・・・。ドキドキしちゃう・・・。


わずかにひんやり冷たいイケメンの手が、なんとも気持ちよくて気持ち悪かった。



こうして、僕達を乗せた馬車は王都に向かって出発したのだった。

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