魔法を使うには

レッサーデーモンを撃退した日の翌朝。


僕が朝起きて食卓に行くと、すでによしえさんとマキノさんが居た。


今日も美味しいご飯が楽しみ!とウキウキしていると、なにやらマキノさんが妙にソワソワしていた。


「あ、あの・・・。もしかして、あの、お2人はそういう関係なんでしょうか?」


朝食の支度を終え、みんなで席についた途端、マキノさんが恥じらいながら聞いてきた。お2人?そういう関係?


「なんの事ですか?僕とよしえさんが何か?」


「い、いえ!あの、昨日の夜ですけど・・・。その、声が、あの・・・。」


なるほど。マッサージの話か。確かに昨日のよしえさんも凄い声だった。でも、それは勘違いですよマキノさん。怪しい疑惑を否定しようとしたのだが・・・。


「あぁ。実は、そういう関係やねん。昨日の夜も、マー君がそれはもう凄いテクニックで。」


またしても真顔でウソをつく自称女神。


「いやいやいや!違いますよ!違いますから!」


「何が違うねんな。マー君のテクニックが凄いのは事実やで?揉んでは撫で揉んでは撫での緩急利かしたあの技は凄いで。」


「・・・そ、そんなに凄いんですか?」


顔を少し赤くしながらも、興味津々に聞いてくるマキノさん。もしや、僕のテクに興味が?


「あぁ~そらもう!凄いなんてもんやないよ。なんて言うんやろなぁ。こう、体の内側から響くっていうんやろか。」


「う、内側からですか?」


「自然と声も出るでアレは。女泣かせや。」


何が女泣かせだよ。


「マッサージですから!ただのマッサージですからね!」


「そやねん。最初はな。そう言うんよ。ただのマッサージですから。みなさんやってますから。って。そこで油断させといて・・・。」


「いい加減にしてくださいよ!誤解されるでしょう?もう次からしませんからね!」


「で、ここで『お願いですから次もしてください』って言わせたいわけや。変態やでこの子はホンマ。」


「違いますよ!」


この流れはマズイ。何か話題を変えなければ。



「そう言えば、全然関係無い話なんですけど、みなさんどうやって魔法って使ってるんですか?僕でも使えるようになりますか?」


これは前から疑問に思っていたのだ。せっかくの剣と魔法のファンタジー。剣の方は使えたので、次は魔法を使いたい。


「という事は、まさよしさんは今は魔法を使えないんですか?」


マキノさんが不思議そうに聞いてくる。


「あ、はい。今のところは使えません。でも、勉強したり努力すれば使えるようになったりしませんか?簡単な魔法からでいいんで、何か使ってみたいんですが。」


「今使えないなら、もう使えません。諦めてください。」


バッサリいかれた。


「え?そんな無理なものなんですか?もう全然無理?まったくどうにもなりませんか?」


「はい。なりません。」


そ、そんな・・・。


「えっと、まず、どうして使えへんのか?っていう説明からいこか。」


よしえさんが説明してくれる事になった。


「まず、産まれてから3才くらいまでの間に、ある儀式をする必要があるんよ。だから、それをしてないともう終わり。使えへん。」


「儀式?」


「そう。産まれた時にはみんな、体の中にある魔力を使うための回路みたいなもんが開いてる状態なんやけど、3才までに少しずつ閉じてしまうん。個人差はあるけどね。で、その回路を開いた状態のまま固定する儀式が必要なんよ。」


「僕はそれをしてないので・・・。」


「使えへん。というわけやね。大人になってから使えるようになった例はこれまでに無いし、これからも無い。」


そんなぁ・・・。僕も魔法使いたかった。


「まぁ、その儀式自体がそこそこ値が張る事もあって、使える人はある一定以上は裕福な人。って事もあるよ。そんなにめちゃくちゃ高いって事もないんやけど。だから、魔法を使える人とそうでない人で差別のある国なんかも存在はする。」


へ~なるほど。一種のステータス的な意味合いもあるのか。


「じゃあ、色々な種類の魔法ってどう使う感じなんですか?火とか雷とか風とか回復とかあるじゃないですか。」


「その辺は、なんでもいけるよ。まぁなんでもっていうのはちょっとおおげさなんやけど。」


「なんでも?」


「うん。自分の中にある魔力っていうエネルギーを、どんな形で外に出すか。っていうだけの話やから、なんでも出来る。火を出す事も、回復する事も。ただ、好き嫌いで差があるくらい。」


「好き嫌いで?」


「ん~~。感覚の話やから、言葉で伝えるのは難しいんやけど・・・。イメージして力を出すから、思い入れの薄いもんはいまいちになる。って感じかな。」


なるほど。わからない事もない。


「例えば、私は火とか雷みたいなバーーン!とドーーーン!みたいな魔法が得意。氷の魔法は苦手なん。」


「なんでですか?」


「火とか雷って、魔法!って感じがするんよ。でも、氷って、結局冷たい物理攻撃って感じがするんよ。」


なんか言いたい事はわかる気がする。


「でも、温度を下げる魔法を限界まで極めたら、どんな物でも止める事が出来る。って所まで行き着くから、そこまで行ったらロマンやね。相手は死ぬ。みたいな。」


でもどちらにしても使えない。いいなぁ魔法道。極めてみたかった。


「それでも、魔法技術の進歩は凄いもんで、魔法を使えない人でも『ぽい事』は出来たりするよ。マキノちゃんの靴とかがいい例やね。」


あのとんでもなく飛ぶ靴か。


「私の靴は特別製ですけどね。出力がかなり強めに調整してあって、慣れてない人がはくととんでもない事になります。」


普通のでもとんでもなかったけどね。


「さらに応用された物もあって、行くとこ行けば空飛ぶ乗り物もあったりするよ。そのうち乗る機会があったらいいね。」


「へ~!!そんなんあるんですか!!それは乗ってみたいなぁ!!」


僕の元いた世界とは違う、魔法文明の進んだ方向性。魔王討伐とか言うくらいだから、色々な国を旅するかもしれないし、見て回る機会もありそうなので楽しみだ。


「色々な世界を回るためにも、マー君はもうちょっと強くならんとな!」



こうして、今日もボコボコにされました。

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