シャイニングさんvsレッサーデーモン
「大丈夫ですか?落ち着きましたか?」
僕の頭をなでながら、シャイニングさんは優しくそう言った。
「・・・はい。もう大丈夫です。」
ついに初めての殺モンを犯してしまったが、もう大丈夫だ。一生慣れないとは思うけど。
いつの間にかマキノさんもやってきていた。どうやら羽の奴以外はどこもあらかた片付いたようだった。
「ではいきましょうか!」
先を走るシャイニングさんの後を追い、しばらく走ったところに奴はいた。
事前にシャイニングさんが避難指示を出したのか、どうやら近くにいるのは僕達3人だけのようだった。これなら巻き添えを気にせず戦えそうだ。
「クックック・・・!魔王様の命令でこの街を襲うように言われて来てみれば、なんだ。なかなか活きのいい人間がいるじゃないか!」
レッサーデーモンと呼ばれた灰色の悪魔は、僕達を見て笑った。向こうから見れば、かなりの数の仲間が殺されたというのになんら動揺した様子も無い。
そして、今奴はなんだか気になる事を言った。
「シャイニングさん!今、あいつ魔王様とか言いましたよ!」
「・・・そうですね。少し話を聞く必要があるようです。」
やはり魔王はおとぎ話では無いのだろうか。少なくとも、この目の前の悪魔は魔王とやらを知っていそうだった。
「ハ~ッハッハッハ!聞きたい事があるなら、力づくで聞き出してみるがいい!愚かな人間共よ!」
と、言い終わるか終わらないかのタイミングで、シャイニングさんの攻撃。
「ライトニング・ボルト!!」
伸ばしたシャイニングさんの手の平から、雷のような光が相手に向かって走った。
そして、この魔法の威力がえげつないものだった。
自然界で見る普通の雷は、一瞬で終わる。バリバリ!ドーン!!という感じ。
しかし。どうやら魔法で作る雷に、出力の時間制限は無いようだった。
バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!!ドーーーン!!!!
体感30秒はあっただろうか。シャイニングさんの手の平から放出され続けた魔法産の雷。
「グギャァァァァァアァァァァァ!!!!!」
その30秒の間、なんとかデーモンさんの絶叫は響き続けた。
あまりに光るので、もはやまともに目も開けられない。辺りに無限に響き続ける雷鳴で、もう耳もおかしい。
それでも悲しい事に、デーモンさんは死ななかった。なまじ強いがばっかりに、とんでもない目に合う事になる。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。な、なかなかやるじゃないか・・・。ここは帰って報告を・・・。」
耳がキーーンとなっているので、モゴモゴ喋るデーモンさんの声がいまいちよく聞こえないが、とにかく奴を逃がしてはならない。またどこかに被害を及ぼすからだ。
「シャイニング・ソード!」
久しぶりに見たその光る剣。またしても超加速で一瞬でデーモンさんの両の羽を切り落とした。
「なぁぁ!」
これにはさすがのデーモンさんも顔面蒼白涙目だ。もはや同情すらしてしまう。
「さぁ!あなたの知る魔王について、詳しく聞かせてもらおうか!」
よく通るハッキリとした声で宣言するシャイニングさん。
「ハッ!誰が貴様らなんぞに教えてやるものか!知りたければ力づくで」
「ヒール!」
デーモンさんが喋り終わるよりも先に、シャイニングさんはデーモンさんを魔法で癒した。みるみる生えるデーモンさんの羽。
「なっ・・・!なんだ!アホなのかお前は!!」
と、少し余裕を取り戻したのもつかの間。これから、デーモンさんは凄惨極まる拷問を受ける事になった。
「ライトニング・ボルト!」
「ギャアァァァァァァアァ!!!」
「ヒール!ライトニング・ボルト!!」
「グギャアァァァァァァァァ!!!」
何度となく、繰り返された。癒しては雷。癒しては雷。たまに癒して燃やす。
見てるこちらが怖くなり、マキノさんと2人無言で立ち尽くす。僕の手が手汗でビチャビチャになったころ、ようやくデーモンさんへの拷問が止まった。
「どうですか?少しは話す気になりましたか?」
たぶん、もう10ターン前くらいには話す気があったと思うんだけど、怖いので言わない事にした。
「ひぃぃぃぃ!許してください!なんでも話すから許してください!!」
飛んで逃げられないように両の羽をもがれたデーモンさんは、もはやプライドなど欠片も無かった。
「あ、あの!魔王って言ってもですね、上司の上司の上司の上司の上司の上司くらいの距離でして、どうやら魔王からの指示らしい。というのが本当のところでして!顔も見た事ありません!ウソじゃないです!」
「本当ですか?」
「はい!ウソじゃないです!信じてください!」
悪魔の口から信じてくださいも何もないが、あれだけの目に合わされてウソも何も無いだろう。おそらく奴は何も知らない。
「・・・そうですか。わかりました。」
そう言って、またシャイニングさんの光る剣が奴の首をはねた。
「・・・どこが女神やねん。」
思わず、ボソっと小さく関西弁でツッコんでしまった。
気の毒デーモンを倒した後、また黒い光に包まれたかと思ったらシャイニングさんはよしえさんに戻った。
「・・・ふぅ。」
大きくため息をついた後、その場に倒れこんでしまうよしえさん。
「だ、大丈夫ですか!!」
マキノさんと2人で駆け寄る。すぐにマキノさんのヒールがよしえさんを癒す・・・。
が、癒えない。
「あぁ・・・。アカンねん。シャイニング疲れは、ヒールでは回復せえへんのよ・・。」
よく見るとかなり顔色が悪い。今回は結構長時間だったので、かなり無理をしたのだろうか。
「そんな・・・。」
思わず僕はよしえさんの手を握った。すると、握った手がぼんやり白く光り始めた。
「・・・え?なんだこれ。なんか、手が光って・・・!」
最初は手だけが光った。それが、よしえさんの全身を包むように光り始め、しばらくすると収まった。
「・・・なんやろ?なんでやろ?元気になったわ!」
そう言ってスっと立ち上がるよしえさん。
「凄い・・・!なんでや。回復魔法では癒えへんのに、なんで・・・。一体何が・・・。」
自分の体に起こった事が信じられない様子のよしえさん。
一方、僕自身も何が起きたのかまったくわからない。ただ、よしえさんの手を握った。そしたら光った。治った。
「マー君!マー君は何を・・・!」
ちょっと強めに詰め寄ってくるよしえさん。
「いや!わからないですよ!何もしてないですよ僕は!」
本当に心当たりがない。
「・・・そうか。まぁ、ちょっと気持ち悪いけどええか。愛のパワーって事で納得しとくわ。」
いやいやいやいや。全然納得出来ないですよ。でも、考えても答えは出そうになかった。
「さ!とにかく、これで終わりという事でいいですかね?疲れたし、とりあえず町長さんに報告してから家に帰りましょうか!」
マキノさんがニッコリ笑って仕切る。
「そうやね。今日はもう疲れたわ。はよ帰ろう。」
こうして、僕達は街を襲ったレッサーデーモンを退治した。
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