このまちだいすき

マキノさんの提案により、街の観光に行く事になった僕達3人。


この街に住んでそこそこになるのに、そういえば全然街の事を知らない。武器屋と防具屋に行ったくらいだ。


買い物に関してはよしえさんとたまに市場に行くくらい。異世界で1人で外出とかその辺のチンピラにからまれて命を落としそうで怖いのだ。


僕とよしえさんの前を歩きながら、楽しそうに街の案内をしてくれるマキノさん。


街で人気の服屋さんだとか、品揃えのいい道具屋さんだとか、色々なお店を紹介してくれる。


可愛らしいメイド服の女の子と一緒に街を歩いていると、なんかこう、ちょっと、デートみたいな気分に・・・。


「なんやの。マー君。なんかいやらしい顔して。」


そういえばチリチリパーマが居たんだった。


「い、いやらしい顔なんかしてませんよ!」


たぶん。


「で、どうなんよ。マー君的には。マキノちゃん可愛らしいもんなぁ?」


いやらしい顔をしてチリチリパーマが聞いてきた。


「ど、どうって・・・。どう、どうでもないですよ!」


「どうもない事ないがな!マー君かて健全な男の子なんやし!それともアレか?マー君は、男の人の方が好きなんか?」


「ち、違いますよ!ちゃんと女の子が好きですよ!」


「はぁ~ん。なるほど。マー君は女好きか。やらしい子やでホンマに。」


「ち、ちがっ・・・!」


すると、前を歩いていたマキノさんがニヤニヤしながら


「へ~。まさよしさんは女好きなんですか。」


と会話に乗ってきた。


「違いますよ!・・・いや、違わないけど違いますよ!普通ですよ普通!」


耳まで赤くして否定する僕の顔が面白いからか、楽しそうに笑う2人。


・・・なんだこの幸せ空間は。もう魔王とかどうでもいいんじゃないか。家事全般なんでも出来る可愛くて強いメイドさんと、そこそこ世話焼きのオカンと、3人でここで暮らしていけばいいじゃないか。



で、たまにお風呂の時とか寝る時とかトイレの時とかにマキノさんとちょっとしたラッキーイベントがあって、ドキドキしながら意識したりしなかったりすればいいじゃないか。もう!まさよしさんのエッチ!みたいな事言われながら水とかかけられて、だって一緒に住んでるんだからしょうがないじゃないか!そっちこそ気をつけろよな!とか言ってみたりしてね。で、洗濯とかする時にちょっと下着とか見たりしてね。それを恥ずかしがりながらマキノさんが慌てて回収してきたりとかしてね。でも実はよしえさんのだったりしてね。なんでこんなセクシー下着持ってるんだよ。みたいなね。なんかこう、嵐とかきて家が暗くなってガタガタうるさいい時とかに、実は雷とか苦手だったりするマキノさんが僕に寄り添いながら『まさよしさん。そばに居てくださいね』とか




「何をブツブツ言うてるんやマー君は。」


・・・はっ!危ない。遠い世界へ旅立ちそうになった。



「これ見てください!最近流行ってるんですよ!」


そう言って、マキノさんがなにやら靴を持ってきた。


「靴・・・?」


「はい!でも、普通の靴じゃないんですよ?なんと、この靴、空を飛べるんです!」


空飛ぶ靴が登場した。さすが魔法の世界。なんでもありだ。


「この靴に風の魔法がかけられてまして、はくと飛べるんです。最初はちょっとコツがいるんですけど、慣れればいい感じですよ!」


なかなか面白そうなので、1つお試しではいてみた。


「よいしょ・・・がぁぁ!」


靴をはいた瞬間、もの凄い勢いで靴が前へ進み、その場で一回転して後頭部を地面に叩きつけた。


「あぁぁぁああぁあ!」


そのまま靴は前へ進み、靴に引きずられる形で10mほど進んだところで靴が脱げた。


予想外の出来事だったので凄い痛い。慌ててマキノさんがヒールしてくれた。


「だ、大丈夫ですか!?・・・おかしいなぁ。こんな事にならないはずなのに・・・。」


不思議そうな顔で、マキノさんがはいてみる。ふわっと体が浮き、そのままスーっと前に進んだ。


「普通はこんな感じになるんですよ。上手に使えば走るより速いんです!でも、街中では危ないから使っちゃいけないんですけどね。」


街中だろうがなんだろうが、こんな恐ろしい靴怖くてはけない。


「・・・よしえさんもやってみたらどうですか?」


靴に引きずられる僕を見ながら涙を流して笑っていたよしえさんに、この恐ろしい靴を薦めてみた。


「・・・あんなもん見せられてはくわけないやろ。」


そらそうだ。僕ももう2度とごめんだ。



「ここも面白いですよ!」


そう言ってマキノさんが連れてきてくれたのは、なんだか大きい施設だった。大きな円形のグランドのような物があり、その周りに観客席がある。


「ここでは、モンスターを使ったレースが行われてるんですよ!」


グランドを見てみると、なにやら小型犬くらいのサイズの生き物が数頭で走っていた。


「モンスターのブリーダーさん達が、自分の育てたモンスターの速さを競うんです。モンスターは重量別で階級が分かれていまして、この街ではそんなに大きいモンスターは扱っていないんですが、もっと盛んな所にいけば大型のモンスターも見られます。」


興奮気味に話すマキノさん。好きなんだろうか。


「特に凄いのが、最上級の階級である無差別級!ルールは『空を飛んではならない』『他者を攻撃してはならない』の2つだけ!他は何してもいいんです!!」


「何しても・・・?」


「はい!なんでもです!魔法でブーストかけようが、ドーピングしようがなんでも自由!とにかく速いモンスターの勝ち!」


凄いな。ちょっと見てみたい。


「それに、レースの勝敗に賭ける事もできまして!・・・ねぇ!ワクワクしませんか!!」


なんだかマキノさんのテンションがおかしい。


「ちょっと・・・ちょっとだけ、見ていきます?少しだけ賭けるだけなら・・・。」


どうやらマキノさんはギャンブル好きのようだ。意外だ。


「ま、まぁ・・・。でもほら、もう夕方だし、そろそろ帰らないと・・・。」


止めようとする僕の横をするっと抜けて、謎のパーマが受付に。


「オッチャン。1枠の単勝に金貨2枚や!」



この後、めちゃくちゃ惨敗した。



こうして、1日かけて街の観光をした。異世界生活もなんだか悪くないような気がする。マキノさんもよしえさんも優しいし。


たくさん歩いた割に疲れた気がしないのは、ここ最近の修行のおかげだろうか。


自室のベットに寝転びながら、いつまでもこんな日が続けばいいなと思うのだった。

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