vsゴブリン その1
よしえさんと武器を買いに行ってから1ヵ月が過ぎた。
スライムを倒して以降は特にモンスターが現れるでもなく、平和な日々が過ぎていった。
魔王討伐行かなくていいんですか?とよしえさんに聞いたら、せっかく住む所もあるんやしちょっとくらいのんびりしてもいいやろ。との事だった。
こういう事ってスタートダッシュが肝心で、一旦ダラダラするとなかなか次進まなくなるよなぁ。
そんな事を考えていた、ある日。
僕達の平和は、大きく乱される事になった。
「大変です!よしえさんはいらっしゃいますか!!」
そう言って町長さんが大慌てで我が家にやってきた。
「王都に向かった商団が、途中でモンスターに襲われたそうなんですよ!商団の1人がなんとか街に逃げてきて・・・。申し訳ありませんが、救援に向かっていただけないでしょうか?」
「それは大変やね。わかりました。それで、モンスターの種類は?」
「なんでも、ゴブリンの群れだそうです。商団が襲われた一帯は森林地帯ではあるものの、これまでモンスターの目撃情報はほとんど無かったので安全だと思っていたのですが・・・。」
「わかりました。マー君はどうする?危ないかもしれんから、留守番しとくか?」
よしえさんが真面目な顔で聞いてきた。確かに、ゴブリンの群れとはおだやかではないし、僕が行っても足手まといになるかもしれない。
でも、最終的には魔王を倒すつもりなのだ。僕だって少しは場数を踏まないといけないと思う。前回のスライム戦ではいいところが無かったし、今回こそ活躍してみせる!
「えっと・・・。もし、迷惑でなければ僕も一緒に行きます!」
「ほな、サっと準備してゴブリン退治に出発や!」
救援に向かうために町長さんが用意してくれた馬車に乗り、農園地帯を抜けさらに進むとその森林地帯にたどり着いた。
「あ、あれです!」
町長さんの指差す先に、横転した馬車が1台。そしてその周りに馬車を守るように戦う人が数人と、それを襲うモンスター。
まだ馬車までは少し距離があるためどんなモンスターなのか外見はわからないが、明らかに攻撃の意志を持っている事はわかる。
「ほな、町長さんは万が一があっても困るので、私達をここで降ろして待っててください。もし危なくなったら逃げてください。」
そう言って、よしえさんは馬車を止め、僕とよしえさんは商団の元へと急いで向かう。
商団の元へ駆けつけると、そこには馬車を守る人達と、それを襲う10匹以上はいるであろう緑の小さな生き物がいた。
子供以上大人未満といった感じのその大きさは、1m40cmほどだろうか。それぞれに武器を持ち、馬車の荷を狙って襲い掛かっていた。
すでに何人か犠牲者がでているようで、無残な姿の人が横たわっている。
「ヒドイことを・・・。」
小さくつぶやいて、よしえさんの体が白く光始める。やがて光はおさまり、そこにはシャイニング・よしえさんがいた。
「では私はあのゴブリンを退治してきます。まさよしさんは無理をせず、危険だと思ったら逃げてください。大声で叫んでもらえればすぐに駆けつけます。」
そう言って、あっという間にシャイニングさんは行ってしまった。
「今、まさよしさんて・・・。」
おもわず1人でつぶやいた。シャイニングさんとよしえさんは別の人格なんだろうか。急に他人行儀になって少し悲しい。
無理をせず、危なくなったら逃げろ。と言われた。
でも、それでは来た意味が無いような気がする。お家でお留守番するか、現地でお留守番するかの違いでしかない。
せっかく異世界に来たのだから、剣と魔法の世界に来たのだから、かっこよく活躍したい。
そんな事を思いながら、いまだ新品のショートソードをサヤから抜いて構えてみる。
金属バットほどの重みのあるその凶器。素振りもまともに出来ないが、いつかこれでバッタバッタとモンスターをちぎっては投げちぎっては投げ・・・。
そんな事を考えていると、僕のすぐそばの茂みからガサガサと音が聞こえた。
もしかして・・・。と思って武器を構えてそちらを向けば、どうやら負傷してこちらへ逃げてきたであろうゴブリンが出てきた。
その手には、三日月の形に曲がったひどく使い込まれたであろう剣を持っていた。
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