なんのためにうまれてなにをしてよろこぶ

よしえさんと武器を買い物の帰り道。


2人で並んで歩いていると、1人の小さな女の子が僕達に近づいてきた。


女の子は、僕達の前に立つと恥ずかしそうにモジモジしながら話しかけてきた。


「あ、あの・・・。街を助けてくれて、ありがとうございました!」


どうやら、ハイオークの討伐のお礼が言いたいようだった。


「どういたしまして。あなたはケガは無かったか?大丈夫やった?」


そう言って、女の子の目線までかがんで優しく笑いかけるよしえさん。見た目はともかく、とても女神っぽい。


「うん!でもね。おかあさんがケガしたの。でも、白い騎士さまが魔法で助けてくれた!で、白い騎士様がでっかいモンスターを倒して、そこのオバチャンになったの!」


よしえさんがヒールで助けた人達の中にお母さんがいたようだ。シャイニングさんが元に戻るまでを見ていたらしい。


「それで、次に会ったらちゃんとありがとうって言おうと思ってたの。ありがとうございました!」


女の子はそう言って元気よく頭を下げて、ちょっと照れたような顔で笑ってどこかへ行ってしまった。


「よかったじゃないですか。可愛い子でしたね。」


「ホンマになぁ。でもまぁ、全員助けられたってわけでもなかったけどね・・・。」


ハイオークを倒した直後、よしえさんに近寄る人は誰もいなかった。モンスターの返り血を大量に浴びたよしえさんは、確かに少し恐ろしかった。


今こうして歩いていても、遠巻きに僕達の様子をうかがう人達が何人か見られた。



僕は、少し気になっていた事をよしえさんに聞いてみる事にした。


「ねぇよしえさん。よしえさんは女神なんですよね?そもそも、女神ってなんなんですか?」


「ん~。なんやろうね。私にもようわからんのよ。」


少し、悲しげな表情に見えたのは気のせいだろうか。


「例えば・・・。じゃあマー君は、人間ってなんですか?どういう目的があって人間なんですか?使命とかあるんですか?って聞かれても、答えられへんやろ?」


「まぁ・・・。そうですね。」


「だいたいそんな感じよ。マー君は人間で、私は女神で。そうやから、そう。だから、女神ってなんですか?ってのは、これはもう哲学やね。」


「なるほど・・・。」


上手にごまかされたような気がしないでもないけど、よしえさんの言う事も納得できた。


「今は僕と一緒に行動してますけど、僕と出会う前は何してたんですか?」


「なんやのこの子は。アレか。元彼とか気になるんか。やらしぃなぁ。」


そう言ってニヤニヤ僕の顔を見てきた。


「いや!別にそういうわけじゃ・・・。」


「内緒や!内緒。乙女の秘密や。女はな。秘密が多い方がモテるんや!」


僕に背中を向けて歩き出したよしえさん。


「あ!ほら見て!美味しそうな屋台があるわ!」


僕は、あまり若々しくない姿で駆け出すチリチリパーマの背中を見ていた。

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