訪れた転機

 転機は私たちが3年生になって、突然訪れた。

 それは私の一番好きな梅雨時だった。ほとんどの日が雨で、つまりほとんど毎日彼と会える時期だから。

 しかし、雨の日なのに彼がいなかった。

 いつもいる場所にいない。いつもならこの時間に昇降口にいるはずなのに。

「……っ何で?」

 私は必死に探した。

 校内くまなく探し、走り続けた。

 たまたま休みなのだろうと、そんな当たり障りのない答えですら私の頭には浮かばず、ただひたすらに走った。彼になにかあったのではないか――その一心で、私は全速力で走った。


 そして見つけた。


 ――――唯一、私と彼を繋いでいてくれた傘を。


 いつもの、彼の傘立てに、当たり前のように、立てかけられていた。


 そこには、一つ折りにされた紙がくっついていた。


 胸がドクドクと嫌な音を立てる。


 見たらダメ、絶対に後悔する――――本能がそう囁いている。


 しかし、見ないと後悔する。そう私の中のもうひとつの本能が声高こわだかに叫んでいる。


 相反するふたつの思いを天秤にかけ、ゆら、ゆら、ゆら……。


 何度も天秤が揺れ、そしてごく僅かに傾いたのは。


 見ないと後悔する。そんな思いだった。

 私は、大きく深呼吸をして、覚悟を決めた。どんな内容が書かれていようとも、発狂しないように。

 そして、その紙を開いた。

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