story6

「おい、お前ら。準備はいいよな?」

「はい」


俺達はスーツを、セアはパーティードレスのような服を身にまとい車に乗り込んだ。


「そこの道を右に曲がって、次を左です」

「了解」


ニシキさんの運転でアジトまで向かう。

この前のときとは違い、シグレさんは歌を歌っていなかった。

流石に任務前はこんなもんだよな、と自己完結する。


「ボス、俺達は裏から行けばいいよな?」

「あぁ、そうだな」

「私達も裏から行きますか?」

「お前らは正面突破してくれればいいよ」

「え?」


正面突破なんて敵にバレるのは明らかだった。

囮としては確かにいいかもしれないが、今回のファミリーは名を上げ始めている。

それなのに本当に大丈夫なのだろうか。

正直戸惑った。


「わかりました」

「セア、正気!?」

「シグレさんの命令だから」

「それはそうだけど……」

「お前らが先に行けば雑魚がそっち集中するだろうからな。

こっちは行きやすくなる」

「もし右腕的存在のやつららしき人物を見つけたら教えてくれ。

すぐにそっちに向かう」

「わかりました」

「……と、そんなこと話してる間についたぞ」


見た目は俺たちのいるアジトよりは小さい。

でも十分大きさはある。

流石最近名前がでてきたマフィアというべきなのか。


「じゃ、頼んだな」

「シグレさんはどうなさるんですか?」

「俺はニシキとゼンといるよ。

こいつらがその強いやつらと戦ってる間にボスと話をしてくる」

「了解です」


潰すファミリーと話すことなんてあるのかと疑問に思ったが、聞くことは無かった。

俺とセアは先に車からおりて扉に向かう。


「監視カメラはないし罠もなさそう」

「そのまま行こうか」


俺達は周りに注意しながら足を進める。

そして扉をぶち破った。

それに反応し、ビービーと音を立て、放送が聞こえる。


「侵入者、侵入者発見をしました」


やっぱりすぐに気づかれるよな、あんな入り方したら。

俺は持っていたナイフを構えた。


「ライ、私がなるべく殺るようにするから。

シグレさん達に情報をお願い」

「りょ、了解。無茶はしないようにね」

「……なるべく頑張る」


すぐさま戦闘員達が来た。

それなりに人数も多いが、セアは怯む様子を見せなかった。


「あいつらだ!」

「2人なんかで来やがって!」


ナイフを振り回す男をセアは一刺しで殺した。

その後もリズム良く、1人2人と刺していく。


「お、おい。なんだよ、こいつ!」

「応援を呼べ!」


す、すごい。

この前は虚をついたから今とは状況は違うけど。

セアの殺しの技術はすごかった。

そのとき、シグレさんから声が聞こえた。


「そっちはいけそうか?」

「セアが大活躍してくれて……。

今向こうも応援を呼んでました」

「了解。俺らも裏から行くからな」


シグレさんたちも動き始めたようだ。

俺はシグレさん達に事前につけてもらったGPSで居場所を確認しながら戦闘に参加した。

とは言ってもセアがほとんどやってくれてるんだけど。




そのころ、シグレたちは裏から侵入していた。


「さて、俺とやってくれるのはどいつだ?」

「今はいなさそうだから適当に殺ればいい」

「準備運動でもするか」


もちろん裏にも敵はいる。

ニシキとゼンが担当していた敵の姿はなく、床に寝ていた。

3人は圧倒的な強さで敵を倒して行き、あっという間に上の階へ。

そこでも敵はいたがなんなく倒して行く。

そして、階に上がったときだった。


「なかなか暴れてくれてるな?おい」

「やっとまともなやつが来たんじゃねぇの?」

「もう1人いるだろう、どこにいるんだ」

「ここには来ないさ」

「あっそ。

じゃ、俺はこいつやっとくから先に上の階行きなよ」

「な!?ゼン、お前独り占めする気か!?」

「上にいるやつの方が強いかもよ」

「よし、シグレ!上に行くぞ」

「単純すぎ……」


シグレとニシキはゼンを置いて上の階へ。


「へっ。

そんなかっこつけていられるのも今のうちだぞ」

「別にかっこつけてなんかないけど。

調子乗んな、クソが」

「あ?」


相変わらず挑発する癖は健在のゼン。

敵の眉間にシワができる。


「俺を怒らせたことを後悔させてやる」

「見事に雑魚がほざきそうな言葉だな」


敵は大きな体で太刀を振りかぶった。

ゼンはそれを避け、距離を作る。


「おいおい、なんだよ。

こんな距離開ける必要ないだろ?」

「思ったよりもその太刀が長くてびっくりして、ね?」

「今頃恐れても遅いんじゃねぇか?」


男はニヤニヤしながら言うが、ゼンの顔色は全く変わらない。


「それに……」

「あ?」

「武器がなかなか決まらなくて」

「何言ってんだ、お前。

今鉤爪つけてんだろうが」

「いや、これだけが武器なんて言ってないけど」


鉤爪を外し、スーツのポケットから取り出した。右手には、投げナイフ。左手には毒薬。


「お前はどれがいい?」

「ふざけやがって!!」


距離を一気に縮め、太刀でゼンを切り裂こうと振りかぶったときだった。


「じゃ、安牌のナイフにしとくか」


ゼンは高く飛び、太刀をもつ右手めがけて蹴りを入れ、太刀は男の手から離れる。

力自慢な男は、自分の手から太刀が消え、一瞬隙ができた。

その一瞬の隙をゼンは見逃すことなく、左胸に突き刺した。


「ガハッ……!!」


大きな音を立て倒れる男を見下ろす。


「もう少し楽しみたかったけど、仕方ないか」


ゼンはさっきまで男が持っていた太刀を拾いあげ、振りかぶる。


「結構重いな……。これは使えなさそうだな」


何かを改造することが多いゼンはこうしてたまに敵の武器を持ち帰る。

今回の武器は使えないようだ。


「とりあえず上に行くか……」


シグレとニシキと合流するために上の階へと足を進めた。

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