story3
時間はあっという間に過ぎ、殺人計画実行へ。
セアにイヤホン型のトランシーバーと小型カメラつきのコサージュを渡し、ライとシグレとニシキは車の中で待機。
ゼンは、向かいのビルの屋上で様子を見るらしくその場にはいない。
「セア、聞こえる?」
「聞こえる」
声もちゃんとお互い聞こえるし、大丈夫。
小型カメラもちゃんと映し出されてるし、今のところ順調だった。
「落ち着いてんな、あいつ」
「武器とか持ってるのか?」
「なんも言われてねぇけど」
謎は深まるばかり。
武器を持つにしても、スリットのあるパーティードレスだから大きなものは隠すことは出来ない。
「会場に着いたな」
慣れた様子でワインを手に取っている。
飲むような仕草をしたが、量は減っていない。飲んではいないみたいだ。
そして、カメラに映ったターゲット。
「あいつだな」
「ここからどうする気なのか……」
「さあ、セア。今からどうする?」
ニヤリと笑いながら言うシグレは、少し楽しそうに見える。
ライもどうやって殺すのか興味があった。
今のところ、武器になるようなものは手にしていない。ターゲットと接触もない。
どうする気なんだろう……と見ていると、セアはターゲットに近づいた。
そして、カメラが歪む。
歪むというのは、セアの体制が変わったということ。カメラに映りこんだのは、ターゲットの腕。
「あ……。すいません、ちょっと酔ってしまったみたいで……」
どうゆうことだ、と3人で顔をあわせる。
確かにあのときワインは飲んでいなかった。
でも、今の発言的に酔っている『演技』をしたらしい。
「ちょっと中の監視カメラをこっちに映しますね」
様子をいまいち捉えていない。
ライは、会場に設置してある監視カメラの情報を入手し、自分のパソコンに映し出した。
「いや、お前まじなんなの?どうなってんの?」
「企業秘密です」
「お前敵にしなくてよかったわ……」
シグレにそう言われ、自然と口元が緩む。
映し出された映像から、セアがターゲットと接触しているのは確実だった。
「可愛いお嬢さんだね。私が介抱してあげよう」
「でも、あなたがここから離れたら……」
「少しぐらい大丈夫さ」
ターゲットは、セアの肩を抱き会場を出て行った。
ターゲットのその表情は、下心丸出しというところだろうか。
「ホテルの一室に行ったみたいですね」
「おいおい、あいつ大丈夫か?」
「とりあえず見てみましょう。部屋の映像出します」
シグレは少し焦っているように見える。
無理もないだろう。
酔っている状況でホテルの部屋に連れていくなんて、つまりそういうことだ。
ホテルの一室に入ったセアとターゲット。
セアはゆっくりとベットに座り、体を沈めた。
「すいません、ちょっと体が暑くて……」
着ていた羽織ものを脱ぐと、露出度が一気に上昇。白い肌が露になった。
その姿を見た瞬間、男の目が変わったのはわかった。
「お嬢さん、そういうことってことでいいんだよね?」
「え?」
男は、セアを押し倒し馬乗り状態になった。 なんとなく予想はしていたが、やはり焦る。
「おいおい、どうゆうつもりだよ」
「シグレ、これは……」
それはニシキも同じだ。
もちろん、今から助けに行くこともできない。
俺達が焦る中、セアは押し倒されたにも関わらず、酔っているフリは続行。
ターゲットがセアのパーティードレスを脱がそうとした時だった。
「待って、最初はこっちでしょ?」
そう言って、セアはターゲットの唇に触れた。
その姿は、妖艶で。
やられた本人にもかなり効いたようで、静かにセアと唇が重なるまであと少しだったときだった。
「ガハッ……!!」
血飛沫が飛ぶ。
そして、ターゲットはセアの胸元に倒れ込んだ。突き刺さったナイフを抜き、落ち着いた様子でナイフについた血を拭いていた。
「おい、どこからナイフなんて出したんだよ」
「……脚に隠してたみたいですね」
スリットから一瞬だけ見えたナイフ。
スピードが早すぎて、最初は気づかなかったけど、きっとあそこから出したのだろう。
そして、トランシーバーから聞こえた声。
「ちゃんと死んでる。脈もない」
「了解」
「セア、戻ってくるまでってことはわかってるよな?」
「もちろん、すぐ戻ります」
それだけ言うと、声は切れた。
「あそこって何階?」
「30階です」
「飛び降りるのは不可能だよな」
セアの着ていたパーティードレスにはもちろん、ターゲットの血がついている。
よって、普通にホテル内を歩くことは無理に等しい。
どうする気なんだろう、と見ていると天井にある通気口を開け始めた。
「あそこから行く気か?」
「確かに移動はできるけど、下まで行けませんよね……」
セアは軽い体運びで通気口に入り、どこかに向かって進んでいく。
もちろん中は真っ暗でカメラを見ても何もわからない。
明るくなった、と思ったときには普通にホテル内に出ていた。
目の前に映るのはエレベーター。
ヒヤヒヤしながら待っていると開いたエレベーターには、誰も乗っていなかった。
「運いいな、あいつ」
下にいくボタンを押したあと、セアはエレベーター目の前に立っていた。
そして、1階に着く前にエレベーターが止まってしまった。
エレベーターが開き、1人の男は驚いた表情を一瞬見せた後
「うあぁあ」
と目を抑え始めた。
扉はすぐに閉まり、セアが手を下げる時に見えた小さなもの。
多分薄型の催涙スプレーだろう。
そこから、一気に1階まで降りると出口手前には警備員。受付の人達もちらほらいる。
セアは、1階にある管理部屋に行くとそこにいた警備員にも催涙スプレーをかけた。
そして、1階の電気を全て消した。
「きゃー!!」
「何事だ!?」
パニックになる声が聞こえる。
バタバタと走る音も同時に聞こえる。
そんなパニック状態を引き起こしたセアは、相変わらずのポーカーフェイスで車まで戻ってきた。
男用と思われる香水の匂いと鉄の匂いが混ざった変な匂いだった。
「お疲れ」
「ありがとう」
「んじゃ、ゼンを連れて帰るか」
「シグレさん、私は……」
「あぁ、約束だからな。
これからよろしくな、セア」
「こちらこそよろしくお願いします」
こうして、改めてセアが仲間になったのだった。
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