訓練後3

「オルガさん、お願いします。私を鍛えて下さい」


「断る」


 一晩明けた、朝食時にドアをノックもせずに入ってきたミレイは、入ってきた瞬間にオルガ様に頭を下げて、鍛えてくれと懇願したが、オルガ様はそれをノータイムで断った。


「そこを何とかお願いします。私は少しでも早く強くなりたいのです」


「知るかよ、そもそも貴様には3日間の休息を取るように言ったはずだ。まだ体が回復してないくせに無茶を言うなボケ」


 オルガ様は、不機嫌ここに極まれりといった態度でミレイを追い払おうとするが、ミレイは生意気にも出て行こうとはせずに頭を下げて鍛えてくれと頼み続けている。


「大丈夫です。やれます。やらしてください」


「…………死ぬぞ、というか殺すぞ?」


 ついに我慢できなくなったのか、オルガ様の眉間に青筋を浮かばせて、ゆっくりと立ち上がる。


「強くしてくれるなら、死んだってかまいません」


「ガキの癖に良い度胸だな。よし、殺してやるから表に出ろ」


 オルガ様がついに耐えられなくなったのだろう、ドアを指さし外へ出ろとジェスチャーまじりに脅している。


「まあ、オルガ様落ち着いてください、ミレイさんも食事時にいきなり来て鍛えてくれは無いでしょう。時と場合を選んでください」


 私的には、オルガ様がこの場で殺すというのなら、別にこの娘がどうなろうと知った事ではないが、その場合は、そのノリのまま、ついでに人類を滅ぼしてしまいそうな気がするため一応止めておく。


「……確かに失礼しました」


「まあいい、メルスに免じて殺すことは勘弁してやる。食事の邪魔だから、とっとと失せろ」


 私が割って入った事で少しだけオルガ様が冷静さを取り戻したのか深いため息をつきつつ席に座った。


「まあ、いいじゃありませんかオルガ様、ミレイさんもどうです、一緒にお食事でも」


 もちろん、この質問はあくまでもポーズである。 オルガ様と久しぶりに、二人で食事ができるのに下等生物と一緒にいるとか、私が虫唾が走る。


「いえ、私もどうかしていました、時間を改めてまた――」


 言葉の途中でミレイのお腹が音をたてたために、ミレイは、たちまち顔を赤くした。 瞬間、何故、私はこの下等生物を食事に誘ったのだろうかと深く後悔する。 あんなにも、空腹をアピールされたら言い出した手前断るわけにもいかない。 


「ミレイさん、何をするにも腹ごしらえは必要ですよ。とりあえず一緒に食べましょう」


 正直、腸が煮えくり返りそうなほどなのだが、それを一切表情に出すことなく私は笑顔でミレイに席へ座るように促した。


「……すいません、いただきます」


 そして、全く持って忌々しいことに、この下等生物は帰ることなく、躊躇しながら席へと座りやがった。

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